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狭軌最強鉄道伝説~新幹線がない世界~  作者: ムラ松
第1章 東海道本線・山陽本線
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伝説が生まれた日

 1958年11月1日、東京ー神戸間で、予定より1ヶ月遅れて、日本初の電車特急のモハ20(後の151系)による、特急こだまがデビューした。それから5年、1963年の12月、世間ではクリスマスとかなんとか言ってるが、俺は変わりゆく今がわからない。そんな中、特急の本数が増える中、運転士になってからほぼこいつと同じ付き合いの151系を運転しているのは俺、田原雄大。特急第2こだま東京行きで東京へ向かうために運転中だ。

 13:50、東京へ到着し、列車を田町運転区に回送させる。田町運転区に戻ると、151系とほぼ見た目が同じの車両の周りにたくさんの関係者が群がっていた。あれが噂に聞く181系か~。181系とは、戦前に計画された弾丸列車計画を再びやろうという計画のために開発された列車だ。俺も気になって181系のところへ行く。

「おう!!田原も来たか。」

こいつは俺の同僚の玉城竜太だ。

「今帰ってきたところ。あれが噂の181系だろ?」

「そう。今、搬入されたとこ。」

「あいつが高速運転行うのか~。」

「らしいな。これから高速度試験をやるらしいけどな。」

「今度は大丈夫だよな~?」

「40年前じゃないだからそんなことはないだろ。それに今は高度経済成長期と呼ばれる時期なんだから問題はないって!!」

「そりゃそうだよな~。」

40年前、高速度試験を行ったC53が時速200㎞を出し反対の線路に脱線をし、特急富士と激突し、17人が犠牲となる事故が起きている。これを「幻の伝説」と呼ばれている。でも、技術が向上している今だからこそ出来ることだ。

「あと、さっき運転所に奥さん電話があって、娘さんのクリスマスプレゼント準備できてるか?今日だから買ってこいだって。」

「そうか今日がクリスマスか~。俺にはよくわからないよ。玉城こそ今日はどうするだよ?」

「俺は彼女といい夜を過ごしてくるよ!!」

「まぁがんばれよ。」

こいつ、口説いてはフラれての繰り返しだからな…。

 俺は娘のために嫁から以前頼まれたクリスマスプレゼントを買いに行くためにおもちゃ屋に行き、1時間くらいじっくり時間をかけ選んだ。そして中央線や山手線に101系や今年デビューした103系などの新車が導入されているに対して、旧型国電だらけの京浜東北線で、自宅のある蒲田まで帰る。

「ただいま~。」

「お帰りお父さん~!!」

3歳の娘の花香が走ってくる。

「おかえりなさい。」

嫁の愛子と愛子のお母さんの(四條)優子さんが言う。

「ただいま。」

「ねぇお父さん見て!!」

するとそこには大きな木が。

「これどうしただよ!!」

俺はびっくりするばかり。

「クリスマスツリーよ。」

夕食の準備をしている愛子が言う。

「ここにいっぱいの飾りをつけるんだよ!!」

花香が言う。

「へー。」

「本当に雄大さんって今についてこれてないだから!!これからはどんどん変わるよ~。」

愛子が言う。

「わかるか!!」

「でも今の電車の技術だけにはついていけるけどね。でも私もその気持ちわかるよ。」

優子さんが苦笑いする。

 夕食の準備ができ、みんなで夕食を食べる。

「花香、クリスマスプレゼント。」

俺は小包を渡す。

「うわ~ありがとう!!」

すると花香は小包を開ける。

「こだまだ!!」

俺は花香に151系のブリキのおもちゃを買った。

「そういえばこれを見て思い出したけど、例の新車、田町に搬入されたよ。」

「時速200㎞で走る特急電車だっけ?」

愛子が言う。

「うん。」

「本当に計画が実行されるのね。今度は大丈夫だよね?」

優子さんが言う。優子さんかつてC53の機関助士だった。そして高速度試験に参加した機関助士だ。

「もちろんです!!今、東海道本線は全線で改良工事が行われていますし!!」

そのおかげで最近よく、東海道本線の一部区間と特急が運休になる。

「とうとう本物になるのね。私と両士さんが『幻の伝説』を創ったのは知っているよね。」

優子さんが話始める。

「はい。」

「うん!!おじいちゃんが汽車を速く走られたでしょ!!」

花香が言う。

「そう。あの後、あの人はずっとこのことを夢に見ていたけど…。神風特攻隊として…。」

「その伝説、僕らが受け継ぎます!!」

「その通りだよ。雄大くん。あの人の夢果たしてあげて!!」

「はい!!」

この約束絶対果たすぞ!!

 次の日。

「田原ぁ~!!」

玉城が死にそうな勢いで俺に突っ込でくる。

「どうした?きのうはデートで…。」

「その言葉を口に出すなぁ~!!」

「なんだよ。」

「あの女、他の男と歩いていやがっただよ!!」

「いわゆる二股?」

「ぶっ殺す!!」

「ぎゃ~!!」

その瞬間、玉城のやつは八つ当たりするように俺に襲いかかる。

 そんなこともありながらも

「この人は鉄道技術課の西原さん。」

今日は181系の件で来たとか。

「本日は田原さんに181系の試運転をお願いしたくて。」

「僕ですか!?」

「151系の高速度試験も経験されてますし、どうでしょうか?」

俺は研修中に151系の高速度試験を担当し、当時の狭軌最高時速160㎞を記録した。

「わかりました!!」

ということで俺は181系に乗り込む。この運転台にあるパネルはなんだ?まさかATCか!?高速運転時に信号が見えにくいので信号機を丸ごと運転台に突っ込んだらしい。西原さんの話によると、ATCの試験を行うとか。それに東海道本線で試験とか言ってもルートが違う。品川からは、貨物線として使用されている品鶴線を経由して鶴見で東海道本線と合流して熱海まで向かう。計画では、小田原まで、専用の線路を東海道本線の横に設けるとか。ATCの試験は無事に終わり、ここ3ヶ月ぐらいは、玉城と共に、181系の試験運転を行った。更に故障などの訓練も行われ、部品を外して走った時は本当に怖かった。

 そして3月30日、今日はとうとう高速度試験が行われることになった。

「お願いしますよ!!田原さん!!」

「はい!!未来のために走ります!!」

みんなの夢乗せて行くぞ!!181!!俺はマスコンをフルにした。列車は順調に時速100㎞を超え、200にまでも達した。時速250㎞を越したところで

「おめでとうございます!!時速250㎞を…。」

「いや、まだ行きます!!限界まで試します!!」

「わかりました。頼みます。」

よし行くぞ!!列車は時速265㎞にも達した。本当にやったぞ!!

「もう無理そうです!!」

俺が言う。

「OKです!!」

車内が歓声に包まれた。狭軌最高時速を記録した瞬間だった。

 そして1964年10月1日、東京~大阪間で181系による、超特急ひかりが運転された。こんな明るい話ばかりだったが、今回の線路の強化工事などで国鉄は大赤字となり、十郷総裁も解任となってしまった。まさかこれが国鉄の一生の荷物になるとは…。そんな中、俺は6時、東京発の超特急ひかりの一番電車の運転を任され、大阪へ向け、マスコンをフルにし、夢乗せて旅立って行った。次の日、俺の家族が東京駅に来た。

「うわ~すごいよ!!これ、お父さんが運転するでしょ!!」

「そうだよ。」

すると愛子が

「そういえば、今朝の新聞見た?」

「きのうのことか?」

「そうだけど。日本の鉄道がすごいこと言われてたよ。」

すると愛子が俺に新聞を見せた。そこには

「狭軌最強鉄道!?」

新聞記事には「狭軌最強鉄道運転開始」と書かれていた。

「きのう偶然この列車に乗り合わせた欧米の技術者が言った言葉らしいよ。」

「すごいな日本!!」

「雄大くんのおかげだと思うよ。あの人も天国で喜んでいるよ。きっと。」

優子さんが言う。

「そうですね。」

俺が空を見上げると両士さんが笑っているように見えた。

「私決めた!!私、お父さんみたいな運転士になるよ!!」

花香が言う。

「そっか。きっといい運転士さんに花香もなれるよ。」

「うん。」

俺は花香の頭をなでた。きっとこの娘はいい運転士になれそうだな。

 これが「狭軌最強鉄道」と呼ばれる伝説ができた瞬間だったかもしれない。

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