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黒騎士の名において宣言するよ

「いいか?」


 ひとしきり泣いて、ジジが落ち着いた頃、バイランが話しかけてきた。


「ロロとヤヤの罪を捏造したことを、ダダが認めた。それに伴い、ロロとヤヤは無罪放免とする」


 ロロとヤヤが呆然とバイランを見つめる。


「ホントに……?」


 信じられないといった表情で、ジジが問いかけた。


「黒騎士の名において、宣言する」


 黒騎士という存在について、詳しくは知らない。


 だが、バイランの堂々たる宣言を聞いたら、誰しも思うだろう。


 嘘偽りなく本当なのだと。


「あなた……!」

「ああ……!」


 ロロとヤヤが、抱き合って喜ぶ。


「よかった……」


 力が抜けたのか、ガクンと肩を落とすジジ。


「しかしながら、ここにいる者、すべての罪が許される訳ではない」


 バイランが冷たく言い放った。


「国王様へ献上する予定であった剣の窃盗およびその剣の窃盗の罪を他人に被せた。そのことにより、ダダ、お前はロロとヤヤに代わって処刑される」

「わかっている……」


 ダダは既に覚悟を決めていたようだ。


「ダダ、お前……」


 ロロがダダを見つめる。


 二人は親友だったんだもんな。


 ロロの瞳に込められている感情は、俺には計り知れない。


「家族を、大切にな」


 ダダの表情は、つきものが落ちたように、晴れやかであった。


 俺はダダのことを許せねぇと思っていた。


 でも、そんな顔をされたら、何も言えないじゃないか。


「罪を犯した者は、もう一人いる」


 皆の視線がバイランに集まる。


「ダダの屋敷に無断に侵入し、屋敷で働く何人もの人たちに暴力を働いた」


 そうだよな。


 やっぱり、罪になるよな。


「ジジ、お前には何かしらの罰を与えないといけない」


 ジジの両親の処刑が免れた。


 そのことで、ジジは満足なのだろう。


「どんな罰でも、甘んじて受けるわ」


 悔いはないとでもいうように、ジジは笑顔で頷いた。


「それなら、私たちが処罰されるわ」

「俺たちの為にジジが裁かれる必要はない」


 ヤヤとロロが、バイランに訴えかける。


「いいの」


 ジジが、両親の肩を抱く。


「あたしが決めたことだから」


 そして、優しくささやいた。


「ジジ……」


 言葉にできないな。


 ジジのことだ、もうテコでも動かないだろう。


「罰は与えるが、ジジには情状酌量の余地があると考えている」


 バイランは、全く表情を変えない。


 どういった罰になるのだろうか。


 読めない。


「お前はこれから、どうしたい?」


 バイランが、ジジに問いかける。


「世界を見て回りたいわ」


 ジジが即答した。


 一緒に世界を旅する。


 俺とジジとの約束だ。


 その答えを聞いたバイランが、ニッと笑う。


 一瞬だけ好戦的な猛者の雰囲気になったが、直ぐに冷静な黒騎士の佇まいに戻る。


「ジジをドワーフの町から追放する。猶予は一週間。それ以降、この町に立ち入ることを禁じる」


 この町に立ち入ることを禁じる、か。


 ということは――


「父さんと母さんには、これからも会えるのね」


 ジジは、ホッとした様子だ。


 世界を見て回ると言ったが、あくまで俺との約束を果たすためだろうからな。


 もう両親と会えないとなると、辛いだろうからな。


 追放という響きは重いが、再び両親に会うことはできる。


 この町で無いのなら、両親と会うことができる。


 だとすると、ドワーフの町から追放という罪は――


「猶予期間の後、ドワーフの町に立ち入りさえしなければ、俺は関知しない」


 バイランの態度が幾分か和らいだ。


「さあ、今この瞬間から猶予期間だ。お前たちは家に帰って、話でも何でもするがいい」


 バイランがプイッと顔を逸らして、顔を掻いた。


 このおっさん、柄にもなく照れてやがるな。


「ありが――」

「そういうのは、いい。じゃあな」


 バイランは手をヒラヒラと降り、感謝の言葉を途中で遮る。


 照れ隠しだな。顔が赤くなっている。


 ジジたち家族は、何も言葉を発さず、バイランに頭をさげた。


 言葉がダメでも、態度で示すのなら何も言えないよな。


 バイランはやれやれといった風に両手をあげた。表情は満更でも無さそうだ。


 ジジたちはひとしきり頭をさげた後、地下牢から出て行った。途中、何度もふり返り、バイランの方に向けて頭を下げながら。


****************************


 ジジたちが出て行った後、地下牢には俺とダダが残った。


 俺は屋敷でダダを見た瞬間、ピンと来たんだ。

 

 やはりダダは俺が睨んでいた通り、黒だったとな。


 なにせダダには、思考操作の術がかけられていたからな。


 親友に罪を被せるなんて愚行に及んだのは、そのせいだ。


 だが、ロロたち被害者には、ダダが術にかけられていたことは伝えられない。


 あの家族を危険な目に遭わせたくないからな。


 だからこそ、こいつには聞かなければならないことがある。


「お前の背後には、誰がいる?」


 剣の整備の為にドワーフの町にやって来たなんていうのは、詭弁だ。


 ダダの背後関係を確かめること、それがドワーフの町にやって来た、俺の本来の目的だ。


「何の話だ?」

「とぼけても無駄だ」

「……言えないな」

「黒騎士である、俺に言えないという意味か?」

「そうだ」


 こいつは厄介だ。


 アルガンド王国で黒騎士に逆らえる権力者は、王家に連なる者たちのみだ。


 黒騎士を始めとする色騎士は、王家直轄の組織だからな。

 

 当然ながら、俺は王家の依頼でドワーフの町にやってきた。


 必然的に、ダダの背後にいるのはアルガンド王国の王家ではない。


 つまり、他国の者だ。


「もし強制的に吐かせようとしたらどうなる?」

「呪いで死ぬようになっている」


 当然だが、拷問して口を割らせることは出来ないようだな。


 しかも、恐らくダダがかけられた呪いの解呪はできない。黒騎士の俺に対して、呪いで死ぬと言っているのだから。


「面倒な……」


 国王様に献上する予定の剣なんて代物、動かせる奴はそうはいない。


 なにせ、国家クラスの魔術結界で守られていたんだからな。


 さらなる問題がある。


 その剣の行方がさっぱり分からなくなったことだ。


 いったい何処の誰がどうやって持ち出しやがった。畜生め。

毎日投稿するのが辛くなってきましたので、しんどい日は投稿をお休みすることにします。

投稿を楽しみにしてくださっている方々、申し訳ありません。

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