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 4話 死者蘇生



光結のお母さん(おばさん)に病院を教えてもらって、手術室に駆けつけた時、丁度執刀医の先生がでてきて首を振り、「回復する見込みは薄そうです。この1日2日が、山場でしょう」と言った。おばさんはその場に崩れ落ちて、俺はその場に立ち尽くしてしばらく離れることができなかった。



俺は学校を休み、付きっきりで病室の光結の容態を見守った。三日三晩予断を許さぬ状態が続いた。そんな中で俺は涙が枯れるまで泣き、そのたびに自分を呪った。



(俺が約束を守って一緒に帰っていれば、俺がうつつを抜かして追試にならなければ)



同じ考えが何度も頭をよぎる。また、何よりも腹立たしかったのは光結が痛い苦しい思いをしている間に俺が二人の明日だとかくだらない妄想にふけっていたことだった。



容態が少し落ち着き、皆も落ち着いてきた時光結のお父さん(おじさん) と 光結のお母さん(おばさん) に今の気持ちと俺のした過ちについて話した。



おばさんには「あなたは悪くないわ」と言ってもらったが、おじさんには、「お前が殺したんだ」と言われた。それもそうだ俺が殺したようなものだ。

俺は「俺の命をかけて償います。」と土下座したが、

「お前ごときの命で釣り合いが取れるわけないだろ!

そもそも本当にそんな気があるのか!」と言われて信じてもらえなかった。



その後おじさんは落ち着きを取り戻すと、「君をやり場のない悲しみの捌け口にしてしまった。本当に申し訳ないと思う」といって謝罪してしまった。その後おじさんは一切俺を責めなかった。その事が俺には余計につらかった。いっそのこと顔の形がわからなくなるまでボコボコにしてほしかった。



その代わり俺の顔はどんどんと、やつれて行き、目元は隈で真っ黒になった。おばさんに「あなたは一旦家に帰って少しでもいいから眠りなさい」と言われて家に帰った。だが、今も病室で光結が生死を彷徨っていると考えると一睡もできなかった。



しばらくすると佐山が家に訪ねてきた。「なんだ、お前も光結のお見舞いに来てくれるのか?」とたずねると、「私はあなたのお見舞いに来たのよ」とギュッと俺を抱きしめてくれた。



「あなたは悪くないわ」



そう言って頭をなでられると佐山の胸で年甲斐もなく声を荒げて泣いてしまった。一頻り泣いてから1、2時間ほど久しぶりに眠る事ができた。



そして光結が轢かれてから、4日目の朝・・・・・・



彼女は帰らぬ人となった。




************************




今日は光結の通夜だ。光結の人望は厚く、クラスの友人から芸能人までざまざまな人々が参列していた。



今は焼香を終えて僧侶が退出し、これから花入れという時間である。花入れというのは、故人が休んでいる柩に花や思い出の品を手向け、最後のお別れをする時間だ。



俺は未だに光結が死んだと言う実感が持てずにいた。俺が虚な瞳で俯いていると、俺の隣に座っている佐山が呟いた。



「辛いのは分かるけどくれぐれも馬鹿なことは考えないようにしなさい」



「分かってるよ」



俺はこの時初めて佐山に嘘をついた。



この3日間考えて考え抜いた事がある。俺は人生を捨てることができるのか、光結のために俺のすべてをなげうてるか、俺の両親を異能管理局のみんなをそして佐山を裏切れるのか?



こたえは「是」だった。



光結のいない人生なんて、死んだも同然だ。


 

ならすることは簡単だ。俺にしかできないこと。

それをするだけ。



俺はもう一度()()()()()


「それでは花入れを行います。皆様方、故人の方にさいごのお別れをお告げください」



司会者が花入れの開始をつげると親族から順に柩に各自思い思いの品を入れ、別れを告げてゆく。



遂に俺の番になると、俺はすぐさま柩に駆け寄り、

沢山の別れの品々に埋もれつつある光結の顔に向けて微笑みかけた。



そして柩に両手をかざし瞳を閉じる。



「なんだね君無礼だぞ、死者への冒涜のつもりか?」



確かにこれから行う行為は死者への冒涜かも知れないけど、この一瞬だけは、ほっといてと言いたかった。



「ま、まずいっ! 司くんっ!ダメっ!」



「父さん、母さん、佐山、ごめん。・・・・・・

もう、遅いよ・・・」



柩の周りの情景がまるで蜃気楼のように揺らめきはじめる。 次の瞬間、柩から発せられた青い光が式場を包み込んだ。



「キャァァァァー」 「なんだこれ?」 「なにが起こった?」



式場は混乱に陥った。が、光が治ると人々は徐々に落ち着きを取り戻して行く。



「確か柩が光ったよな」



さっき俺を注意したおじさんが、恐る恐る柩を覗き込むと・・・・



「ん?ここは? ここはどこですか? あれっ?なんか身動きが取れないんですけど?」



「はぁ?!!!!!」



おじさんの驚いた声により式場に沈黙が、訪れる



「おーい おーい きこえてますかー?あれ?」



そんな中死んだはずの少女の声だけが式場にこだまする。



おじさんは顎がはずれそうなのか、ゆっくりと口を開きまるで赤子が言葉を話すように呟いた。



「い、い、い、いっ生き返っった、!!」



その日、俺は「能無し」を辞めた。



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