第21話 闇の蠢動①
大変お待たせしました!
連載再開です!
前回のあらすじ
東大陸行きの船に乗った
ワルプルギス機関アメジスト支部。
その内部にある病室の一室で、ルイは目を覚ます。
彼女はゼクスとその連れとの戦闘の折、ゼクスの手によって橋が陥落され谷底に落下してしまったが、谷を流れる川があったおかげで一命はとりとめていた。
そう、一命だけは……。
「うっ…………痛っ……」
まだ覚醒し切らない頭で義手の付け根が痛んでいるのかと思い、ルイは右手を左肩へと動かす。いや……動かそうとした。
しかし右手は、右足の方へと伸びていた。
「えっ……?」
冷や水を浴びせられたようにルイの意識は一気に覚醒し、恐る恐るといった風に掛け布団をゆっくりと捲る。
彼女の右足は、膝から先がぽっかりと無くなっていた。
「あ……あああ……」
それを見て、ルイの理性はボロボロと崩れていく。
何故。どうして。なんで自分がこんな目に。
そんな自問自答が、ルイの頭をシミのように浸食していく。
そしてある一定のラインで、理性は崩壊した。
「あ……ああ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああアアアアアアあああアアアあああああああああ!!!!」
ルイの哀しき慟哭が、病室に響き渡った―――。
◇◇◇◇◇
その後すぐに医師が駆け付け、鎮静剤を注射されてルイは落ち着きを取り戻した。
もっとも、一度崩壊した理性までは戻らなかったが……。
そんな彼女が横たわるベッドの傍に立っている、アメジスト支部の支部長であるノワールが彼女に憐れみの目を向けていた。
「不運と言う他ない。まさか落下した先の尖鋭化した木の枝に足が刺さるなんて……。手は尽くしたが、膝から先を切断するしか命を助けられなかったんだ。今となっては言い訳にしかならないがね。それに……件の魔女であるゼクス元審問官は取り逃がしたという報告も……」
「ゼ、クス……」
ゼクスという単語に、ルイが初めて明確な反応を示す。
「ゼクス……ゼクス……私の腕と足を奪った憎い魔女……ゼクス……ゼクス」
ルイは熱にうなされたように、ゼクスの名前を連呼する。
実際、熱にうなされているのだろう。憎悪という名の熱に。
ルイは連呼を止めると、傍らに立つノワールに片方しかない目を向ける。
その憎悪の籠った目を向けられ、百戦錬磨のノワールでさえもビクッと肩を揺らす。
「支部長……私に新しい足をください。あの魔女に復讐するための足を……この腕と同じように」
ルイはそう言い、左腕の義手を力強く握り締める。
その迫力に気圧され、ノワールはただ頷くしかなかった。
「あ、ああ……技術部に言って、ルイ審問官用の義足を製作するよう伝えておく」
「ありがとうございます」
ルイはにっこりと笑顔を浮かべ、ノワールに礼を述べる。
しかしその口元は、三日月のように歪んでいた―――。
◇◇◇◇◇
満天の星の下、ある城のバルコニーで一人の女性が夜空を眺めていた。
そして女性は、誰に聞かせるともなくポツリと呟く。
「……『憤怒』と『傲慢』の下に、『嫉妬』が合流しましたか……そして『怠惰』、『強欲』、『暴食』も、そこに合流しつつある。『色欲』は……まだのようですね。まさかこの時代に、最強の魔女が七人も誕生するとは……これも新しい時代が訪れる前触れなのかもしれませんね……」
「女王」
そんな女性の傍に、彼女の護衛を務める人物が影から姿を現す。
その人物は闇に溶け込むような黒装束ではあったが、女性らしいボディラインを描いていた。
その護衛は跪きながら、女性に進言する。
「お身体に障ります。そろそろ寝室に戻られた方がよろしいかと」
「そうですね……『星見』も終わりましたし、今日はもう休みましょうか」
女性はそう言い、城の中へと戻っていく。
女性の名はニヒト・ツァールロス。
魔女達が暮らす魔女の里のトップ、すなわち――女王でもあり、世界最弱の魔女でもあった―――。
魔女達の元締めなのに最弱とはこれ如何に?
その理由はニヒトの魔術と関係があるのですが……それはいずれ明かします。
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