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 2話 決心



「ああ、おはよう。こんな能無しのためにお仕事ご苦労様です」



彼女が朝から皮肉を言ってきたのでこちらも皮肉で返してやる。



「あら、私がお仕事だからキミに挨拶してあげたってちゃんと理解しているのね。でもそう言うことはあまり大きい声では言わないでちょうだい」



と、クールぶっているが少し焦っている彼女 佐山(さやま) (れい) は俺の唯一の友達・・・のフリをしている。彼女は、俺が自分の異能を口外、又は使用しないように、監視するため、国が派遣したお目付け役である。



監視されることに文句はない。が、1つ問題がある。

彼女もまた、()()()のだ。はっきり言ってお目付け役には向いていないと思う。

黒髪で艶のあるボブカット、黒曜石の様な切れ長の目

引き締まったスレンダーなボディライン、光結とは違うベクトルだか、光結と比べても引けを取らない美少女である。



頭脳明晰、運動神経は抜群。さらに彼女は、GRADE4の異能保持者である。異能はその能力の規模、特異性によってランク付けされる。

GRADEは1から5までしか存在せず、GRADE5は国連で会議されるレベルなので、実質 GRADE4が最高の評価である。そんなハイスペックな彼女が能無しの俺と親しげに話していればそれだけで嫉妬の対象である。



まぁ何故か光結からは「なんで佐山さんは話して良くて私はダメなの?」と違う方向へ嫉妬されるのだか、

良いも悪いも、光結は現役アイドルなのでいつも周りに人がたくさんいて話しに行けないのだ。



「ねぇ、また能無しが佐山さんと話してるわよ」

「GRADE0が粋がってんじゃねぇぞ・・・」

「佐山さんもあんなののどこがいいのかしら?」



聞こえて来る陰口という名の罵声を俺が必死に無視していると、



「気にしないで、私と話したら誰でもこうなってしまうわ。あなたが悪いわけではないのよ。重命(しげなが) (つかさ) 君」



彼女はこれでフォローしているつもりなのだろうか?

なんとも不器用で少し笑えて来る。だか、彼女のそう言う所は嫌いじゃない。



「ああ、ありがとうな。でもあいつらの言っている事も正しいと思うんだ。お前好きな人とか居ないのか?」



「い、いるけど・・・それがなんなのよ」



「ならなおさら申し訳無いと思うよ。女子高校生って言う多感な時期に不可抗力とはいえこんな能無しが束縛してしまって。 それにお前は、可愛いからこの学校の男子だったら告白すればどんな奴とも付き合えるしな」



「か、可愛いって・・・じゃ、じゃあ、司くんはもし私が告白したらOKするの?」



「へぇ、?それは・・・え、えっと・・」



(やべぇこういう時なんて言うのが正解なんだ?)



「ごめんなさい 少し意地悪な質問だったわね。忘れて」



正直全く正解がわからなかったので、俺はほっと胸を撫でおろした。が、赤面している彼女を見て思わずこちらも顔を逸らしてしまう。



「ま、まぁ要するになんであれ友達してくれてありがとなって事だ」



「そうよ・・・仕事じゃなかったらとっくに告白してるわよ・・・」



「ははっ、そうだよな。ごめんごめん」



「なんか皆が能無しって言うの分かる気がする・・・

この朴念仁・・・」



「ん?なんか言ったか?」



「別に?」



「お前にまで陰口言われてたら泣くぞ!?」





************************





それから4時間、みっちり勉強した。特に勉強以外することがないからだ。今は昼休みで、今日は寝坊してしまったので佐山とふたりで買いに行った購買のパンを食べている。



「悪いな。いつもならお前の分の弁当もってくるんだが。明日は持ってくるから、おかず何か食べたいものあるか?」



「いいわよ別に、そもそも作ってもらってるってだけで異常なんだから」



と言うのも佐山が昼ご飯をクリーチャーとか言うエナジードリンクで済ましたりゼリーしか食べなかったりしたのを見兼ねた俺が、育ち盛りなんだからちゃんと食べて欲しいと言う自己満足を満たしているだけなので遠慮される覚えはないのだが。



「いいや、これくらいさせてくれ。朝にも言っただろ俺はお前に感謝してるんだ」



「そ、そうね。じゃあ、ええっと・・・・」



と、俺が明日の弁当のおかずを唐揚げにすることを佐山に確約していると、なにやら見慣れない人影がこちらに近づいて来た。



(ん?あれはバスケ部のエースでGRADE3の異能持ちのイケメン王子 飯田じゃないか?)



「君が能無っ・・じゃなかった。重命 司くんだね」



俺はコイツの称号を腹黒王子に変更しつつこちらも相手を確認する。



「ああ、そうだよ。そっちはスクールカースト最上位の飯田くんだよね? 俺なんかになんの用?」



「僕のことを知ってくれていたのか?嬉しいな。実は

君に折り入って頼みたいことがあるんだ。二人きりで話せないかな?」



「ああ、いいよ。ごめん佐山すぐ戻るから先食べててくれ」



「ええ」



返事とは裏腹に佐山は少し不安そうな顔をしていた。

嫌な予感がしたのは俺も佐山も同じだろう。

教室を出た俺と飯田は廊下にある人気のないくぼみに入った。



「じゃあ単刀直入に聞くよ?重命 司 君今日、君が

高橋さんと一緒に登校してるのを見たって人がいるんだけど彼女とはどんな関係なのかな?」



このパターンか、もっと早く光結と距離を取るべきだったと反省する。



「い、いやその家が近いだけの幼馴染みだよ」



俺はいつもこの質問に回答する瞬間が嫌いだ。すると飯田は白い手紙を渡して来た。



「本当に?じゃあいいよね? コレ。高橋さんに渡して欲しいんだ。彼女の周り、人がいっぱいで渡せないからね」



「見ての通りラブレターだよ。できるよね?噂で聴いてるよ。空気を読めるのが唯一の異能なんだってね。

それさえできなくなったら本当の能無しになっちゃうよ?」



これは脅しだ。飯田は俺がこの件を断れば俺を社会的に殺す気だろう。いつもなら張り裂けそうな心の痛みを押し殺して受け入れるだろうが、今回は、そうはいかない。自分に嘘をつくのはやめだ。



(こんな奴に光結を渡すぐらいなら・・・)



俺は心を決めた。


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