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魔導の探索者レギの冒険譚  作者: 荒野ヒロ
第五章 戦士の精髄

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野盗との遭遇

この時代の人間は特に、野盗──山賊とか盗賊のような連中が多かったでしょうね。

山の多い日本でも山賊は結構いたようですし。


今回のレギの独白は彼の心情や、非情なまでの現実主義的な一面が垣間見えるかな。

 街道は東から緩やかに南西へ向かって曲がっている。南へ向けての道はなく、目の前を横断する道の先を確認して、人の住んでいる場所はないかと目をらす。

 どちらの方角にも建物などは見当たらない──その気配すらない。

 荷車の通ったと思われる跡も(ほとんど)なく、この踏み固められた道は、人や人馬の通る数が少ない道であるようだ。


 道の先に森があったり、丘を避けて曲がるような所もあるが、道はほとんど直線に伸びている。道の左右に大きな岩や林などがあるが──その他に目を引く物もなく、どこまでも自然の風景が広がっていた。


 とはいえ人が通った跡がこの道を作っているはずだ。どちらかに進めば、きっと村や町につながっているだろう。

 俺は南に向かう事も考えて、南西に続いている道の先に進むのを選んだ。


 草地の次は踏み固められた道だ。──その前の河原よりよほど歩きやすく、周囲を警戒しながら進み続けるだけでいい。気楽な旅とは言いがたいが、宝石や輝石を拾い集めて童心に返ったり、虫や小鳥の鳴き声を聞きながら道なりに進むのは、気分的にもくつろいでいられる時間となった。


 魔術の門でも開こうかと考えたが、林の近くを通るので──念の為に生命探知を使って周囲を探ってみると……

 なんと、林の中に人影がいくつも見えるではないか。……それも、警戒色の黄色や朱色に近い色の人影だ。


 全部で──四人。

(野盗か……)

 なにしろこっちは一人で冒険をする事が多かったので、野盗などに襲われるのは()()()()()()だ。

 中にはたった一人で街道を歩いている男の様子を見て──勘の働く者が居る場合は──仕掛けて来ない、という時もあったが。多くの場合はそんな風にはならず、身包みぐるみをごうとしてくるのだった。


 俺の今までの野盗撃退率は()()()

 逃げた事もない。

 それも大抵は()()()にしてきた。


 魔法を使わずに剣のみで戦う時もあるし、面倒臭いと思った時には──魔法で多くの野盗を排除したりもした。

 情けなどまったく感じない。


 野盗とは、他人の利益を力で奪おうとする連中だ。

 それも人数にものを言わせるような連中ばかり。そんな連中を()()()()のに、なにを躊躇ためらう理由があると言うのか。


 *****


「野盗とはいえ、相手は人間です。殺してはなりません」

 だいぶ前に修道女の一団を護衛した時の事、数名の傭兵と共に彼女らの護衛をして山間部を移動していた時に、十名以上の徒党を組んだ連中に襲撃された時に──「正義感」あるいは「信仰厚い」修道女からそう言われたのだ。


 俺も、彼女らを守る為に雇われた傭兵たちも──誰一人として、そんな修道女の言葉に耳を貸さなかった。

 当然だろう。

 守られるだけで戦った事もない者の意見など、傭兵が聞き入れる訳がない。


 俺たちは数分の戦いで野盗を皆殺しにした。

 逃げようとする者の背中に弓矢を射かけ、倒れた相手の側まで歩いて行くと、傭兵の男は容赦なく倒れた男の背中に剣を突き立てた。


「ここで殺さなければ、こいつらは俺たちの後にここを通る者たちを襲い、奪い、犯し、殺すだろう。あんたらは自分の身さえ守れれば、それでいいと考えているのか?」

 傭兵を率いるその男の言葉に、修道女は顔を真っ赤にして己の愚かさを感じている様子だった。


 信仰心で飯が食える連中と、人を襲わなければ自分の食い扶持ぶちを稼げない連中の間には、途方もない認識の違いがあるらしい。

 この修道女は自分や傭兵が居なかったら、どうなっていたかを考えないのだろうか? なんの為に教会が傭兵を雇って、彼女らの護衛に尽かせたと思っているのか。


 自分たちが凌辱りょうじょくされなければ事態が飲み込めない、そういう愚か者を作り出すのが、宗教や教会がある意味なのか?

 あまりに馬鹿げた正義感、あまりに盲目的な信仰心。率直に言って反吐へどが出る。


 俺はその時にはっきりと理解したのだ。

「神にすがる者は、己を綺麗きれいなままでいさせたいだけの、無知蒙昧むちもうまいにして無力な、思考停止した愚か者だけ」だと。

 偽りと矛盾だらけの教義など、この俺には必要ない。最終的には暴力と支配を容認する宗教など、唾棄だきすべき人類悪そのものではないか。

 己のつまらん正義感を語る前に、己の身くらい自分で守ってみせろ。


 *****


 林の側まで近づくと、木陰から二人の男が姿を見せた。すでに剣を抜いており、顔つきを見ただけで──こいつが悪党でなかったら、どういった顔の持ち主が悪党なのかと聞きたくなる。


「おう、待ちな兄ちゃん」

 するとその背後から二人の男が姿を見せる。

 一人は弓矢を構えている背の低い三十代ほどの男。もう一人はまだ若く、手にした得物は短刀一本のみ。


 前衛の男たちはみすぼらしい格好をした中年や、それに近い歳の男。手には鉄の剣をそれぞれ手にしていた。

 敵対反応を見るまでもなく、彼らの気配は真っ赤になっているだろう。俺が近づくまで上手く隠れられていたのが不思議なほどだ。


「こんな道を一人で通る奴が居るとは思わなかったぜ」

 こんな道で待ち構えていた連中が言うべき言葉ではないだろう。


「『()()()()』近くの境界路を通る奴は罪人や密売人、訳ありの商人共くらいだろうが……あんたは罪人か?」

 二人の男が剣を構えたままじりじりと近づいて来る。──俺は魔剣の柄に手をかけた。

「おっと、止めておくんだな。こいつは魔法使いだぜ、魔法で切り刻まれたくなかったら、大人しく武器や荷物を置いて行くんだな」


 ご丁寧に後ろに控えている若者を指し示して手の内を明かす。まるで粋がった素人だ。

 俺は魔剣の柄から手を放すと、革帯ベルトに付けた短刀を素早く引き抜いて、魔法使いの若者に投げつけた。


「ぎゃぁっ!」

 股間近くの太股に短刀が突き刺さった若者は、足を押さえて地面に倒れ込む。手前の男たちは悪態をきながら、素早く斬りかかって来た。二人同時に頭上から振り下ろすだけの──力任せの攻撃。


 俺は横に回り込みながら魔剣を抜き、一人の男を斬りつけた。

 革鎧を切り裂いたが、その下のくさり帷子かたびらに刃が阻まれた。どうもあらかじめ防御系の魔法を張っていたらしい。ただの阿呆あほかと思ったが、多少の用心をするくらいの頭はあったようだ。


 後衛の弓矢を構えた小男が矢を射ってきたが、それをかわしながら剣を構えた男に蹴りを入れ、もう一人の男に突き飛ばす。

 奴らが揉み合っているうちに弓矢の小男に接近し、肩口から胸元まで深々と切り裂いて打ち倒した。

 魔法使いの若者はすでに戦意を喪失し、逃げ出そうとしている。


「馬鹿野郎! 魔法で攻撃しろ!」

 統率者リーダー格の男に恫喝どうかつされて若者は、地面に倒れ込んだまま、風の魔法の呪文を詠唱し始める。……だが相当に遅い──俺の感覚からすると、という意味だが。


「邪風の刃!」

 すでにこちらの対応は準備できている。二発の斬撃を反射魔法で弾き返すと、魔法使いは自らの放った魔法で切り裂かれ、先程よりも大きな悲鳴を上げる羽目になったのだ。


「こいつ、魔法使いか⁉」

 怖じ気づいた様子を見せる男が、腰の短剣を投擲とうてきしてきた。

 俺はその短剣を躱したが、直後に二本の矢に襲われた。

 林の中に隠れていた者が居たのに気がつかなかった。

 弓矢の一本を剣で叩き落としたが、一本の矢が俺の肩に突き刺さる。かなり深々と俺の肉をえぐり、骨にまで矢の先端が突き刺さったのを感じる。


「やった!」

 中年男が声を上げる。

「その矢には麻痺まひ毒が塗ってある! もう身動きできないだろう!」

 勝ち誇った言葉。

 森の中から弓を構えた二人の男が姿を見せる。


 どうやら生命探知にも引っ掛からない「不破の隠幕」を使用して隠れていたらしい。

 魔法使いが居た時点で警戒しておくべきだった。またしても生命探知を過信しすぎていた。魔眼を使用して効果を上げていれば、林の中に潜伏していた者たちにも気づいただろうに。


 俺は矢を引き抜いたが──麻痺毒の影響が肩にじんわりと広がり、熱を帯び始めたのを感じると、地面に膝を突く。


 不用意に近づいて来たのは革鎧の下に鎖帷子を身に着けた男。奴は今度は犠牲者になったのである。

 俺は地面に膝を突いたまま、素早く魔剣を突き出して攻撃した。


「ぐはぁっ⁉」

 深々と胸に突き刺さる青紫色の刃。

 その一撃は心臓を貫いて、男は口から血を吐き出した。

 がっくりと前のめりに倒れ込むと、手にした魔剣を使って横向きに倒す。


「やろうっ!」

 もう一人が斬りかかる前に倒れ込んだ魔法使いの近くに待避する。

「なんで毒が効きやがらねえ! 毒は塗ったのか⁉」

 森からのこのこと現れた男たちに怒鳴りつける首領格らしき男。

「ぬ、塗ってありますよ! たっぷりと!」

 俺は気絶した魔法使いの若者を抱き起こして盾にすると、奴らにこう言った。


生憎あいにくだったな、俺に()()()()()()んだ」

 ばかな! 男はそう言いながら一歩踏み出そうとする。

 その足下から予期せぬ攻撃が放たれた。

 男はなにが起こったか分からぬ様子で、腹に突き刺さった鉄の剣を見て──口から大量の血を吐き出す。


「ごぼぁっ……な、……なんで──だ?」

 中年男を刺したのは、()()()()()()()()()

 そう、魔剣の力を使ってよみがえらせたのだ。


「うおぉぉあぁぁっ!」

 死んだはずの男は呻き声を上げながら、弓矢を構える男たちに襲いかかる。

 鬼気迫る表情で向かって来る男の胸元は大量の血で染まり、口からも──まだ赤い血が溢れ出ている。


「うわあぁぁっ!」

 二人の男が弓矢で死んだ男を攻撃したが、そいつの鎖帷子を貫通したとしても、不死者の突進は止められなかっただろう。

 一人の男の脳天に鉄の剣を叩きつけて殺害すると、残されたもう一人に向き直る。血走った目で睨みつけられた男は、林の中に逃げ込もうとして、木の根に足を取られて転んでしまう。


「ぎゃあぁあぁっ‼」

 倒れた男の口から悲鳴がこぼれ出た。

 倒れた背中に鉄の剣を突き立てられ、何度も腰や背中を鉄の剣で貫かれた男は、すぐに静かになって動かなくなった。


 魔剣の力で甦った男の力を解くと、男は剣を握ったまま──その場に膝を突き、その勢いのまま顔面を地面に叩きつける。



 矢を受けた肩に手を当て、魔法で傷を塞ぎながら倒れた魔法使いの若者に近づく。男は気を失ったままだ。

 痛みに耐性がないのだろう。腕と胸を引き裂かれた傷には止血を施しておいた、死にはしない。


 別に殺してしまっても問題はないのだが、南西に向かってどれくらい歩けば町があるのかと、聞いておこうと考えたのである。

レギが肩の傷を治す描写を追加しました。

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[気になる点] あれだけご高閲を垂れてたのに野党ごときに手傷を負わされるの無様すぎるだろ
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