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五聖神黙示録  作者: 浅葱沼 氷雨乃
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「緑」の書・第6話 紫誠玉

『五聖神』第31話。中央大陸の五聖神・翠麒に頼まれて邪羅鬼を倒すための伝説五玉の一つ、紫誠玉を探して欲しいと頼まれたバルトゥル。果たして見つかるのか?


「はい、これがリニアス内の紫の石に関する情報」

 トルスカはバルトゥルにインターネットから印刷した〈紫の石〉にまつわる情報の紙束を渡した。富裕者の所持品、宝石店、美術館や博物館の展示品……。おそらく一〇〇件近くはあるだろう。

「すまねぇな、俺インターネット使えないから」

 バルトゥルはトルスカに礼を言った。バルトゥルは健康そうな浅黒い肌とがっしりした体型に対し、トルスカは透けるような白い肌と細身の体つきに車椅子という虚弱そうな姿である。バルトゥルは体育系で学問は今一つの野生児でもうすぐ十五歳に対し、トルスカは体育には出られないが十三歳で中級五年という頭脳の持ち主である。

「紫の石探して……どうするの? 誰かにあげるの?」

 トルスカが訊いてくると、バルトゥルは口をごもらせる。

「ええと、それは……」

 バルトゥルは景色のいいトルスカの私室の窓を覗くとごまかした。

「じゃあ、俺はもう帰るね。父ちゃんと母ちゃんが待っているし」

 そう言ってベッドと机とPCと本棚とクローゼットとラグのあるトルスカの八畳間から出ていった。

「おばさん、失礼します!」

 トルスカは赤い切り妻屋根に白い石壁のトルスカの家を出ていって、白い立方体の家々と畑や果樹園のある住宅地へと走っていった。

 リニアスは万年常春の国で、雪が降ることはなく冬でも暖かいのだ。人々はいつでも軽い服装でいられる。フィロスは農業とエコロジーの盛んな町であった。


  1


 バルトゥルが〈紫の石〉を探している理由――三週間前のクリスマスに遡り、バルトゥルに中央大陸の五聖神、翠麒から翠麒のいる神殿に行ける〈移転の衣〉をもらい受け、それを着て緑雲殿にやってきた時、一角と蹄と鱗を持つ五聖神、翠麒から持ち主の心に反応して力を増幅させる石、〈伝説五玉〉の一つ、紫誠石を見つけ出してほしいと頼まれた。

 リニアスの中にあるという紫誠石、それが邪羅鬼の手に渡ったら、世界は滅びかねない。一刻も早く、邪羅鬼よりも入手してほしい、と頼まれたのだ。

 翠麒が教えてくれた紫誠石の特徴は、透明或いは半透明の紫で、形は正三角形、善の心の持ち主に反応すると輝きが増す、の三つであった。そんな石がバルトゥル一人で探し出せるだろうか? いやいや、野育ちで動物語が分かるバルトゥルはミグとカルク、鳥たちにも協力してもらって紫誠石を探しだしていたのだ。ミグとカルクは町中の動物たちから、鳥たちはバルトゥルがトルスカからもらった資料を当てにしてリニアス各所から紫の石が紫誠玉であるかどうかを伝え、バルトゥルはフィロスとその周辺を学校の帰りに探していた。現在のバルトゥルの日常は平日昼は学校、夜からは高校へ行くための受験勉強、土曜日の午後と休日は養父母と共に果樹園で働いていた。


「えっ、通信制高校……?」

 とある平日の昼食後の昼休み、バルトゥルは職員室に呼ばれて、成績は下の上で家が果樹園で自然が好きなバルトゥルにふさわしい高校を紹介してくれたのだ。台刑型教室二つ分を使った木製の事務机が学年担当ごとに五列に並んでおり、壁には書類などを収めている棚が一列に並び、先生たちは机上でハンコを押したり、内申書を書いていたり、野球のボールでガラスを割った生徒を叱りつけていた。

 黒い角刈りにスポーツウェアのターニ先生はバルトゥルに複数の通信制高校の案内書を見せた。週二~四日の登校日に行けば進級や卒業の単位がもらえ、総合学習という学校を出て町や自然の中の勉強というバルトゥルにぴったりの授業がある通信制高校は正に救いであった。

「通信制高校なら入試もそんなに厳しいものじゃないし、お前なら大丈夫だと思ってな」

「ありがとうございます、先生! じゃ、俺は教室に戻ります!」

 バルトゥルは先生から受け取った案内書を持って職員室を出ていった。

 教室に戻ったバルトゥルは五年二組の教室に戻ると、自分の席について通信制高校の案内書を読んでみた。上底が出入り口、下底が黒板と教壇と明かり取りの窓のフィロス南中学校の教室内では生徒たちは女子はおしゃべりに花を咲かせ、宿題をする生徒や授業の準備の備えたりの姿が見られた。

 バルトゥルが見ている通信制高校の資料には授業内容や学校の教育方針などが書かれており、

在所もフィロスの周辺の町であった。

「おーい、バルトゥル。一緒に校庭でサッカーしようぜ」

 同級生の男子がバルトゥルを呼んで昼休みのスポーツに誘った。

「うん、今行くー」

 バルトゥルは資料を読むのをやめて、同級生たちと一緒にサッカーをしに校庭へと行った。

 純粋な青さと千切れた綿のように浮かぶ雲のある空の下、芝生の校庭でサッカーを楽しんだ。

「行け、行けー」

「とられるなよっ!」

 男子の一人が同じチームのバルトゥルにボールを蹴飛ばした時、バルトゥルは見事に受け止め、敵方ゴールにシュートしようと大きくキックした。

 ズバーン、という音と共にボールは高く蹴飛ばされ、ゴールの上を通り越してしまったのだ。

「あちゃ~、強くし過ぎた。取ってくるよ!」

 バルトゥルは猛ダッシュしてボールの飛んでいった方へ駆け出していった。バルトゥルが蹴飛ばしていったボールは花壇で水をやっているロザリンドの近くに落ちてきた。

「きゃあ!」

 ロザリンドはボールには当たらなかったものの、自分の後ろに飛んできたサッカーボールに驚き、手に持っていたブリキのじょうろを落としてしまい、じょうろの水が地面に黒い染みを作らせた。ボールは花壇の前で転がり、近くの楡の木の前で止まった。

「ごめん、ごめん。ボールに当たらなかった~!?」

 バルトゥルが駆け寄ってきて、ロザリンドに声をかける。バルトゥルの声でロザリンドは振り向き、紫の双眸をバルトゥルに向けた。

「だ、大丈夫よ、私は……」

 ここでロザリンドはあることに気がついた。自分とバルトゥルの目線が同じになっていることを。ロザリンドは十五歳女子では大きい方の一六二センチでバルトゥルと初めて会った時は目線を下にしていた。バルトゥルはこの三ヶ月半の間に背が六センチ伸びており、今ではロザリンドと同じ背丈であった。

(卒業の頃には、私を追い越しているんだろうな)

 ロザリンドがバルトゥルを見つめていると、バルトゥルは楡の木の近くのサッカーボールを拾って去っていった。楡の木をはじめとするリニアスの木々は年中生い茂っている。

(そういえば、あの緑の勇者、見かけていないけど、今はどうしているのかな……)

 ロザリンドは三ヶ月前に自分を襲った怪物を倒してくれた緑の服の勇士を思い浮かべた。肌や目や髪の色、緑の服が似合うバルトゥルと重ねて。


 フィロスは森と山に囲まれた土地に畑や果樹園、農業学の研究施設が造られた町である。半分くらいの世帯が農業で白い立方体の家の後ろに田畑や果樹園を造り、非農家の世帯も商業や近くの川で漁業を営む者もいる。

 バルトゥルの家、シャロン家はリンゴと柘榴が植えられた敷地に鳥よけの網を張った果樹園でバルトゥルも土曜日の午後と休日には作業を手伝っていた。

 養父のサムエルは高枝バサミで伸びすぎた枝や熟れた果実を切って落とし、バルトゥルはリンゴや柘榴を背負いかごに入れて、薬癒士であるマーニャは木に害虫の免疫がつく薬剤を注入する。常春の国リニアス雪や霜が発生しないので、四季のある国なら一季だけ収穫できる作物が二季あるため、農業が盛んだった。特にたくさん獲れるのが住民がよく着る服の素材、五色麻であった。

 さて、ある土曜日の午後、シャロン農園の住人がそろって作業していると網越しから中年の男の姿が現れた。

「サムエル、すまねぇ。バルトゥル坊やを貸してくれぇか?」

 高枝バサミで柘榴の枝を切っていたサムエルは声の主に振りむいて目をやった。声の主は麦わら帽子をかぶり、五色麻のシャツとベストとズボンを着こんだのっぽの男で、顔は細面で目が薄青くて髪は禿げてて後ろがぼさぼさの栗色である。

「ジェリク、どうしたんだ。バルトゥルを貸してほしいなんて」

 サムエルが首にかけていたタオルで顔に浮いた汗を拭いながら男に言った。

「実はな、うちの息子が捻挫しちまってな、暫く歩けないんだ。今日だけでいいから、坊ちゃんを貸してくれ」

 ジェリクは網越しにサムエルに言った。サムエルはバルトゥルを呼び、ジェリクの手伝いをするようにとお使いに出された。

「ちゃんとお駄賃は出すよ」

 ジェリクはバルトゥルに交渉し、バルトゥルも承知した。


  


 ジェリクはフィロスの近くを流れるヘルノ川の分流に住む川魚を獲って暮らす漁師で隣町に川魚を売るためにバルトゥルに助っ人を頼んだ。いつもなら二十歳近い息子と一緒に行くのだが、その息子は物置小屋の修理中に梁から落ちて捻挫してしまったのだ。ジェリクには二男も娘もいるが、二男は家を出て寮のある学校に行き、娘の一人はよそに嫁入り、末娘はまだ幼かった。ジェリクには奥さんと四人の子供の他、ロバのボーヨーも飼っていた。そのボーヨーは堅木の荷車を引く役目で、荷車には小さな樽に詰めたウグイやニジマス、ヤマメが入っていた。魚はそれぞれ生の塩漬けと干し魚に分けられていた。

 バルトゥルは山に居た頃の友達で今尚もそばにいる金毛山猫のミグと角兎カルクも連れて、ジェリクと共に年明けの晴空の下を歩いていった。東風が吹き、畑や野原を通り抜け、隣町ピープを目指して歩いた。ボーヨーの引く荷車ががたごと音を立て、樽の中の魚がゆさゆさと動く。

 やがて白煉瓦の外壁に囲まれた町、ピープが見えてきてジェリクは荷車と一緒に積んでいた看板を出して、ピープの外門で呼びかけをし始めた。

「ピープの皆様、魚屋です! 魚屋ですよ! いらっしゃい、いらっしゃい!」

 するとピープの町の人たちが出てきて、ジェリクの魚屋台へやって来た。ピープの人たちは麻や木綿の服の他、それらより質のいい絹やベルベットやモスリンの服を着ていた。フィロスの北東隣のピープは機械技術の盛んな町で建物もレンガと金属の建物が多く、その反面農業や漁業は少なかった。町の外壁は二〇〇年前まではピープが侯爵領だった頃の名残で今は色あせたり崩れている個所もある。ピープは井戸水や地下水の汲みとり技術があるから水不足にはならないが、川から遠い町なので他所から売りに来る魚を買っていた。

「はい、ニジマス五匹ね。お代はこちらに」

 ジェリクは客から金を受け取り、小型の金庫には小銭と紙幣が交互に増える。バウrトゥルは注文の魚を樽から受け取って内側が油紙の紙袋に魚を入れた。ミグとカルクはボーヨーの尻尾を引っ張ったり鼻面に手を乗せたりしており、ボーヨーも嫌がらずに二匹にかまってあげた。

 だがジェリクとバルトゥルが魚を売っているさ中、ピープの町の鐘台の塔の屋根に一つの影があった。鐘台は町の侵入者や火事を知らせるために作られた物で、人影はそこから飛び出し、町の上空を滑走して西外門へと向かった。

「はい、毎度ありがとうございます」

 バルトゥルが婦人の一人に魚の袋を渡していると、後ろで並んでいる客が空から飛んできた存在に気づいた。

「な、何だあれは!?」

「?」とジェリクとバルトゥルが空の上を見ると、ジェリクや他の人の目では黒い影にしか見えなかったのに対し、バルトゥルの目には一体の怪物がこっちに向かってくるではないか! 耳が尖った獣の姿に両腕と両脚に膜があるムササビの邪羅鬼である。

「こ、こっちに向かってくるぞ!!」

 客の一人が叫び、バルトゥルは動きを止め、ジェリクや客らは頭を押さえてしゃがんだ。邪羅鬼は滑空しながらジェリクの荷車に突進し、荷車から樽の一つを奪い、後はそのまま風の流れに乗って去っていってしまった。

「あああっ、ない、ないっ!! 樽がない」

 バルトゥルは樽を見て叫んだ。その声でジェリクや客たちも荷車に目をやり、五つあったうちの一つがなくなっていた。

「おっちゃん、あいつが盗んだんだよ。俺、取り返しに行ってくる!」

 バルトゥルはジェリクに言うと、邪羅鬼のあとを追い、ミグとカルクもついていった。


 塩漬けマスの樽を奪ったムササビ邪羅鬼は枯れ木がいくつもある荒地へ逃げ込んだ。砂利と雑草だらけの地につくと、腰に下げていた短剣を取り出してマスの腹を割いた。塩漬けのマスは捕らえたままの状態で保存されているため内臓がそのままになっている。だが邪羅鬼は中身を確認すると、そのままマスを地に投げ捨てた。それからまた一匹、また一匹とマスを裂いては捨てていった。

「この中にあると思っていたんだがなー……」

 ムササビ邪羅鬼は十匹も魚を裂き棄てていっている途中で呟いた。つぎのますにてをだした時、どこからか石英の針が飛んできて邪羅鬼の腕に刺さった。

「うぎっ!! 誰だ!?」

 邪羅鬼が石英の刺さった腕を振りまわすと、赤毛に緑の衣の聖神闘者姿のバルトゥルが枯れ木の近くに立っていたのだ。バルトゥルは地面に投げ捨てられたマスを見て、目を見開いた。どのマスも腸が取り出されており、砂で汚れている。バルトゥルは邪羅鬼に言った。

「おめぇ、食いもんを粗末にすんじゃねーっ!! 世の中には戦争や飢饉で食いたくても食えねー人がたくさんいるんだぞ!!」

 激昂したバルトゥルは地団太を踏みながら叫ぶ。食糧飢餓は社会の公民で覚えた賜物である。だが邪羅鬼は開き直ったように言い返した。

「なら憎しみや怒りの他、苦しみやひもじさも持つ人間も俺たち邪羅鬼にとって都合のいい栄養だ。さすればこの世は邪羅鬼の世界になるからな。ハハハハ……」

 邪羅鬼の発言を聞いて、バルトゥルは怒りが頂点に達した。

「お前のような奴は絶対許さね――っ!!」

 バルトゥルは目にもとまらぬ豪速球の速さで邪羅鬼にダッシュパンチをかました。邪羅鬼は宙に浮き、バルトゥルは両手に土行の聖力を込め、三角にした掌を邪羅鬼に向けて放った。

「翠麒地烈!!」

 大地から緑色の光の麒麟が出てきて邪羅鬼を呑み込み、砂と土にして浄化させたのだった。

バルトゥルは邪羅鬼を倒した後、邪羅鬼が捨てた魚を拾い集めた。

「あーあ、こんなんじゃ食べれないよなー……」

 するとミグが樽の一つからマスを一匹くわえてきた。

「あっ、ミグ。だめだろ。樽に入ってんのは売り物なんだから……」

 バルトゥルがミグに近づくと、マスの腹が仄かな紫色に輝いていた。

「!? これは……」

 バルトゥルはマスを手に取ると、蛮刀の先で腹を裂いた。すると内臓の中に紫の石片が入っていたのだ。

「これってもしかして……」

 バルトゥルはマスの中に入っていた石片を見て呟いた。


  


「……という訳で十匹ほど砂利で汚れちゃったんだ。ごめんなさい……」

 緑の装束からいつもの五色麻の服に戻ったバルトゥルは魚泥棒から樽を取り戻したが、いくつかがダメになったことを謝った。

「いや、犯人は捕まえられなかったが、魚を取り返してくれただけでもありがたいよ」

 ジェリクは笑って許してくれた。でも犯人は邪羅鬼でしかも伝説五玉を呑み込んだ魚を探していたバルトゥルは黙っていた。その後は日暮れまで魚を売り、フィロスに戻って来た頃には空は濃い青と紫になっており、村の住民も作業を終えて家に帰る処だった。

 ジェリクはバルトゥルは自宅まで送り、今日の報酬として三リモスをくれたのだ。バルトゥルの掌の上で三枚の麦と鳩の紋が刻まれた銀貨がちゃり、と鳴る。

「ただいまー」

 バルトゥルは玄関に入り、続けてミグとカルクも入り、両親にあいさつした。マーニャは台所で夕飯を作り、サムエルは居間のソファで新聞を読んでいた。

「お帰り。夕飯になったら呼ぶから少し休んでおきなさい」

 マーニャが台所から声を飛ばし、バルトゥルは二階の自室へと昇っていった。

 白い壁と板床、十字枠の丸窓に緑基調のインテリアとおもちゃや図鑑などの本があるバルトゥルの部屋。バルトゥルは今日の報酬を机の上にある豚の貯金箱に入れた。貯金箱は透明プラスチックで中が透けて見える。リモス銀貨の他にも一ファナ青銅貨や十ファナ赤銅貨もいくつか入っていた。それからズボンのポケットに入れておいた紫の石片を取り出す。

「これ、ご飯食べたら翠麒のいる神殿に行ってみようか」

 電灯の光に当てなくても氷のように透明な紫の石を見てバルトゥルは呟いた。


 バルトゥルは夕食と入浴を済ませた後、自室の扉を閉めて両親がいなくなったと騒がれないようにミグとカルクを布団の中に入れて自分は邪羅鬼と戦う時に着る闘衣とは違った着心地の 〈移転の衣〉を着て、翠麒のいる神殿へと移動した。

 磨かれた明緑の柱と壁と床と天井の巨大な広間、その中心に巨大な一本角と緑の鱗と四本の蹄をもつ五聖神、翠麒。バルトゥルは今日の売り物の魚の中にあった紫の石を翠麒に見せた。

「これは、本物の〈紫誠玉〉の欠片だ! 元々は一つだったのが、長年の流れでいくつかに砕けてしまったが……この一つさえあれば残りの破片を見つけることができる」

 翠麒は紫の石の破片を見てバルトゥルに言った。

「ふぅん……。本物だったんだ……。で、どうやって他の破片が見つかるんだ?」

「伝説五玉は近くに破片があると輝く。それを利用して探しだすんだ」

 翠麒はバルトゥルに説明した。

「ああ、そうなんだ。ありがとよ。それはそうと、今日出てきた邪羅鬼なんだけど、伝説五玉を探すのに魚を地面に投げ捨てたんだぜ!? ひでぇことするよな」

 バルトゥルは今日の出来事を翠麒に話し、翠麒はバルトゥルがこの四ヶ月で野生児からごく普通の人間になってきていると悟った。

 そしてバルトゥルは〈移転の衣〉の帯止めを回して自分の家の私室に戻り、衣を脱いで寝間着に着替えると、替え玉をしてくれたミグとカルクにベッドを下りてもらおうとしたが良く寝ている彼らを見て、ラグの上で毛布をかぶって寝ることにした。

 そしてバルトゥルが見つけた紫誠玉は仄かな紫の光を帯びていた。




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