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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
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魔王と勇者、立ち向かうは秩序を司る邪神

 アルベールは聖域の入り口にて空を見上げていた。


「なんだ、この空は」


 先ほどまでは青空が広がっていたが、今では純白の色一色で不穏な空気に眉を潜める。


「取り敢えずは、まず皆を招集せねば」


 あの異様な空は気になるが、クリスティアからの頼まれごとを優先し聖域に足を踏み入れる。


 蝋燭や術式による明かりはないのに、不思議と室内は淡く発光していて、いまだにその原理が分からない。


「1人で探すのは少々時間が掛かり過ぎるか」


 アルベールは銀狼を創り出し、皆を探すよう命令を下す。


「さて、早いところ見つけねばな。クリスティアが心配だ」


 どこか胸の奥底で感じる危機感というものだろうか。あの空を見た時から嫌な予感が拭えずにいた。




シオンはクルトと柱を見上げていた。


「確かに絵が光っているね。さて、これは一体どのような理由があってひかっているんだろうな、シオン?」

「俺が知るわけねぇだろ」


 クルトは何か不吉な予感を抱えていたが、今や未来創造や未来視は扱えない。


「まったく、妨害がなかったら俺の力が使えるんだけどね」


 呟くように小さな溜息を吐き、この現象の理由づけが出来る素材はないかと周囲を見渡すが、やはりめぼしいものはなく、謎が深まるばかりだった。


「うん?」


 通路の奥から獣のような唸り声と馴染みの魔力を感じ振り返ると、銀の残影を引き伸ばしながら銀狼が宙を駆けてきて、クルト達の目の前で停止する。


「コイツはアルベールの……」

「どうやら、何か急ぎの用らしいね。仕方ない、この場で悩んでいても埒が明かないしいったん合流しよう」


 クルト達は銀狼に先導され、歩をしばらく進めていくとエリーザ達と一緒にいるアルベールと合流することが出来た。


「アルベール、俺はクリスティアの傍にいるようい言っておいたはずだが?」

「直ぐに中央協会に帰還するぞ、クリスティアの命だ」


 アルベールの言葉にアズデイルが疑問を投げかける。


「アルベール殿、一体何があったんですか?」

「何があった? 貴公等はあの大地震を感じなかったのか?」


 その言葉に聖域を探索していた魔王たちは呆気にとられた表情をする。


「えっ、ちょっと待ってアルベール。私達そんな地震とかまったく感じなかったんだけど……」

「ああ、微弱な揺れなら気づかなかったかもしれねーけど、大地震なら普通は気づくだろ」


 エリーザに続きシオラーも否定する。


「どういう事だ……あの揺れを感じなかっただと」

「そんな事よりアルベール。国の被害はどんな感じになっているんだ?」

「うむ、負傷者や死者がかなり出ている。それと城下が燃えている……そっちは直ぐに収まるとは思うが、我はそれ以上に空の色が気になった」

「空の色?」

「あの純白世界のように真っ白に染まっていたのだ」

「ああ~、これはちょっとやばそうだね、直ぐにでも戻った方がよさそうだ」


 何故、この聖域内では地震をまったく感知できなかったのだろうか。これも、聖域の持つ不思議な力のお陰なのか。アルベールはクルトと目配せをしては、皆に外に出るよう指示を出す。


「その必要はありません」

「!?」


 背後から投げかけられた声に振り返る。


「クリスティア、なぜここにいるのだ。民は大丈夫なのか!?」

「待て、アルベール! 様子がおかしい」


 その虚ろな瞳を見て、アルベールも悟った。


「邪神クリスティア……なのか?」

「私は契約の秩序を管理する者。楽園の意思の下に世界の不浄を払い、新たなる秩序をもたらす」

「楽園?」


 クルトは聞きなれぬ単語に眉を潜めるが、アルベールを含め他の魔王はそんな些細なことに一切の意識も向けず、クリスティアに対峙していた。


「よぉ、邪神クリスティア。ホントに近いウチにまた会ったじゃねぇか。人間のクリスティアは」

「すでに私の意思に溶け完全なる1つとなった」


 シオンの言葉を遮り、静かに告げる。


 もう、この世界にクリスティアは存在しないと……。


「そうかよ……」


 シオンは形容のしがたい感情の宿った瞳を一度伏せては見開くと、彼の中で強い決意が固まったような眼光を放っていた。


「ねっ、ねぇ。本当にクリスティアちゃんは……もう」

「ハッ、くどいぜエリーザ。あの秩序のなんとかって神が断言しただろ。だったら、俺たちが出来るのはあのクリスティアの守りたい世界を守るだけだぜ! なぁ、アズデイル」

「ええ、そうですね。人魔平等の借りは返さなくてはいけませんからね」

「でっ、でも~」


 未だに意思を固められないエリーザの視線は自然とアルベールに向いていた。


「我は、救いたい。この世界もクリスティアも。だから、我は全力をもって邪神を打ち滅ぼす!」


 翡翠色の双眸に迷いはない。


「う、うん。わかった。アルベールが戦うなら私も戦うよ。一緒にクリスティアちゃんと世界を守ろう」


 ようやく戦う意思を向けたエリーザにクルトは懐から1つの符をとる。


「相手は常世の神々を滅ぼした邪神だ。その力は強大だからね、こっちはもう少し戦力を整えさせてもらうよ、とは言っても呼べるのはせいぜいが3人が限界だ」


 クルトは符に意識を集中させ、地面に舞い落とす。すると、符は強い光を放つ。


「エンゲリア・ヴァイズ(繋がりの符)。これは遠く離れている者を呼び出し、俺の意思を伝える因果創神器さ」


 光の中から重厚な鉄が地を踏みしめる音がしその巨躯をゆっくりと現せたのは序列第4位の魔王グランド・ヘルだった。


「……クリスティア、俺は……友を、救いたい」


 そしてその巨躯に続くは、背に大剣を背負う青年。その力はまさに切り札となりうる後攻に強い第3魔王に認められし勇者。咎を背負う者シン・リードハルト。


「聖なる乙女よ、邪神の魂なんて俺が払ってやるぜ!」


 最後に、歪んだ微笑みを浮かべる女性。因果創神器の実力だけで序列第5位に座する魔王リリアン・ストリオス。


「あらあら、クリスティアちゃん。だいぶ女性としての魅力がなくなっちゃったわねぇ。お姉さん悲しいなぁ」


 この邪神を前にしていつもの調子で語りかけるリリアンは流石といったところだった。


「さて、これで役者はそろった。俺は……いや、俺たち魔王と勇者が邪神を討つ」


 クルトは預言者の宣託のように力強く契約の秩序を管理する者クリスティアに宣告する。


「小さな阻害因子は私の秩序の下断罪します」


 クリスティアは手を天井に掲げると辺りは純白の世界に呑まれていく。


 この世界の運命を左右する最終戦に世界と少女の意思を守らんとする守護者は一斉に魔力を一切の加減することなく解放する。


こんばんは上月です(*'ω'*)ノ

とうとう、最終戦となりました。

この話しももうあと2話で完結する予定です。

とうとう完結してしまうのかと思うと、心にぽっかりと穴が開いてしまったかのような寂しさがあると同時に、高校の時に構想を練っていた自身の自慢の作品を完結させられるという達成感があります。

次の投稿は8月30日の火曜日となりますので、最後までお付き合いください(^_^)/

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