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魔導の探索者レギの冒険譚  作者: 荒野ヒロ
第十章 海を越えた先での死との邂逅

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港町アケリュース

冒頭のシーンは苦手な人はスルー推奨。直接的な表現はしてないはずですが。

 少女との性交は予想以上に激しいものになった。初物を相手にしたとは思えぬ相手の乱れっぷりに、俺の欲望は少女のそれに呼応するように燃え上がった。

 牧舎の屋根を激しく打ちつける豪雨。

 雨音に怯えた羊たちが、壁際に寄り添うようにして身を縮める。

 雨音が響く真夜中に、日焼けした少女の肌をたっぷり蹂躙じゅうりんし、喘ぎ声を上げ続ける少女を徹底的に、堕落のふちへととしてやった。


 魔女の房中術を使用しての快楽に溺れた少女。

 初めての経験が、魔力と生命の循環する──異質な快楽を与えられた少女は、普通の女としては成長できないかもしれない……

 そんな風に考えたが、この性に奔放ほんぽうな少女は、放っておいても性欲に従順で、男をたぶらかすような女になっていただろう。

 むしろ最初に強烈な性的興奮を味わい、他の男では満足できなくなる方が、この少女の為かもしれない。

 少女は雨が降り止んだ夜半まで俺を放さなかったが、さすがに股間が酷使に堪えかねると訴えてきたので、彼女を部屋に戻るよう言い聞かせると少女は渋々とだが、俺の言葉に従って牧舎を出て行ったのである。


「まったく……とんでもない少女を相手にしてしまった」

 彼女の激しい情欲は、数人の男を相手にしても問題ないくらいに強いものだった。彼女は俺との経験で得た強烈な快楽を求めて、将来は複数の男と同時に寝るような、そんな淫売になってしまうかもしれない。などと無責任に考えてしまう。

 彼女の体を使って魔力を充分に回復できた。二つの魔力の器にもかなり魔力を溜め込み、一つはもう満杯になっている。

 成熟した女の柔らかな肢体というのはいいものだが、たまには未成熟な、そんな体を愉しむのもいいものだな。


 外は夜の冷たい空気に満ちていた。

 体に残る少女の温もりが一瞬で凍りつく。

 俺は牧舎の外に出ると井戸に駆け寄り、水を汲み上げるとそれをお湯に変える。お湯で体を洗ったあと、次に赤い跡を残した敷布を洗って、水分を蒸発させた。

 空に浮かぶ青白い欠けた月を見上げながら、心地よい疲れを感じ、俺はわら布団に戻って、ぐっすりと眠るのだった。




 翌朝に朝食を用意してくれた夫婦に銀貨を渡した。純朴な彼らはそれを受け取るのを躊躇ためらったが、お気になさらずとそれを受け取らせ、黒馬に飼い葉と水を与えて旅の支度を済ませる。

 少女は俺との別れを人知れず嘆いたが、俺は一度きりの関係だと割り切っていたので、さっさと南へ向けての旅に戻って行く。

 小さな一時の愛人の事を、楽しく思い出す時もあるだろう。その時は、あの淫らな少女に会いに来てもいい。

 そんな事を考えていると、馬が鼻を鳴らし、昨夜のおこないについて意義申し立てをするみたいに、首を振りながらパッカ、パッカとひづめを地面に打ちつけている。


(もしかして眠れなかったのかな)


 あまり大きな喘ぎ声を出さないよう少女にうながしたが、何度か少女を激しく責め立て、大きな声を上げさせてしまった(雨音で民家の方には聞こえていないはずだが)。

 黒馬は不満を訴えながら──とつぜん駆け出し、雨後の街道を駆け抜けた。器用に水溜まりを避けながら、晴れた空の下を疾走する。

 街道を駆ける馬。荷車や兵士を乗せた馬などとすれ違いながら、朝日の照らす道を進み続けた。

 視線の先には雨雲もなく、晴れた空に白い雲がぽつりぽつりと浮かんでおり、穏やかな風に吹かれてゆっくりと南東の空に流れて行く。

 どこまでも青い空の下、俺と馬は南西へと向かう道を進む。ルシュタールの、ノーアダリス大陸の最南端にある港町を目指して進み続ける。


 かなりの距離を麦畑と共に、その黄緑色の波打ち際を通って進んでいたが、やっと広大な穀倉地帯の終わりを見届けた。

 その見慣れた風景と別れ、今度は大きな岩が地面から突き出たような場所に向かって進み、ルシュタールの兵士に守られた関所で身分証を呈示するよう言われ、戦士ギルドの階級印章を見せる。

「通ってよし」

 通行料を取られる事もなく、すんなりと通されたのは、荷物が少なかった所為せいもありそうだ。穀倉地帯を守る彼らは、農民を守るよう徹底した指示を受けており、朝昼晩と警戒を怠ってはいないのだ。


 正午に近くなった頃に、街道は大きな舗装路に差しかかった。そこは道が三つまたに分かれ、それぞれの道の先まで石畳が敷かれていた。

 南へ向かう道幅は広く、しっかりとした灰色の道が続き、その道を進んでいると──風向きが変わる度に、その風に潮の匂いを感じ始める。

「海が近いな」

 馬上から見える景色には丘や岩山が見え、その間に青い海原がちらりと見えてきた。

 岩山と丘の間を通り抜けると、そのまっすぐに延びた道の先に、白い壁が見えてくる。町を囲む壁がこんなにも真っ白な物は、今まで見た事がない。


 横に広がる白亜の壁。それは地上に降り立った雲の壁かと思われるほど白く、この街道はさながら──天国へと続く、旅の果てへと導かれる道程のようだった。


 この白亜の壁を歌った詩人が居たのを思い出した。どんな詩だったか覚えていないが、印象的な白い壁について書かれていたのは覚えている。

「詩を読みたくなる気持ちも分かるな」

 海の青と、港町の白い壁。

 その対照があまりにも鮮やかなので、嫌でも異国に来たという想いを抱かせるのだ。


 黒馬はその白い壁を目指して進み続け、大きく開かれた町の門前にやって来た。

 門番に通行税を支払い、アケリュースの町の中へと入る。

 さすがに港町だ、活気にあふれている。──石畳の上をゴロゴロと音を立てて荷車が通過し、町の外へと出て行く。

 ほろを付けた荷馬車が数台通過する。行商人の隊商キャラバンだ。馬にまたがった数名の冒険者らしい護衛を付け、ぞろそろと目的地に向けて出発して行った。


「さて、まずは馬を返し、そのあとで港に行ってみるか」

 馬屋に行って黒馬を返すと、このやんちゃな馬は俺の目を見つめながら、別れを惜しむみたいに鼻を鳴らした。

「またな」

 黒馬の白い鼻筋を撫でてやり、たった数日の間ではあったが、旅を共にした仲間との別れを惜しんだ。




 海の方へ近づくと、波止場に波のぶつかる音が聞こえ、潮の匂いがぷぅんと鼻をくすぐる。ずいぶん久しぶりに嗅いだ海の匂い。

 海に突き出す波止場には、形も大きさも異なる船が停泊し、船員たちが船から荷物を降ろしたり、積み込んだりしている。

 アントワの船らしき大きな船には灰色に汚れた帆。船体には黒い線が入っている。そこに積み荷を載せていく屈強な船員。


 埠頭ふとうを管理する腕章を付けた若い男が歩いていたので、侯爵のセルギオ=ルド=アシュファンからの手紙を見せ、事情を説明した。

「トルーデンに向かう船ですか……」

 そう言うと彼は歩きながら、火山島に向かう船は二ヶ月に一度の定期便しか出ないと説明する。

「──しかしアシュファン侯爵様の命令とあらば、明日にでも向こうに向かう船員を手配いたしましょう」

「できるんですか?」

「もちろん。帰りの船についても、時間さえ指定してくだされば、帰りの船もご用意しましょう」

 そう断言する男に「感謝します」と伝えると、彼は埠頭から離れた場所にある、白い砂浜を指し示した。


「あそこに置かれている小さな舟が、トルーデンに数名の人を運ぶ時に使われる舟ですが、……あれでもよろしいですか?」

 それは四人から六人の漕ぎ手によって海原を進む小舟だった。

「構いません。どれくらいで向こうに着くのでしょうか?」

「四名の漕ぎ手を用意するので、そうですね……二時間から三時間だと思います」

 青い塗料が塗られた小舟は、かなり速い速度で移動できるらしい。

 俺は明日はやい時間には砂浜に来るよう言われ、さっそく宿を探しに行く。──町にはいくつもの宿屋、酒場……中には売春宿もあるみたいだ。


 そうした情報を戦士ギルドから得ると、ついでに掲示板などを覗いて見た。──そこには、だいぶ前に貼られた勇者シュバールトに関するびらが残されていた。

 それによると、村の近くに現れた猪豚いのぶたの闘鬼や、小鬼ゴブリンの群れを撃退した事などが書かれていた。いずれ邪神(パーサッシャ)アピポスを退けた話などの情報が、戦士ギルドを通じて国中に喧伝けんでんされるのだろう。


 他にもリガルトという冒険者の活躍について書かれた紙が貼られていた。

 こいつは確か、アシュファン侯爵の娘が口にした冒険者だ。有名な冒険者なのは間違いないらしい。

 少々文字がかすれて読みにくくなったそれは、リガルトという冒険者の一団パーティが、村を襲撃してきた亜人や魔物の群れを撃退した。という報告書だった。

 華々しい活躍がまるで見てきたように書かれているが、おそらく書き手の脚色だろう。いくぶん嘘くさい内容だ。

 他に見るべきものもなく、戦士ギルドあとにする。


 俺は安宿に部屋を借りると、部屋に背嚢はいのうを置いて鍵をかけ、昼食をとりに町を散策するのだった。──そうしながらも部屋に戻ったら神霊領域に転移し、魔神の力を解析する作業をおこなおうと考える。

 魔神の残した力を結晶化し、それを魔術領域の一部に組み入れてあるが、まだ間接的に自分の力としている状態なのだ。

 弱っていたとはいえ強大な二つの力なので、そのまま取り込むと魔力回路に影響が出るかもしれない。焦りは禁物。

 魔神の魂魄こんぱくとも呼べる力の源。それを奪い取るという──神殺しの所業。


 まずはその基礎となる一柱ネブロムの力を自分の物とし、そのあとで魔神ファギウベテスの力も、自分の領域に同化させるつもりだ。

 魔法陣を通じて繋がっている状態でも、俺の魔力が強化された。完全に取り込めば魔力総量も増やせるし、魔神の持っていた魔法も使用できるはず。


 昼食をどこで食べようかと町を歩いていると、道の両脇に料理屋が並んでいる通りを見つけ、そこに入って行く。その道に入って行く船乗りが多かったので、その後ろをついて行き、一軒の料理屋に入った。海鮮を扱った献立メニューの多い店で、かなり繁盛している様子。

「こちらへどうぞ」

 一人の客を店の奥にある小さな席に案内する給仕。

 壁にある黒板に書かれた献立や、他の客たちのテーブルを見て注文する料理を決めると、給仕にそれらを頼みながら金を支払う。


 椅子に座って待っていると、すぐに料理が運ばれてきた。ラニ油で揚げられた海老や蟹。魚と貝の煮込み料理。

 香草ハーブを練り込んだ丸パンの後口が爽やかで、油まみれになった口をさっぱりとしてくれた。

(油と合うな、このパン)

 どの料理も満足できるものだった。俺は給仕を呼ぶと干し肉と腸詰め(ソーセージ)、丸パンを包んでくれと頼んだ。薬草入りや、黒パンもあると言うので、三種類のパンを適当に入れるようお願いして銀貨を手渡す。

 若い給仕の女は厨房に下がると、しばらくしてパンを入れた布袋と、腸詰めと干し肉を入れた布袋を手に持って戻り、中に入った物を見せ、これでいいかと確認を取る。

「ありがとう」

 俺は彼女に礼を言い、銅貨を二枚受け取らせて店を出た。


 パンの入った布袋を手に路地裏に入ると──その布袋を影の中に入れ、町の散策に向かう。本屋などはなかったが様々な種類の店があり、冒険者用の道具屋には魔力結晶や、携帯灯なども売られている。

 ここで売られている携帯灯は、ルシュタールの魔導技術の産物らしい。古代の遺物ではなく、新たに作り出した物だというのだ。

「それは凄い」

「まだまだ量産には至っていないし、使うには魔力の結晶を消費するので、どちらにしても一介の冒険者には手が届かんと思うがね」

 試しに明かりをつけてみると、角灯ランタン型のそれは、周囲に弱々しい光を放つ類型タイプの物だった。俺のは棒の先から一方向に強い光が出るよう改造した物だ。

「なるほど」

 俺は新しい携帯灯は購入せず、魔力結晶をいくつか購入して、その道具屋を出ると──宿屋へ戻る事にした。


 部屋に戻ると鍵をかけ、念の為に結界も仕込んでから神霊領域へ転移し、魔神から得た結晶の力を解析する作業に入る。

ようやく海に辿り着いたレギ。

港町の白い壁と青い海。海を越えた先にも様々な冒険が──

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― 新着の感想 ―
[一言] 馬は音質の判別能力に優れており、嗅覚も人の1,000倍との事なので、言わずもがなかも知れません。 >海を越えた先にも様々な冒険が── レギが何を見聞き体験するのかが楽しみです。
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