純白世界にてシオンが見た者
「これって、何ご飯なの?」
「分かりませんが、一応夕飯という事でいいんじゃないですか?」
この時間感覚が分からない聖域で休憩を挟み、持参した食料にパクついていた。
「おい、シオン。この後はどうするんだ?」
「どうするもなにも、クルトが来るまで出来るだけ多くの情報を集めるだけだ」
「まだ探すの!?」
思いっきり不服の声をあげるエリーザを睨み黙らせる。
「嫌なら帰れ。俺は止めはしねぇ」
「べ、別に嫌じゃないもん!」
自棄気味に手に持ったサンドイッチを頬張り、頬を膨らませる。
まるでリスのような少女にアズデイルは恍惚とした表情を浮かべては、変質者のように息を荒げる。
「いいですよ、エリーザ……はぁはぁ、さぁ、もっと私を身悶えさせてください!」
「「気持ちわりぃんだよ!!」」
「おごぉっ!」
シオンとシラーの拳がアズデイルの両頬を打ち抜く。
「ナイス、コンビネーション!」
エリーザは親指を立てては嬉しそうに満面の笑みをシオンとシラーに向ける。
殴られた勢いで上体が反り、そのまま背後に倒れたアズデイルは何が起こったのか理解できていないような表情のまま意識を失っていた。
「俺は先に探索に戻る。テメェ等は十分に休息をとってろ」
シオンは1人食事を手早く済ませると、椅子代わりにしていた瓦礫から腰を上げ、何処かへと歩いて行ってしまった。
「シオン、ホントに変わったよね」
「ああ、そうだな。クリスティアから一番影響を受けたのはアイツかもな」
「ふ……ふふ、恋は人を変えるのですかね」
「「……!?」」
背後を振り返れば、先ほどまで意識を失っていたアズデイルが顔を腫らしながら微笑んでいた。
「おや、どうしたんですか二人とも?」
「いっ、いや何でもない」
「う、うん。それよりアズデイルは休んでた方がいいんじゃない?」
彼の変形してしまった顔にエリーザは引きつり、シラーは申し訳なさげに視線を逸らす。
「ふふ、お気遣いありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ。今の私は頭が清々しいんです」
殴られた後遺症かなにか出たのではないかと本気で心配してしまうが、きっと大丈夫だろうと深く考えることを辞め、残った食事を平らげると再び探索を開始する。
「この仕事が終わったら長期休暇でも貰おうかなぁ」
「いいですねぇ、また3人……いえ、シオンも含め4人で物見遊山でもしに行きますか?」
「ハッ……アイツがそんなものに興味なんてあんのか?」
「誘ってみなきゃ分かんないよ」
3人はそこで一度手分けして探すことになった。
シオンは何か心の奥底で引っかかり感を抱いていたが、異形の者が描かれた柱を見上げ言葉を失い、引っかかり感もどこかへと霞み消えた。
「なんで光ってやがるんだ……」
その絵だけが淡く発光していた。
先ほどエリーザがドラゴンの絵が光っていたと言っていた事を思い出す。
「これは、確実になんかあんな……痛っ!」
めまいに激しい頭痛。
その尋常ならざる痛みに両手で頭を抱え、四つん這いの姿勢を取り、強く瞼を閉じる。
脳が揺さぶられたように平衡感覚さえ失い、さすがに不味いと判断し、エリーザ達を呼ぼうと声を上げようとするが、声は掠れ意識さえも朦朧とし始める。
「ざけ……んじゃ、ねぇぞ!」
吐息と共に吐き出したその言葉を最後に意識は深い闇に包まれた。
時間にして一瞬だろうか、一呼吸を終える前にすべての痛みは失せ、瞼をゆっくりと持ち上げその灰色の瞳が映したのは瓦礫と柱にまみれた聖域ではなく、純白の世界。
「なんだ、ここは……」
周囲を見渡せども白一色でどこまで続いているのかさえ分からない。
ただ、一言だけ分かる事がある。それは、この場所がとても気持ちが悪いという事。
「なっ!」
背筋に冷たい鋭利な刃でも突き付けられたかのような視線を感じ取り、振り返る。
「テメェは……!」
背後に佇む者の姿にシオンは驚きを隠せずにいた。
こんばんは上月です(*'ω'*)ノ
シオンがとうとう純白の世界に足を踏み入れてしまいました。
次回もこの続きを書いていきます。
次の投稿日は8月23の火曜となりますので、よろしくおねがいします




