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魔導の探索者レギの冒険譚  作者: 荒野ヒロ
第六章 つけ狙う幾つもの眼

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天使の躯の解析と、上位存在への対抗策

面倒臭い内容? 魔術とか、上位存在とか、雰囲気を感じてもらえれば……

 気づくと柔らかな侍女の胸の間に顔を埋めた状態で目覚めた。

 どんなに乱暴に扱っても抵抗しない侍女、それをいい事に彼女の衣服をすべて剥ぎ取り、思う存分、彼女の白いい柔肌を蹂躙した。

 彼女に体温はなかったが、それがむしろ俺を興奮させた。──血の通わぬ彼女の体に俺の熱を与えるみたいに何度も体を重ね、あらゆる体勢で彼女の体を愉しんだ。


 そうしながら、何故か童貞を失った時の事を思い出していた。

(そういえば初めての時も、こんな高身長の、豊満な体をした年上の女だったな)

 ぼんやりとそうした思い出がよみがえる。

 初めてのその行為は、いまさっきこの侍女にしたみたいに、相手の事を考えずに、快楽に任せておこなった強引で──激しいものだった。

「いやぁ、なんだか若返った気分……」

 そう呟くと、彼女は俺の頭をこつんと拳で叩く。

「あなたはまだ若いでしょう、わたしなんて──」

 白子アルビノの侍女が珍しく積極的に言葉をつむいだ。

 そういえば彼女の事をほとんど知らない。というか名前すら知らなかった。


「生きていた頃の事を思い出した?」

 俺はそう尋ね、彼女の乳房の先端にあるものを指先で摘みながら上体を起こし、彼女の腰に自分の腰を重ねる。

「そう……ですね」

 彼女は両足を開いて俺を受け入れたまま、両腕を俺の背中に回す。

「感覚はぼんやりとしていて、よくわからないのですが……あなたの体温は、気持ちよいです」

 そう言いながら頬を寄せてくる彼女。愛らしいその動きに鼓動が高鳴る。本当に、初めて女を抱いた時に戻ったみたいな感覚が蘇ってくる。


 彼女との性交で魔女の房中術を使い、魔力の循環をおこなった。彼女はおそらく魔女だったのだろう、高い魔力の流れを感じたのだ。

 そうして彼女から二つの力を手に入れた。

 それは共通する二つの力。


 一つは「死霊術」であり、死者を蘇らせ一時的に操る技術だ。

 もう一つは「退霊術」死霊や亡霊を冥界へと送還する呪術だ。


 彼女はずいぶん古い時代を生きていた人物だったらしい、それらの技術は失われた術法に当たる。

 退霊術は現在でも形を変えて使われている技術だ、レファルタ教でも似たような術式の神聖術とやらを使用しているはずだ。──死霊術は禁忌きんきとされているが。


「はは……あなたはどうやら、()()()()()()()みたいだな」

 俺の言い方に腹を立てたのか、彼女は背中に爪を立ててつねってくる。

「いたいいたい」

 ぐいっと体を押し付けると、彼女は首をけ反らせてうめく。感覚が戻りつつあるのだろうか。

 そんな風にいちゃつきながら彼女の名前を聞くと、耳元でささやく。

「ラゥディリア」

 彼女の甘い囁きを耳にすると、また情欲がうずき出す。

 こんな女は初めてだ。

 古い時代の魔女は、こうして男を誘惑していたのだろうか。それとも俺の中にある、初体験の記憶が蘇った所為せいなのか。


「せっかくだし、もう一回しよう」

 そう宣言して再び柔らかな肌にむしゃぶりつく。

「もぅ……仕事が──あるのに……」

 かなり長い間、仕事を放棄して体を重ね合っていたが、おとがめはない。

「君の主様はそれくらいで怒ったりしないさ」

 適当な言葉を口にして彼女の唇をふさぐ。

 冷たい舌が口腔に入り込んでくると、頭の奥からぼんやりとした記憶が浮かび上がってくる。それはやはり初体験の記憶だった──




 水鏡のドアをくぐり、自身の領域へ戻って来た。

 ラゥディリアと再会を約束して。

 青白いほどに真っ白な彼女の体をたっぷりと堪能した俺は、天使に対抗する力を考える事にした。


 精神の領域であるこの場所では、性交の疲れから頭がぼんやりする事もなく、むしろ新しい発想を思いつく事ができた。闇の力を持つ攻撃魔法だけでなく、精霊の力を利用した攻撃も取り入れる為に「四界の霊域」にも、「天上の防壁」を破る効果を付与する方法を模索する。

 ──それとは別に、結界内に居る光体の防壁を弱体化させる結界も同時に作製する。こういう異なる制御方法に同時に取り組む事で、互いの術式に簡略化などの工夫をらせる部分が見えてくるからだ──


 この天使など上位存在のからだである「光体」が持つ「存在を害そうとする力を無力化する防壁」の構造を、「光体波動」とでも仮に名付け、それが発する防壁を弱める事を「親和波長」とでも命名しておく。

 相手の防壁に妨害される事なく、その壁をすり抜ける技術。

 この波長とは、次元の壁とも言えるものだ。

 外部から加わる力に対し反発する次元の壁は、同調する次元の波長には抵抗力をほぼ示さない。

 この仕組みを今度は精霊の力を高める「四界の霊域」に組み込み、結界内に存在する上位存在の光体波動を弱体化させるのである。


 天使の遺物から読み取った情報によると、おそらく光体波動は微弱な「揺れ動き」をしていて、一定の波動域で動いているので、完全に親和波長で相手の防壁を崩すのは難しいだろう。

 あくまで防壁の効力を弱め、こちらの攻撃で損害ダメージを与えやすくする技術なのだ。

 攻撃魔法の効力は多少弱められても、無効化される可能性が格段に低くなるのが、この「親和波長」の技術を組み込む事で可能になるのである。


 俺は四界の霊域に親和波長を組み込んだ、新たな「四界の()()」を構成するのに成功した。

 だが、その呪文は難易度が高い。

 何故なら古代魔術言語を使用するからだ。

 現代魔法である「四界の霊域」に古代魔術の力を応用するので、複雑な呪文や術式を簡略化したとしても、かなり高度なものになる。


 これは通常の魔術師なら、無意識領域に予め呪文や術式を用意していたとしても、相当な集中力が必要だろう。一瞬で何万、何十万という計算をおこなう思考力がるのだ。

 しかしこれに関しては、死導者グジャビベムトの霊核を持つ俺ならある程度、簡略化して魔法を発動できそうだ。霊核を増幅フィードバック器として使える事に気づいたのだ、これを利用して簡略化する事で威力が弱まってしまう魔法を、本来の威力や効力に近いまま行使できるだろう。


 さらに古代魔術言語の発音は、現代の言語とはまったく異質な発音と発声方法を駆使している。──それは声帯を変化させる必要すらある発声方法だ。これは訓練だけではなく、無意識領域から肉体を変成させる必要がある。

 だが今回は簡略化する事で口頭呪文を使用しないで使えるようにしたので、その辺りの難しさはかなり減らせるだろう。


「光体防壁弱化結界」も同時に完成系を構築する事ができた。まだこのあと、改良すべき部分が見えてくるかもしれないが、取りあえず一定の成果は望めそうだ。

 ──呪文の発声についてはひとまずおいておく。さすがに二つの結界を同時に作るのは困難だった、集中して取り組んだ作業で精神の疲労が限界に近いと悟ると、そのまま睡眠に移行する。


 * * *


 また懐かしい夢をみた。

 明らかにラゥディリアとの性交の余韻があった所為せいだろう、十年近く前の記憶だ。──そう、自分が童貞を捨て男になった(この表現がまったく分からない。性交したら男になるという考えは、明らかに幼稚で未開的だろう)時の記憶。


 その夢の中に出てきた相手が、俺の初めての相手となった女だったか、それともラゥディリアだったのか……その辺が曖昧あいまいになった夢だった。

 何事も最初の経験というものが強く印象に残るものだが、この初体験の相手が(俺の場合はそこそこ綺麗な年上の女だったが)醜女ブスだった場合でも、良い思い出としてよみがえるものなのだろうか……


 それはともかく、俺の故郷にもそこそこの思い入れがあったのかと、その夢で少し思い直した。

 正直に言うと、あの故郷が魔物の襲撃を受けて滅びた、という事になったとしても──親友の死や、もう会う事のない人々の死に多少の感傷を抱くかもしれないが、たぶんそれだけだと思っていた。

 だがもしかすると、もう少し悲しさや寂しさに胸を締めつけられるような、そんな思いをするのかもしれない。

 自分にそんな弱い部分があるのかと疑問にも思ったが、故郷から遠く離れ、新たに知る故郷への憧憬しょうけいみたいなものを自分の中に感じた。


 そうした想いを抱きながら目が覚める。

 不思議な気分だった。

「ふむ、ラゥディリアの具合が良かった所為なのかもな」

 そんな、本人に聞かれたら色々と問題がありそうな独り言を口にして、俺は朝食の前に自身の健康や、無意識下で続けられているいくつかの魔術の解析に改めて手を加え、それから朝食の準備に取りかかる。


 風除けの布を張ったまま焚き火を用意し、塩漬け肉を大きな葉っぱ数枚で包んだ物を熾火おきびに突っ込んで調理し、パンなどと一緒に口にした。

 朝日が完全に周囲を照らし出した頃に、俺は再び南へ向かう旅を続ける為の準備を始めた。出した物を背嚢はいのうに入れ、風除けの布をしまおうと取り除くと──なんと、布の向こう側に灰色虎が居たではないか。

 俺は心の中で「げっ」と呟き、相手の様子をうかがっていたが、向こうにはこちらを襲う気はない様子で、地面にお尻をぺたんと付けてこちらをじっと見つめている。


 慎重に布を折り畳み、背嚢にしまいながら──灰色虎がなにを期待しているのかを考えてみた。

 虎は肉食だ。肉の匂いを嗅ぎつけて来たに違いない。

 俺は腐敗防止の皮袋に入れている、布に包んだ塩漬け肉を一切れ取り出した。

 すると灰色虎は立ち上がり、鼻をひくひくと動かし始める。

「まぁ待て待て……」

 この辺りに棲む獣にとって塩分は貴重だろう。そうは言っても、一度にこんな大量に塩を口にするのは危険だ。俺は肉に付いた塩をできるだけ払い落とし、生肉を灰色虎の前に放ってやった。

 虎は草の上に落ちた肉に食らいつくと、がふがふと音を立てて食べ始める。湿地帯に居た灰色虎に比べ、こちらの虎はやや痩せている印象だ。この猛獣だけかもしれないが、荒れ地には獲物が少ないのかもしれない。

 よく見ると、この灰色虎は痩せているだけでなく、まだ幼いようだ。狩りが下手で、なかなか食い物にありつけなかったのか──


「ま、お前はついてたな。飢えに任せて俺を襲っていたら、『影槍』の実験に使っているところだ」

 影を槍のように突き出す攻撃、または影の中から武器を突き出すやり方でもいい。実戦で成果を出せない事には意味がないからな。

「じゃあな、あとは自分でなんとかしろ」

 灰色虎に別れを告げ、旅の準備をした俺は背嚢を背負うと、南へ向かって歩き出す。

 言葉が通じた訳ではないだろうが、灰色虎はこちらに来る事なく、湿地帯のある方向に向かって歩き出した。

 今日中に荒れ地を通過できるはず。


 ここを抜ければ大陸南の海に接する国アントワの領内だ。

 アントワは古くから続く生活様式を守る人が多い印象だ、それは排他的な人間が多いという意味でもある。

 他国の文明に否定的なのは、彼らの多くが古い宗教──精霊や自然に対する信仰心──シャーディア信仰などと呼ばれるものを信じているからだろうか。

 中には邪神や魔神崇拝といった信仰をもつ連中も居ると考えられているが、実際のところは分からない。


 南の文明国ルシュタールは他国の文化に対しても寛容だが、それは中央の都市部だけの話である、とも聞いた事がある。

 アントワやウルドといった国家に接する(一部はシャルディムにも面しているが、面積は少ない)町や農村では、未だに未開的な暮らしをしている場所も多いのだろう。都市部に富や知識が集中するのはどこの国でも変わらないものだ。


 この荒れ地を訪れる冒険者はほとんど居ないと思われた。古代時代にはこの辺りにも街があったとされているが、遺跡が見つかったという話も聞かない。

 どこへ消え去ったのか、あるいはなんらかの理由があって街の場所を変えたのかもしれないが、そうした移転がされたとする記録も残っていないので、事実は分からないままだ。

「町や村が忽然と姿を消した」といった話は、数百年前には何度かあったらしい。そういった事柄について書かれている領主の手記などが見つかっている。

 湿地帯と同じく東西に長い範囲を占める荒れ地には、発見されていない遺跡があったりするのだろうか。


 草木の少ない広大な大地を見回しても、赤茶色の地面や灰色の岩などばかりで、人工物などは見える範囲には存在しない。

 隆起した地面の陰に隠れて見えないのかもしれない。大きな岩の横や、丘の横を通る度に変わった物はないかと探してみたが──やはりなにも見つけられなかった。

 試しに魔眼を使って周辺を探してみたが、生命探知にすら反応はほとんどない。荒れ地には土鼠つちねずみや犬に似た小型の生き物などは棲んでいるが、大きな獣は──灰色虎やひょうくらいなようだ。

 鳥も虫も少なく、樹木などもほとんどない。


「あ、あれは……」

 魔眼を使った遠方の生命探知で数匹の黄色い影が見えた。それは蜥蜴とかげ亜人で、どうやら荒野にも棲んでいる群れが居るらしい。

 魔眼を通しての魔法集中は霊的な体に負担がかかる。それに気づいた俺は視覚を戻し、猛獣の居ない安全な経路を進んで南下を再開する。

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