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五聖神黙示録  作者: 浅葱沼 氷雨乃
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「黒」の書・第8話 ヴァジーラとはさよなら!?

 最後の藍静玉のかけらを邪羅鬼に奪われ、追い詰めらたリシェール。しかし、邪羅鬼は反動で休眠状態に入り、リシェールは五聖神・玄武に助けられる。

 久しぶりに学校に行くと、親友のヴァジーラが母の再婚を機に転校するかもしれない、と言ってきた。

 二人は離れ離れになってしまうのか!?

「ウへヘヘヘ」

 藍静玉の欠片を得て進化を遂げた超邪羅鬼は森の中で気を失っているリシェールの方へ歩み寄る。

「リシェール、たのむ。目を開けてくれよ、リシェール……」

 両目を閉ざし、半開きの唇のまま横たわるリシェールはクァンガイがいくら呼び掛けても目覚めない。そうこうしているうちに超邪羅鬼はリシェールの所へ来てしまう。肘のハサミを刃に変形させ、リシェールにとどめを刺そうとした時だった。

「ぬぬっ」

 超邪羅鬼の体がぐらついた。クァンガイはリシェールの傍にいたまま、敵に何があったのかあ然とする。

「こんなに疲れと眠気が来るとはな……。伝説五玉は破壊力が壮絶な分、反動も壮絶な訳か。

 聖神闘者、命拾いしたな。休眠が終わったら、お前らとまた向き合うだろう。それまで待っているんだな」

 そう言って超邪羅鬼は踵を返し、姿を消していった。クァンガイはリシェールが死なずに済んだものの、自分の非力さに悔しがった。



「ん、ここは……」

 リシェールが目覚めると、黒光りの床と壁と天井の小ぶりな浴槽の中の湯船にいた。温かい蒸気がリシェールの前にたち、リシェールは赤い透明な湯につかっていた。赤というよりはバラ色で、自分がどうして浴場にいるのかぼんやりした思考を遡らせた。

「ハインシュルツに来て、浄水場の中にある藍静玉を取りに行こうとしたら邪羅鬼が出てきて、邪羅鬼の攻撃でケガをして……」

 リシェールは自分の姿を見て気づく。右腕と左脚に負った傷が消えている。いや、うっすらとはあるけれど、目立たない程度に塞がっていたのだ。

「これは……どうして

 リシェールが不思議がっていると、扉が左右が開いて中にリシェールより幼い女の子がタオルを持って現れたのだ。女の子は金魚やコイのような服である。

「あなたは……。って、ここって、まさか……!?」

 リシェールは気づいた。黒光りの壁と床、魚のような服の女の子、ここは漆黒殿。リシェールは浴場を出て、水気をぬぐい、他の童女が運んできた服に着替えた。白いダウンと茶色のベルトブーツにマフラーとイヤーマフと手袋、それからボレロとシャツにスカートと下着。リシェールの普段着である。リシェールはそれらを身につけると、クァンガイが迎えに来てくれた。

「リシェール、目覚めたか。傷はどうだ?」

「うん。いつの間にかふさがっていて……。だけど、どうして漆黒殿に……」

 リシェールがそう思っていると、クァンガイが促す。

「来い。玄武様が待っている」

 クァンガイの案内でリシェールは玄武のいる広間へやって来た。

「リシェール、傷は治ったか。お前さんが超邪羅鬼にやられたと知った時、わしがお前さんを漆黒殿に移した。ケガもひどかったから、再生の薬湯に入れたのだ」

 玄武はリシェールにいきさつを話す。

「ああ、それでか……」

 リシェールは納得する。その後、「あっ!!」と叫んであることを思い出す。

「わたしが今まで集めた藍静玉は……!?」

「それなら心配ない。これは無事だ」

 玄武がリシェールに水色の透明な石を差し出す。藍静玉は三角のない雫のままだった。

「超邪羅鬼は強化の代償で休眠に入った。だが、いつ目覚めるかわからぬ。そのことを忘れるな」

 玄武はリシェールに注意した。リシェールは超邪羅鬼の圧倒的な強さに恐れを抱きつつも、絶対に逃げないと決意した。

「あの……〈移転の衣〉がないから、家に帰りたくても帰れないんだけど……」

 リシェールは玄武に言った。

「おお、そうだったな。わしのほんの少しの力でお前さんをペルヴェドに送り返す。クァンガイ、リシェールのことを今まで通り頼むぞ」

「はい」

 玄武はリシェールとクァンガイをペルヴェドにあるリシェールの町へと送り返した。二人は薄墨色の光に包まれ、漆黒殿を去っていった。


 ペルヴェド市内にあるあるスラドフ通りの交番。三階や四階の建物の中で一つだけ鳥小屋のような一階建の交番の前でリシェールは両親と共に頭を下げていた。

「ホントにありがとうございます。うちの子を保護してくれて……」

 リシェールの母、デラはハンカチで目頭を押さえながら壮年の警官に礼を言っていた。

 父母はそろってコートを着て、リシェールも真ん中に立っている。三人は徒歩で閉店間近の商店街を歩き、フロイチェク通りに向かっていった。

 リシェールは漆黒殿から帰って来た後、夕方のスラドフ通りにいる所を巡回中の警官に捕まって交番に連れて行かれた。

 リシェールが超邪羅鬼に負けた日、夕飯時になっても部屋から出てこないリシェールを呼びに母が行ったところ、リシェールの姿がないことに気づき、家出したのではないかと両親と姉は不安になり、近所や学校やヴァジーラとかの友達に訊ねたところ誰も知らず、行方不明になったと騒いでいた。それも三日間も! リシェールは自分が三日間、漆黒殿にいたことに驚いていたが、警官や両親にどうしていなくなったのかは言えずにまごついていたが、追いつめられた時には町外れの廃墟になった低層ビルの中へ風で飛ばされたマフラーを拾いに行ったが、誤って閉じ込められてしまった、と話した。幸い冷気の入ってこない場所だったから、と言ったのだった。

「もう……、心配かけさせて! パパなんて大学を休んだんだから」

 母親は溜め息を吐き、濃い青の空間の住宅街を歩いている。父親もリシェールに軽く拳骨をした。

「今度から外に出るときはちゃんとパパやママに言えよ」

 父もリシェールに厳しく言った。そして三人は白樺のある庭の茶色の家に着き、久しぶりに家族四人と犬のオラフとで夕食にありついたのだった。久しぶりに母の手料理を口にしたリシェールは三日前の出来事がウソみたいに思えてきたが、テレビでハインシュルツの浄水場がめちゃくちゃになったニュースが流れたので、やっぱり本当だったと感じた。テレビではハインシュルツ浄水場の破壊は検討中であった。

 三日ぶりに私室のベッドに入った時、クァンガイがリシェールに言った。

「リシェール、今は休眠中とはいえ、超邪羅鬼はいつ出てくるか分らない。気をつけろ」

「……わかっている。でも、明日から学校に行くから今日はお休み」

 リシェールは暖かな毛布と布団の中で眠りに着いた。




 リシェールが学校に来ると、同級生たちがリシェールに声をかけてきた。昨日とおととい学校に来なかったうえ、行方不明になったと聞いて様子を見に来たのだ。

「みんな。ごめんね。でも今はこの通り元気だから……」

 苦笑いしながらも、赤茶色の髪に灰色の眼の少女がリシェールを睨む。ヴァジーラだ。

「リシェール、あんた……」

 リシェールにつかつかと近づき手を上げ、リシェールはぶたれる、と思って目を閉ざした。しかしヴァジーラはリシェールの肩に手を置いた。

「いなくなった、と聞いてすっごい心配したんだから、もー」

「ヴァジーラ……」

 リシェールは親友の顔を見て安堵する。笑っていた。その時、担任のジャンナ先生が入ってきて、みんなは自分の席に着いてHRを始めた。

 それから授業が一コマずつ進み、五時間目の授業と掃除と帰りのHRが終わると、みんなそれぞれのクラブへ出かけていった。

 リシェールも美術室へ行って美術部の活動をしに、ヴァジーラは三年生の教室に行って弟のボルトと一緒に帰宅した。

 プレゼオは三月上旬まで降雪が多く、主に北にあるほど積雪が多い。ペルヴェドはまだましな方で、ブーツとコートと手袋などの小物があれば充分だ。

 ヴァジーラは弟と共に学校を出て、フロイチェク通りの近くにある朱色屋根のアパート『ツグミ荘』へ入っていった。ヴァジーラ姉弟の家は〈二〇五号〉室で二階の一番奥である。濃緑の扉を開けると、台所と一つになっている居間と奥右の部屋は姉弟の部屋、奥左は母の部屋、右折りがトイレと風呂場と言う構造である。居間はテーブルと椅子が四脚と二段チェストとその上の二十一インチテレビという簡素さ。

 姉弟は寝るのも勉強するのも一緒で、稼ぎ頭の母親が帰ってくるまでヴァジーラが料理も掃除も洗濯(コインランドリー通い)も彼女がこなしていた。

 ヴァジーラの父親は酒と浮気を繰り返すため、母親は子供二人を連れて離婚し、スラドフ通りの一角にある料理教室の事務をしながら子供たちと暮らしていた。

 ヴァジーラは流しとコンロと冷蔵庫だけの台所でスープやサラダ、メインディッシュとなる肉や魚を作っている頃に母親が帰ってくるのだ。

「お母さん、お帰り」

 ヴァジーラはサロンエプロン姿で台所から顔を出す。ヴァジーラの母親は赤茶色の髪をボブカットにし、ぽっちゃり体型のおばさんでヴァジーラと少し似ている。

「いつもすまないねぇ。まぁ、ヴァジーラがいてくれたから私は働きに行けるんだからねぇ」

 それがヴァジーラの母親の口癖だった。

「いいのよ。うちに時々リシェールが遊びに来てくれるからさびしくないし……」

 そう言おうヴァジーラだが、両親がいて姉もいて犬のオラフもいてクラブに入っているリシェールのことが羨ましかった。もし父が酒乱で浮気もなかったら、と思うことはあったけれどヴァジーラはリシェールや幾人の女の子と友人になれたことも捨て切れなかった。

 ヴァジーラは平皿にタマネギスープを注ぎ、お椀にサラダを盛り、丸皿に今日の夕食であるマスのムニエルチリソースがけを盛って籠にバターロール、水差しにお茶を入れて居間のテーブルにそれらを置いて夕食にありついた。

 夕食が終わると、ヴァジーラが食器を片づけて洗い。母親は入浴、ボルトはテレビでバラエティ番組『世界珍文化珍文明』を見ている。

 母親の入浴が終わると、パジャマとローブ姿で再び居間にやってくる。ヴァジーラは食器を全て洗い終え空ぶきしようとしたところ、母親に「話がある」と言われて手を止めて椅子に座る。

「ボルトも聞いてちょうだい。お母さんね、再婚考えているの。……その三人暮らしになってからヴァジーラは弟の世話も家事もやってくれているし、クラブにも入りたがっているだろうし。ヴァジーラにものびのびさせたくなって、ね……」

 母親は真剣な顔つきでヴァジーラとボルトに言った。

「いきなりそんなことを言われても……。それに相手のことだって……」

 ヴァジーラは戸惑い、ボルトも沈黙する。

「相手はね、お母さんが働いている料理教室に通っているジーモン・ゼマツネクさん。お母さんより七歳上の建築デザイナーで、早くに奥さんを亡くして子供もいない、って人でね、良ければあんたたちの父親になってあげたい、って言っているの。

 そしたらこのアパートを出て、今より広い家で暮らせるし、ヴァジーラもクラブに入れて友達といつだって遊べるわよ」

 そう言って母親は相手の写真を子供らに見せた。相手は白髪交じりの金茶色の髪のオールバックとひげを蓄え、細身の体に黒縁眼鏡に紺色の眼、ループタイ付きの灰色のスーツを着て、自分がデザインしたらしい屋敷の前に立てっていた。姉弟はゼマネツク氏の顔を見て考える。

「どうせなら会ってからにして」

 ヴァジーラが言うと、ボルトも頷く。


 翌日の学校でヴァジーラはリシェールやターシャやイリーナに自分の母親が再婚するかもしれないことを話した。

「ヴァジーラのお母さんが再婚したら、わたしやみんなと遊べる機会が多くなる、ってことだよね」

 リシェールは喜んで言った。

「うん……。でも、これから会いに行くからなぁ……」

「大丈夫よ。相手に失礼のないようにすれば」

と、ターシャ。

「それに運動系のクラブに入りたがっていたんでしょ? ヴァジーラは家のことと弟の面倒見なくてはならなかったし」

と、イリーナ。

「そりゃあねー……。お母さんが再婚してくれたら、お母さんは料理教室をやめて専業主婦になって家事をやってくれるし、わたしもみんなと遊べるようになるし、楽になれるのはいいんだけど……」

「いいんだけれど?」

 リシェールが訊ねると、ヴァジーラが不安げに言った。

「新しいお父さんと上手くやれるほかにも、もしかしたら転校するかもしれない」

「ええっ!?」

 三人はそろえて驚く。ヴァジーラは母親が再婚したら住んでいたアパートを出て、父親が購入した新居で暮らすことになり学校も替わるかも、という風に。その時、休み時間終了の鐘が鳴って、みんなそれぞれの席に着く。リシェールとヴァジーラは席が近かったのでさっきの続きを小声で話す。

「ねえ、わたしやみんなと離れる覚悟はあるの?」

 社会の教科書で顔を隠しながらリシェールはヴァジーラに訊ねた。

「……仕方ないもん。お母さんも相手もわたしのために思っているんだから」




 それから三週間が経ち、ヴァジーラとボルトは週三回会食していくうちにゼマネツク氏と慣れ合っていた。母親の再婚相手ゼマネツク氏は大らかで生活力があり、姉弟にも優しかった。ヴァジーラはゼマネツク氏と会うたび、笑顔や明るい会話が増えていった。それはいいことなのだが、転校のことは一言も話さなかった。

(やっぱしわたしやみんなと別れるのが辛いから明るく振舞っているのかな)

 リシェールは授業中もランチ中も下校中もヴァジーラの様子を見て辛くなった。

 ところで超邪羅鬼の方は三週間の間に出現することなく、リシェールは学校と家庭それから邪羅鬼が出てきた時のトレーニングに努めていた。土曜日の午後と日曜日、クラブのない日は市内のスポーツセンターでランニングや筋力トレーニングなどに費やしていた。今度は勝てるように鍛えていた。

「体力げんかーい」

 スポーツセンターから帰ってくるたびリシェールは家のベッドで横たわる。

「本当はもっと鍛えてやりたいが、学校もクラブもあるしなぁ」

 クァンガイはリシェールに言う。それから腹や尻尾の先を使ってリシェールの体をほぐしてやった。

「そーいや、あと三日だったな。ヴァジーラが引っ越す日。土曜日の午後、新しい家に行く、って言ってたんだよな……」

 クァンガイがマッサージしながらリシェールに言う。ヴァジーラが引っ越しの日どりが決まったと語るが、転校のことは未だ何も言っていない。恐らく引っ越しを終えてから転校手続きをするのだろう。

 リシェールの机の上には、ピンクの厚紙にカラーペンで書いたメッセージカードと白地のレースハンカチにリシェールが色糸で刺しゅうしたのが途中のままだった。桜色の糸と若葉色の糸で花の縁取りをし、オレンジの色で「V」の刺しゅうが施されていた。


 そしてまちに待った土曜日。この日は二月最後の土曜日で、曇り空。町中の雪は日ごとに減っており、屋根や道端に薄汚れた雪の塊が残っていた。

 三時間目の授業とHRが終わると、基礎学校の生徒たちは帰宅したり弁当を持ってクラブに行ったりとしている。美術部は土曜日活動がないため、リシェールは何度もずれを直したハンカチとメッセージカードを渡せずにいた。

「リシェール、一緒に帰ろう」

 ヴァジーラが声をかけてきたのでリシェールはダッフルコートとマフラーを着用し、鞄を持って首を下に振る。

 学校を出ると、校門の近くでエクシリオ・プレッツァー率いる超研メンバーが相変わらずUMA探索に行く前の腹ごしらえをしていた。真ん中にヴァジーラ、右にボルト、左にリシェールという位置で三人は学校を出た。リシェールは思い切って、ヴァジーラの引っ越しの見送りをしようと決めた。

「あのさ、ヴァジーラ。引っ越しの見送り……」

と、その時、リシェールのコート下の服に入れておいた転化帳が激しく鳴った。

「何!? こんな時に……!」

 その音でヴァジーラ姉弟もエクシリオら超研も耳にして、リシェールは辺りを見回す。

(こんなタイミングに来るなんて……)

 リシェールはそう思いつつも、水棲生物怪人の姿を探した。

「キャーッ!!」

 近くにいたヴァジーラが声を上げた。見ると、ヴァジーラの足首をつかむ白い装甲の手が地面から出ているのではないか! するとヴァジーラは海に溺れるように地面に引きずり込まれて、彼女の鞄が地に落ちた。

「おねえちゃーん!!」

 この光景を見たボルトが突然のあまり泣き出してしまい、エクシリオもその場を目にしたのだった。

「うわ~ん」

 ボルトは両手を目に当てて泣き、リシェールはボルトに言う。

「ボルト、落ち着いて聞いてちょうだい。ヴァジーラは悪い怪物に捕まって、このわたしだけが怪物をやっつけることができるの。学校で待っててよ。助けに行くから」

 そう言う也、リシェールは学校の近くの下水溝の蓋を無理矢理開けて下水道の中に入っていった。

 ボルトが学校の門前で立っていると、エクシリオが現れた。

「君のお姉さん助けに行ったグラコウスさん、あの中に入っていったんだね?」

 いきなり姉の同級生らしき人物が現れたのでボルトは驚きつつも頷いて、エクシリオも後に続いて入っていった。

「怪物の写真を収めておかないと。学校新聞だけでなく、地域新聞にも載せるんだ……!」

 赤レンガの壁にいくつものの排水溝や横穴が並びドブ臭さが漂うペルヴェドの下水道。足場が広く、水量を表す機械などがある一ヶ所に休眠から目覚めたばかりの超邪羅鬼とヴァジーラはそこにいたのだ。超邪羅鬼はヴァジーラを気絶させ、水で固めた牢屋の中に入れたのだ。水牢屋はゼリーのようにプルプルしておりヴァジーラが目をつむった状態でいる。

「来るがよい、玄武に選ばれた人間の小娘よ。友を返してほしくば、俺を倒す他ない。くくく……」

 三週間にわたる休眠を終えた超邪羅鬼は余裕を見せている。超邪羅鬼の胸元には水色の輝きが浮いた。


「ヴァジーラ、待っていてね。必ず助けるから……!」

 リシェールは転化帳を開き、邪羅鬼レーダーを頼りにヴァジーラのいるところを駆けていった。カンカンカン……とブーツの底が下水道に響き渡る。リシェールは気づいていないが、二,三〇〇メートル離れた地点でエクシリオもいたのだ。エクシリオはリシェールの行く先にはUMAあり、と感づいていたのだ。ザブラック村の校外学習といい、ペットセメタリーの件といい、アンナミス学園の件とか、どうも点が繋がっている。

 何度も折れ曲げを繰り返してきたリシェールはやっと、邪羅鬼とヴァジーラのいる所にやって来たのだ。

「来たな、聖神闘者。逃げずに向かってきたことは褒めてやろう」

 白い装甲と鋭角な体つきの超邪羅鬼はリシェールを見て見下すように言う。

「どうしてヴァジーラを捕まえたの!? 関係ないでしょ!」

 リシェールは水の牢に閉じ込められたヴァジーラを目にして叫ぶ。

「取り引きだ」

 超邪羅鬼はリシェールに言った。

「この娘を助けたくば、お前の持っている伝説五玉の欠片を全部よこせ。そしたらこの娘は返す」

 超邪羅鬼はニヤリと笑ってリシェールに交渉する。リシェールが持っている藍静玉を渡せばヴァジーラは助かるのだが……。

「どうした? 何をためらっている。人間の子供一人と伝説五玉、どちらも居間のお前にとってはどちらが大事かわかるだろう?」

 冷やかに言う超邪羅鬼を見つめてリシェールは沈黙する。彼女の選択肢は二つ。ヴァジーラを助けて超邪羅鬼の意のままにさせるか、伝説五玉は渡さずヴァジーラを見殺しにする。伝説五玉を超邪羅鬼の手に渡せば世界は邪羅鬼の支配下になる。ヴァジーラは……。

 リシェールが懐から雫の頂がない藍静玉を取り出した。

「わかるではないか」

「だけど! 渡すのならヴァジーラを……ヴァジーラを返して!!」

 リシェールは藍静玉を渡す条件として超邪羅鬼にお願いする。

「わかった。そこまで言うのなら」

 超邪羅鬼は指を弾いてヴァジーラを水の牢から出してやった。水の牢は蒸発するように消え、ヴァジーラが地に横たわる。

「さあ、次はお前だ」

 超邪羅鬼に促されてリシェールは藍静玉を超邪羅鬼に差し出す。

 その時、薄暗い下水道に真っ白な閃光が発生し、その眩しさに超邪羅鬼もリシェールもし会が一瞬失われた。

「ぬあああーっ!! 目が、目が見えん~!!」

 眼が四つあるため超邪羅鬼は両手で顔を押さえてもだえる。リシェールも平手で顔を押さえ、片目をかすかに開くと、そこに何とデジタルカメラのフラッシュ機能を使って超邪羅鬼の姿をおさえたエクシリオが立っていたのだ。

「エクシリオくん、何で……」

 リシェールは眼を少しずつ開かせながら、エクシリオを見た。

「この間は撮り逃したが、今回は撮れたぞ。UMAの姿、手に入れたり!」

 リシェールはやっと目がなれるとヴァジーラをかついでエクシリオに渡した。

「エクシリオくん、ヴァジーラを連れて逃げてくれる? あと、あれはUMAじゃなくって邪羅鬼という怪物なの」

「どういうこったよ?」

 ヴァジーラを押しつけられたエクシリオはリシェールの台詞に疑問する。

 その時、白い刃が飛んできて、三人をかすめて向こうの壁に当たる。ズドォン、と音がしてエクシリオが振り向くと、壁に亀裂が入り孔が空いて煙を出している。

「くそーっ、聖神闘者め! こうなりゃ全員殺ってやる!!」

 本気を出した超邪羅鬼は叫んで、キレた超邪羅鬼の攻撃を見てエクシリオは青ざめる。

「あれ、一体何が……」

 エクシリオに支えられていたヴァジーラは目覚めて、真っ白な装甲の化け物を見て叫んだ。

「きゃーっ、な、何コイツ!?」

(エクシリオくんだけならともかく、ヴァジーラまで……。でも、仕方がない!!)

 リシェールは転化帳を出して転化パネルを叩いて渦に包まれ、渦が弾けて黒いミニドレス風の衣と玄武の特徴の三対の角と尾を持ったリシェールが現れた。リシェールの転化した姿を見て、エクシリオとヴァジーラは呆然とする。

「き、君があの時の……!」

「リシェール、その姿は……」

 エクシリオとヴァジーラは驚いてその場に立ちつくしていた。

「ヴァジーラの命も、伝説五玉も渡さない!!」

 リシェールは叫んで、超邪羅鬼に立ち向かった。




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