シンデレラエクスプレスへの想い
新作お待たせしました。ちょっと自分も忙しいので…。
今回はシンデレラエクスプレスの客目線の話です。
くれぐれもシンデレラエクスプレスで「リア充爆発しろ」とは言わないようにww
1987年の夏の日の日曜日の夜。今日も東京駅の15番線はたくさんのカップルが溢れかえる。そして今夜も…
「優くん行かないで~!!」
今夜も俺の彼女、三住美桜は大泣きをしながら俺の手をつかむ。
「来週にまた会えるからいいだろ…。」
んなか彼女に対して、ため息をつくのは、俺、藤村優真。このシンデレラエクスプレスこと超特急ひかり289号で大阪へ帰る。
「それでも~!!」
これを見ていると美桜は俺のことが大好きなんだなと思う。
その後ろではこれを見て車掌も戸惑っていた…。マジですいません…。
プルル…
「まもなく15番線から超特急ひかり289号、大阪行きの列車が発 車いたします~!!お見送りのお客様は列車から離れてお見送りください~!!」
その放送を聞いて俺は
「また会えるから。待ってろ。」
と、頭をなでた。
「優く~ん」
美桜は大泣きしながら俺に抱きついてきた。
「もう時間だから~。」
俺は苦笑いする。
こんなのが毎週繰り返されて行く…。また今週もシンデレラの魔法がまたひとつ消えた…。
俺と美桜の出会いは、高校生の時だった。俺らはとある総合技術高校の生徒だった。俺は工業科で、美桜は服飾科だった。
特にきっかけはないが、ミックスクラスで座席が近くだったり、帰る方向が同じだったりして、よくしゃべっていた。
その当時、俺はまったく恋愛は知らない、まわりのバカみたいな仲間とバカして遊ぶ、まさに「アホ男子高校生」の一味の1人だった。
彼女いない歴=年齢の俺にある日転機が訪れた。
「藤村くん、好きです!!」
こんなことは絶対ない、俺はあまりにもうれしくて、すぐにOKを出した。
ということで充実した生活は始まった。美桜から手編みのマフラーを貰ったこともあった。
だが、すぐに転機は訪れた。それは「就職」であった。美桜は大学に進んだ。そして、俺は昔から鉄道が好きだったから、当時、民営化が噂されていた国鉄になんとか入社した。
国鉄で関東の近くの駅で働いていたのはよかったが、問題が起きた。俺は何故か知らないが、大阪に異動することになった。
さすがにこれは辞令通りに動かなきゃいけないので、21歳の時に泣く泣く、美桜を置いて、大阪へ向かった。そして、1987年に国鉄は民営化され、JR西日本となり、完全に大阪で暮らすことになった。
そして、この5年、今日みたいなことに至っている。俺らも「シンデレラエクスプレスの恋人たち」の1人となった。
このことを考えながら俺は
「もう大阪に赴任してから5年か…。もうそろそろ、今後のことを考えないとな。」
俺は真っ暗な東海道本線を見ながら呟いた。
俺は今、東海道本線で特急の運転士をしている。なので、東京には仕事ではよく来ている。でも、これを美桜に言ってしまうと何があるかわからないので、黙っている。一応こっちも仕事だからな。
俺は大阪9:53発、特急つばめ52号で東京へ向かう。
「まもなく、9番のりばに特急つばめ52号東京行きが12両でまいります。危ないですから黄色い線の内側でお待ちください。この列車はご乗車には特急券が必要となります。」
すると485系が入線してきた。東海道本線の特急は普通、16両であるが、臨時列車となると、東大宮特急留置線、小山特急留置線、青森運転所など東北から12両の485系を借りてくる。
俺は列車の前方を安全点呼をした。
列車が到着すると、交代の運転士が降りてきた。
「お疲れ様です。」
俺は敬礼をした。
「列車には異常はありません。東京までよろしくお願い致します。」
「了解です。」
俺は点呼が済むと、運転室に入り、運転台にブレーキバンドルをつけた。
9:53に大阪を出発した。
そして11:38に東京に到着した。いつもなら13~15番線のどれかに発着するのだが、485系もこの時期は忙しいらしく、つばめ52号は東北本線の7番線に到着した。
この485系は清掃を済ませた後は、はつかり号として函館へ向かうらしい。
俺は大阪へ戻るので、超特急ひかりが待つ、15番線へ向かう。
ホームを歩いていると
「あの~すいません~。」
誰かが俺を呼んだ。そこにはJR東日本の社員がいた。
「どうしました?」
「やっぱりだ。いつも日曜日にひかり289号に乗ってる人ですよね?」
「そうですけど…。」
「いや~。まさかあの中にJR西日本の人がいるなんて…。申し遅れました。僕はJR東日本東京車掌区の岩倉龍一です。」
「僕はJR西日本大阪運転所の藤村優真です。毎週大変ですね~。」
「いや、彼氏さんの方が大変そうですね。」
「まぁ、毎週、毎週『行かないで!!』と泣きつかれますからね…。」
俺は苦笑いする。
「今日はつばめの乗務だったんですか?」
「そうですね。僕はこれから大阪に戻ります。」
「お疲れ様です。僕は1時のこだまで大阪に行きます。」
「もしかしたら会えるかもしれませんね。」
「そうですね。まぁ、今週もお願いします。」
「はい。シンデレラエクスプレスで待ってます。」
岩倉さんは自分の車掌区へ帰って行った。
「優くん!!」
どこからか、聞き覚えがある声が聞こえた。
「美桜!?」
その声は美桜だった。
「優くん~!!」
なんか不味い気がしてきた…。
だって東京来るなんて言ってないから…。
「優くんなんで東京来てるの~?」
美桜が俺に飛び付いてきた。
「仕事で…。」
美桜に会えてうれしいが、今は仕事なので逃げたい気持ちでいっぱい…。
「来るなら言ってよ!!」
「こっちは仕事で来てるからな。」
「仕事って、大阪から東京へ電車を走らせる仕事のこと?」
鉄道知識0の美桜には、東海道本線や東北本線など通じない。
そもそも、電車で大阪行けることがわかっているのか!?とも思うぐらいな知識のなさ。
「そう…。」
「まさか、ほぼ毎日来てるよね?」
「そうです…。」
どうするべきなのか…。
「そうならそうって言ってよ!!お互い隠し事はなしって言ったじゃん!!」
「こっちは仕事で、美桜にかまってる時間なんかないし、東京に来ても、5分で東京を発つからな。そんなこといちいち美桜になんか言えるか!!」
しまった…。怒ってしまってる俺…。
「でも隠し事はしていたということだよね?」
「もう、今日はお前にかまってる時間はないんだから、行かせてもらうぞ。こっちも仕事だからな。」
俺は美桜を振り払って、14・15番線の階段を登る。
「優くんの嘘つき!!」
俺もついに…
「わかった。今週は東京行かないからな!!」
俺は走ってひかりに向かった。
「優くん…。」
美桜はショックのあまりにひざまついて、泣いた。
俺はなんてことをしてしまったんだ…。
俺も少しショックだった。
仕事に追われたこの1週間も終わり、週末…
「まもなく、終点東京です。山手線、京浜東北線、中央線、東北本線、高崎線、総武線、横須賀線、地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。本日も急行なにわをご利用いただきましてありがとうございます。終点東京です。どなた様も落とし物お忘れ物ないようにご注意ください。」
185系の急行なにわは東京へ入線した。
185系と117系は昭和57年に153系の置き換えを目的として、東海道本線の急行や117系は快速にも投入された。
俺は美桜に会いに来たのではなく、関東の電車を撮りに、東京へ来た。
ほぼ、暇だから、無意味に東京も同然だ。
俺は東北本線で上野へ向かい、東北本線の撮影をした。
この土日はカメラを持って、関東を走りまわった。
一方美桜は
「美桜珍しいね~。私たち誘うなんて。」
日曜日の昼下がり友達と喫茶店にいた。
「優くん怒っちゃってね…。」
「なんか美桜も大変だね~。」
一方、俺は、原宿でカメラをかまえて、もうすぐ引退しそうな103系の撮影。
の、はずだったんだが…。
「カップルが多い…。」
若者の町、原宿。土日なのでカップルがたくさん。たぶん、この中の一部はシンデレラエクスプレスで帰るんだろうな…。
「美桜…。」
美桜が恋しくなった…。なんで、あの時こんなことを言ってしまったんだろう…。
そして美桜は友達に
「今夜も東京駅行ってみたらもしかしたら会えるかもよ。」
「そうかな…。」
「このままだと、一生会えなくなるかもよ!!」
「うん…。」
なんとなく、今日もシンデレラエクスプレスこと超特急ひかり289号で帰ることにした。特に見送りもないが、1人寂しく、大阪へ帰る…。
「美桜に会いたいな…。」
なんとなく呟く…。
そう思いながらドアの前に立っていると…
「優くん~!!」
「美桜!?」
振り替えると美桜が…
「やっぱりいた!!」
美桜は俺に抱きついた。
「美桜、ごめんな。」
「私こそ、ごめんね…。」
俺はふと時計を見ると時刻は20:58。
「もう行かないとな。」
「もう行っちゃうの!?」
「うらむなら時刻をうらめ。」
俺は美桜の頭をなでた。
「行かないで!!時間よ止まって!!」
「美桜、これがシンデレラの魔法だよ。」
「それでも…。」
毎週、毎週美桜のこの姿を見ると、美桜に洗脳されてるかもしれないが、美桜のことを離したくなくなる。もっと一緒にいたいと思う。
シンデレラの魔法が消える瞬間が…。
「15番線ドア閉まりまーす!!乗降よーし!!」
「優くん!!」
美桜が泣き叫ぶ。俺だって嫌とか大変とか言ってるけど、もっと一緒にいたい。いろんな話したい。
俺は美桜と一緒にいたいんだ!!
プシュー
俺はとっさにやってしまった。
「美桜!!」
俺はドアが閉まる瞬間に美桜を車内に引っ張りこんだ。
「優くん?」
美桜は泣きながら聞いた。
「俺、やっぱり美桜とずっと一緒にいたい。いろんなことしたい。俺から離れてほしくない…。だから、だから…美桜、俺と結婚しよう。」
「優くん!!うれしいよ~!!」
美桜は大泣きした。俺は頭をなでた。
するとそこに
「本当、危ないですよ。」
「すいません…。」
そこには岩倉さんがいた。
「たまにこんな客もいるので…。」
「特急料金と乗車券いくらです?」
「彼女連れて帰るんですね?」
「不本意ですが。」
「大阪まで14140円です。」
俺はお金を払い、美桜と座席に座った。
「優くんありがとう。」
「俺もありがとう。」
2人で笑った。
しばらくすると美桜は俺の肩で寝ていた。すごく幸せそうな寝顔だった。
幸せになろうな。美桜。
これがシンデレラエクスプレスの夜である。
恋人たちの想いも乗せて走れ!!シンデレラエクスプレス!!
なんか切なく感じます…。このシンデレラエクスプレスは松任谷由実さんの「シンデレラエクスプレス」のおかげでこのブームが来たと言われています。本当に当時の車掌さんは大変だったと思います。
僕はこのシンデレラエクスプレスはすごいものだと思います(彼女いないけどw)
現在このシンデレラエクスプレスと言われる列車は21:23発のぞみ265号として運転しています。技術の進歩はカップルにも影響しているのだと思います。
(非リアから言わせればふざけんなと言われますけどw)
「シンデレラエクスプレスの恋人たち」編では、少し狭軌最強鉄道からずれてしまいましたが、次回はさらに伝説を作りあげたいと思います!!