第三十夜|雪女
author:蒼鉛
雪の降る寒い夜に、帰宅すると雪女がいた。そのまま抱きしめられたので、あぁこれは死んじゃうんだな、と覚悟した。
「へぶちっ」
「いやっ。顔に向かってくしゃみするだなんて、非常識」
「すみません、寒くて。ほら、これ使って……」
「お腹空いてるなら、ご飯食べますか」
「頂きますわ。妖怪たるもの、もてなしは受けないと」
その後にあなたも頂きますと宣言されてしまった。覚悟はしたものの、やはり死ぬ前にはしておきたいことがある。
「炊きたてで温かいですが大丈夫ですか」
「自力で冷ましますことよ」
口から吹雪が出て白米にふつふつと積もる。かき氷みたいだから、その線ならやっていけるんじゃないかな、雪女。美女だし。
「おじさまたちは知覚過敏で、冷たいものが食べられませんの」
あぁ、なるほど……しかし健啖家だ。明日の分も平らげられてしまった。弁当の分も残っていない。
「あなたは今日、わたくしに食べられるのですから、たいした問題ではありません」
でもとても感心する食いっぷりだった。惚れ惚れした。こうもりもり食べてもらうと、作った側としては冥利に尽きるなぁ。まぁ茶碗によそっただけだけど……
「あらまあ、褒めても何も出ません事よ。……さあ、お時間です。何か言い残すことは?」
そうだなぁ。俺の伴侶になって欲しいかな。これからもこんな風にご飯食べてくれると嬉しいんですが。別嬪さんだし。とまあ、こんな風にだれかに一度告白してみたかったんだ。これまでは怖くてできなかったから。
「……言い残すことはそれだけですか? それでは、頂きますわね」
こうして、俺は無事頂かれた(性的に)。そして雪女は俺の伴侶となり、かき氷屋はSNSでバズったので、雪女は毎日たらふく飯を食らっている。




