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五聖神黙示録  作者: 浅葱沼 氷雨乃
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「赤」の書・第6話 紅熱玉

『五聖神』30話。南大陸の五聖神・朱雀から邪羅鬼を倒すための伝説五玉の一つ・紅熱玉を探してほしいと頼まれたサユ。一方でサユがかつて働いていた動物園ではサユが世話をしていたカバのベラルダの様子がおかしくなっていた。

暑い日差しを遮ってくれる巨木バンダルーイの住居の個室で、サユ・コーザはベッドの上に寝転がっていた。眠ってはいないが普段着の赤いワンピースを着て寝そべっている。

「伝説五玉って、邪羅鬼よりも見つからないものね……」

 サユは呟いた。カーテンで閉ざされた部屋は薄暗く、隙間から薄い橙の木漏れ日が差し込み、部屋や床を照らしていた。

 クリスマスの期間に、南大陸の五聖神、朱雀からサユへのクリスマスプレゼントが贈られてきた。贈られてきたのは〈移転の衣〉。それを袖に通すだけで朱雀のいる神殿に行けるのだ。〈移転の衣〉を着たサユは朱雀のいる日朝殿に行き、伝説五玉の一つ〈紅熱玉〉を邪羅鬼より先に見つけ出してほしいと頼まれた。

 伝説五玉とは、善悪問わずに持ち主の力を増幅させる宝珠のことで、もしこれが邪羅鬼の手に渡れば、世界を滅ぼしかねない力を出すだろうと、と。

 サユは一学期の長期休みを利用して、紅い翼を持つ聖神闘者の姿に変えて、〈紅熱玉〉を探した。

 朱雀から教えてもらった〈紅熱玉〉の特徴は透明或いは半透明の真紅で、ハートの形をしており、日光電光問わず善き心の者には輝きを増すといわれていた。

 サユは新しいアルバイトとお世話になっているツドイ家での暮らしの合間を縫って、紅い石の情報やありかを探した。サユが聖神闘者と知っているのはツドイ家の娘イロナとWUP(国際同盟警察)のアーメッド・シモンにも協力してもらって。

 その間に新年を迎えての大掃除や新年の祝いも過ぎていき、もうすぐ二学期を迎えようとしていた。年末年始の宿題はそんなにきつくはなかったけれど、伝説五玉を探しながらの物事は流石にきつかった。

「ん……っ。そろそろ晩ご飯の時間だ……」

 サユは起き上がって一階にある台所兼食堂へと向かった。

 台所兼食堂は半分が台所、半分が食堂となっており、台所には備え付けの食器棚や木桶の流しや石造りのかまど、かまどの上に肉を焼いたりやかんを沸かす鉄板があった。食堂の席は長方形の長卓と丸太で作った六脚の椅子、台所近くの上座には主のツドイ氏が座り、その左と鳴りにツドイ夫人、その隣に大学生の長男コーベン、その向かい側にサユとイロナが座る。また南国の発展途上国や半先進国では冷蔵庫は高級品のため一部の富裕者しか持てず、ツドイ家のような中流や下流の家庭は肉や魚のような生ものは塩漬けにするか乾物にするしかなかった。

 ツドイ家の食事は肉も野菜も穀物もあって、サユは充分に健康を保てた。サユが現在ある意バイトしている児童保護局も豪勢ではないものの充分な栄養の食事が出される。シシケバブをフォークで突きながら、サユは思い出していた。以前、務めていたマルゼン動物園でのことを。サユのアルバイト替えが決まった頃、サユが世話をしていた子カバ、ベラルダは他の人でもなつけたという情報を。

(ベラルダ、元気にしているのかなぁ……)




 サユたちの住むのバン・ダルーイ居住区からそう遠くない、生物保護施設マルゼン動物園。ジャングルの中に建てられた小屋と庭園がいくつもあるこの施設は、密猟によって仲間を喪った動物、洪水などで親を亡くした動物がある程度成獣になるまで養っている。

 獣舎は動物の生態に合わせて金網で囲い分けされており、入口には小さなオフィスがある。その中には事務室とロッカー室、職員の眠る仮眠室がある。獣舎と水浴び用の池と苔がある湿った庭には子カバのベラルダがいた。子供といってもベラルダは大人に近い大きさである。ベラルダをはじめとする動物たちが夜の動物園で寝ていると、獣舎の外のジャングルからガサガサという音がした。人の姿のようなそれは、地面の草を踏みながらベラルダのいる獣舎に近づく。

「ウウ~」

 ヒョウやリカオン、ジャッカルや水牛などの動物たちが侵入者への気配を感じて唸りだした。ウウ~、という動物たちの声を聞いて、仮眠室にいた職員が目を覚ました。

「おい、まただぜ。動物たちが唸っているのは」

「もう、今月に入ってから頻繁だよなぁ……」

 ぶつくさ言いながらも成人のスタッフは獣舎へと向かった。一人が懐中電灯を手にし、一人が泥棒を叩く棍棒を持って獣舎へ向かうと、ベラルダの獣舎に怪しい人影があったのだ。

「だっ、誰だ!?」

 スタッフが叫んだ時、人影は素早く去り、後には興奮している動物たちが残った。最も興奮しているのはベラルダで、興奮状態のカバは非常に危険で、人間が近づけば何トンものの咬む力と鋭い牙で手足を食いちぎってしまうのだから。

 ベラルダの様子を見て、スタッフはベラルダが池か獣舎に戻るのを見守っていた。一時間もすると、ベラルダは獣舎に戻っていった。

「にしても、誰なんだろうな。この動物園に親友しているやつは。いたずらにしては何度もやっているなんて悪質だよな」

「そうだよな。四時半まであと二時間しかないよ。さっさと寝ようぜ」

 そう言ってスタッフはオフィスに入り、四時半から始まる作業まで寝入った。


空から見たジャングルの空き地に建てられた白い石造りの学校、ランゴ中級学校。そこに通う十一歳から十七歳までの児童はベージュとカーキの制服を着て、通学する。

 半月ぶりの学校ではみんな、年末年始に何があったのかを語り、サユも仲良しの女子に新しいバイト先と年末年始休みの出来事を語った。生徒たちは五人が座れる長椅子と長机に座って学習し、体育はカーキラインが入った体操着を着て運動し、掃除も昼食も過ごしていく。

 サユとイロナがゴミ箱を持ってゴミを捨てに裏庭に行くと、七年生の女子三人が小柄な下級生女子を絡んでいた。女子は一見三、四年生に見える。

「だったら何だっていうの!?」

という声でサユとイロナは驚き、庭木の陰からゴミ捨て場の様子を見つめた。七年生の女子は背も一七〇センチ近くて体型も顔つきも髪型も違う。下級生の方は……。

「私は悪くないっ! あんたたちが悪いんでしょっ」

 上級生にため口を使い、一四〇センチ代の背丈につり上がった細い目と甲高い声とナナフシのようなひょろい体型で髪は長くてぼさぼさ。

「エバリだ。上級生に何かどつかれたのかな」

 イロナが怯えながらも興味のまなざしで見つめる。

「いや、違うと思う。エバリの方が先にやらかして……」

 サユが返す。サユはイロナや他の仲のいい女子がいない時にはエバリにいじめられていた。殴られや蹴られはしないが、サユのことは「幸せ独り占め」「身の程知らず」「私の不幸ととっかえろ」と言われてきて、サユは何のことだかまごついていると、先生がやって来て先生が来るとエバリはさっさと逃げるのだった。

「あんた、生意気なのよ! 年下のくせに怖い顔して、ババ臭い説教するし!」

 上級生の一人がエバリに手を出そうとした時、エバリが上級生の手首をつかみ、空いた手で強く引っ張ったたいたのだ。

 ピシャーン、と雷が落ちるような音であった。エバリにひっぱたかれた上級生は痛さのあまり、膝まづいた。叩かれた左頬が赤くなっている。

「この……!」

 横幅のある上級生がエバリに殴りかかろうとした時、エバリの方が相手より速く腹に拳を向けてきた。エバリの拳を受けた上級生も「がはっ」と言って地に崩れる。

「ひっ、ひいっ」

 エバリの強さを見て驚いた最後の一人が二人を連れて逃げだした。

「こっ、今回はおおめに見ておいてやる! 覚えていろ!」

 エバリに小突いてきた三人の上級生はエバリの力に恐れおののいて、捨て台詞を吐いた。エバリは服の埃を払うと、庭木の陰のサユとイロナに気づかぬまま去っていった。

「つ……強いじゃん。一人で二人をやるなんて……!」

 イロナは恐れつつも感心し、サユも怯えながらエバリを見る。

「どーせなら五聖神さんはサユじゃなくってエバリに邪羅鬼討伐を任せればよかったんじゃない? あの子、小柄だけど強いじゃん」

 イロナが素っ気なく言うと、サユは首を横に振る。

「なれない、よ。力の強さじゃなく、心や人徳で決まるんだよ、聖神闘者は」

 エバリに愛情や思いやりがあるのかは知らないが、サユはエバリが聖神闘者になっても恐らく世界は彼女の支配に置かれてしまうと思っていた。エバリは誰かを支配することで快楽を満たしている。そういう気がするのだ。

 ゴミを紙くずなどの可燃ゴミとゴムなどの不燃ゴミに分けている中、サユはイロナに言った。

「さっきの人たち、先生やエバリの親御さんに告げ口するのかな。エバリにやられたこと」

 サユは紙くずやほこりをレンガと鉄の焼却炉に入れ、イロナはビニールなどを大きめのポリ袋のついた鉄のゴミ箱に入れている。

「いや、どうかな。エバリにいじめられたり因縁ふっかけられた生徒は告げ口するどころか、かえって登校拒否や転校してるみたい、って話だよ。……ただ、エバリは厳しい家庭で育ったみたいだね」

 イロナは言った。よその町の児童保護局で働く彼女の父親は、子供がどういう家庭で育ったかの調査もしているのだ。

 ゴミの仕分けが終わると、サユはイロナに言った。

「掃除が終わったら、私児童保護局のバイトがあるから先帰ってて」

「うん。でも明日は一緒に帰ろうね」

 サユはゴミ箱を持って教室に戻り、その後学校を出て児童保護局のアルバイトへ行った。


 


 ジャングルシティの西部にある白い要塞を改築した建物、児童保護局。月・水・金・土曜日の半ドンをサユはここでアルバイトしている。職員は皆、白地にオレンジラインの作業着を着て、入所児童との面談や教育などの仕事をしている。サユも小ぢんまりとした事務室で制服の上から作業着を着て、書類整理などの仕事に励んでいた。時々、庭や多目的ホールで遊ぶ子供たちの声が聞こえてきたり、ケンカなどのいざこざで泣き声が聞こえてきたりもしたが、サユはせっせと作業に勤しむ。

 すると、ドアの向こうからコンコン、とノックする音が聞こえ、若い受付係の女性がサユのいる事務室に入ってきて、サユに電話がきていると伝え、サユはスタッフルームに移った。

 スタッフルームは合わさった囲い付きの机や書類やファイルの入った棚が壁に並ぶ広い部屋で、学校の職員室を思わせる。

 サユが電話に出ると、それは自身が勤めていたマルゼン動物園からだった。

「はい、もしもし。サユ・コーザです。ベラルダが毎晩さわいでいる? ……わかりました。明日でよろしいでしょうか?」

 サユはマルゼン動物園の者にそう言うと、受話器をそっと戻した。平面なプッ

シュ式の白電話で、内線や外線によってランプの色が異なる。

「ベラルダに何があったんだろう?」

 サユは少し胸騒ぎを覚えながらも、ベラルダの身を思った。


 ツドイ家に帰ると、サユはマルゼン動物園からベラルダの異変を知らされ救いを求めてきたことを話すと、イロナは「またぁ?」と言うように顔をしかめる。

「ごめん。明日も帰れなくなっちゃって……」

 サユが制服姿のまま、イロナの部屋でイロナに頭を下げた。イロナの部屋はピンクのインテリアとフリルとリボンが多く、イロナは水色のサンドレス姿で椅子に座っている。

「サユと帰れない、ってことを怒っているんじゃなくって、サユに求めてくる神様や人たちが何とかしろ、ってことだよ。

 邪羅鬼退治と伝説五玉探しの他にも、ベラルダを何とかしてほしい? サユの気持ちも考えろ、って言いたい!」

 イロナは義憤を募らせ、連中にビシッと言いたいようにとる。

「私はいいよ。この事件って大概、なんかヤバそうなのが絡んでいる、ってのが妥当だからな……」

 サユはこれからの展開を思い浮かべる。密猟者なのか邪羅鬼なのか変質者なのか、いずれにせよろくでもないのが多すぎる、と思った。


 次の日の下校時間、サユは久しぶりにマルゼン動物園にやって来た。様々な動物の匂いや堆肥となるフンの匂いや湿気の匂い、オフィスからマルゼン動物園の園長が出てきた。

「やあ、久しぶりだね。サユくん」

 十歳の子供と変わらない背丈に白髪交じりの前禿げ頭に浅黒い肌、頭が大きくて体が細い老人、マルゼン動物園の園長、ザサム・マルゼン。六十八歳という高齢で背も曲がっており、尚も現役である。園長は子供用の緑のサファリスーツと黒い長靴の服装でサユに微笑みを向ける。

「お久しぶりです。園長さん……。その、ベラルダは?」

 サユは恐る恐る園長にベラルダの様子を訊ねる。

「ああ、今は大人しくしているよ。安心なさい」

 水がわき上がるようなしゃがれ声でサユに伝えた。

 ベラルダの獣舎へ行くと、ベラルダは嬉しそうに小さな耳をプルプル動かし、サユにのっそりと向かってきた。

「ベラルダ、元気だった?」

 サユはベラルダの上あごをさすって聞いてきた。夜の不審者騒ぎ以外はいつも通りである。

「すまないんだが、サユ……」

 園長がサユに言ってきた。

「今夜一晩だけベラルダの獣舎に忍び寄ってくる不審者を捕らえに泊まってくれないか?」

「ええっ」

 突然の園長の頼まれごとにサユは動転した。

「そ、そー言われましても……」

 サユはどぎまぎする。だけど、ベラルダが騒げば騒ぐほど、ベラルダ自身や個々のスタッフに心身に負担がかかるか思いなおして承知した。


 サユと一緒にマルゼン動物園の女性スタッフがサユと一泊してくれることになった。スタッフは一七〇センチ近い長身に褐色の肌と長いウェーブヘアが特徴のスッラといった。サユはツドイ家に事情を話して動物園に泊まることになったと説明し、小さな事務室の一ヶ所で今日の宿題をやりながら夜を待った。食事はスッラが用意してくれたインスタントのものであったがサユは残さず食べた。眠気が襲ってくると、スッラが十二時になったら替わってあげると約束してくれた。

「怪しい奴が来たら、教えてくださいね」

 そう言ってサユは安心して仮眠室に入って、制服から体操着に着替えた。この日は体育があったので制服のままで寝るとしわになるので、汗の匂いがついているけれど、Tシャツと短パンの体操着になって二段ベッドの下で寝入った。

 サユが寝入ってどれ位が経っただろうか。夜は黒に染まり、風が吹いて葉がざわざわと音を立て、生温かさを帯びている。マルゼン動物園の獣舎の一つに忍び寄る影があった。

 サユが仮眠室ですやすや寝ていると、スッラの悲鳴で目が覚めた。

「キャーッ」

 サユはけいれんを起こしながらも上体を起こすと、そしてターン、ターンという音が外から飛んできた。

「スッラさん!!」

 サユは飛び上がって仮眠室からオフィス、オフィスから外へ飛び出した。そこには、猟銃を持って腰を抜かすスッラの姿と怯えている動物たち。そして――、黒地に白斑の羽毛に覆われ、顔と蹴爪状の手足が青く、頭に赤い鶏冠、黄色い嘴をもったホロホロ鳥の邪羅鬼がいたのだ。邪羅鬼の胸に弾痕が二つあったが、邪気の塊のため血を流すことなく、弾丸を押し出し傷を瞬時に塞がらせたのだ。

(邪羅鬼!! どうしてここにいや、最近動物たちが毎晩騒ぐのって邪羅鬼の仕業だったんだ!)

 サユは事件の犯人が分かって納得するものの、スッラはサユの存在に気づいていない。

「お前の魂、いただくぞ」

 邪羅鬼は青い蹴爪状の手でスッラに迫ってきた。スッラがもうダメだ、と目を閉じた時だった。空から火の羽が飛んできて、邪羅鬼に刺さったのだ。

「ぐえっ!! これは……」

 邪羅鬼が見上げると、紅い衣と紅い翼を持つ聖神闘者姿のサユがいたのだ。

「貴様、聖神闘者か!?」

 邪羅鬼はサユを見て指をさし、地に降りるとスッラを起こした。

「ここは私に任せて逃げてください! サユちゃんは既に逃げました」

 スッラは紅い少女の言葉を聞くと、頷いてその場から逃げだした。そして人型はサユと邪羅鬼だけになると、邪羅鬼はサユに向かってきたが、サユは邪羅鬼の手突きや蹴りの動きを見てさっさと避ける。

 それからサユは槍を出すと邪羅鬼に大きく振り斬った。

「ぐええっ」

 ガッシャーン、と囲いの金網にぶつかって邪羅鬼は地に倒れる。そしてサユは掌に火の聖力を込め、手をの親指と人差し指を合わせる。

「凶しき邪気よ、烈火の激しさに浄化され、体は無へと還れ。朱雀(すざく)突破(とっぱ)!!」

 サユの掌から炎の鳥が邪羅鬼に向かって突進し、邪羅鬼は聖火に清められて、灰となった。

 邪羅鬼がいなくなると、動物たちは唸るのをやめた。ベラルダがトコトコとサユに近づいてきてくる。

「ベラルダ、もう大丈夫だよ」

 サユが笑いながらそう言うと、ベラルダが笑うように口を開けた。するとベラルダの口の奥に煌めくものがあった。

「? ベラルダ、ごめんね。口の中にあるもの取らせて」

 サユがベラルダの口の中の異物を取ると、紅い半透明状の石片が月光の反射で煌めいていた。

「邪羅鬼が狙っていたのは……これ!?」

 サユは手に入れた石片を見て呟いた。


 


 そしてサユは転化を解くと、マルゼン動物園の前に立ち、地元民を呼んできたスッラによって見つけられるという形となった。

スッラが言っていた化け物はWUP隊員のアーメッド・シモンの調査事項によって治められた。

その後サユはツドイ家に戻り、帰りを待ちわびていたイロナたちによって心配させられた。

翌朝は夜起き通しのため、一日だけ学校とアルバイトを休み、半日も眠り起きたのは昼の三時だった。

「あ~、よく寝た。昼間はおばさんもいないんだった……」

 サユは寝間着のまま台所に行ってツドイ夫人が作ってくれたパンとスープと牛煮込みを食べ、自室に戻ってベラルダの口の中の石片が伝説五玉じゃないのかと思って、〈移転の衣〉に着替えて朱雀のいる日長殿へ行った。

 朱色の日長殿の床と壁と柱と天井の大広間に紅い鳥の五聖神、朱雀がいた。サユは朱雀に石片を見せると、伝説五玉の一つ〈紅熱玉〉ということがわかった。

「長い年月の間にいくつかに割れてしまったんだわ。でも、石片の一つがあれば他の破片も見つけられるようになっているの」

 サユは伝説五玉の破片が見つかって安堵した。ふとサユは思った。

「でもね、どうしてベラルダの口の中にあったんでしょうかね?」

「えさの中に破片が混じっていて、えさと一緒に入ってしまったのよ。それで邪羅鬼が狙ってきたのね」

 朱雀が言った。

 紅熱玉の欠片が見つかり、そしてサユは邪羅鬼よりも早く紅熱玉の欠片を集めると誓ったのだった。




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