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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
82/90

世界の真実を描く聖域

リリアン達がヴァナトリア領に向かっている時、残った魔王はクリスティアに変身した、クルトの命で聖域に足を運んでいた。


「瓦礫と意味の分からない文字ばっかりで特にめぼしいものはないじゃない!」


 聖域にたどり着いてから休むことなく探索し、すでに5時間が経過していた。


 聖域という名の遺跡内は日の差す場所が無く、今が朝なのか夜なのかも分からない。


「シオン、そろそろ休憩を挟みませんか? 探索続きで少々疲れたのですが」


 アズデイルの訴えをシオンは渋々承諾する。


「だらしのねぇ奴らだ。お前らは30分だけ休んどけ」

「お前らはって事はシオン、お前はどうすんだよ」


 壁面に描かれた文字や絵を眺めていたシラーが疑問を投げつける。


「俺は別に疲れちゃいねぇんだよ。この近くを見て回ってるから、休息がすんだらちゃんと仕事しろよ。クリスティアの命が掛かってんだからよ」


 シオンの発言にアズデイルとエリーザがニヤニヤとした笑みをシオンに向けては見せつける様に時折チラチラとシオンの様子を窺うかのように、2人で内緒話しを始める。


「シオンって、すご~く丸くなったよね。いつからそんなにクリスティアちゃんラブになったのかなぁ?」

「俺は人間共を殺戮しつくす。とかなんとか言ってた時代が懐かしく感じますねぇ」

「勝手に言ってろよ、格下共」


 以前であればブチ切れては食って掛かっていたが、今のシオンはそこまでする気が起きなかった。


 クリスティアという人間が彼を大きく変えた。憎んでいた人間達と触れ合うことで、今まで知らなかった多くの事を学び、成長したのだ。


「今のお前の方が、いい顔してるぜシオン!」

「……黙って休憩してろ」


 これ以上、彼らと接していると収まりがつかなそうな気がしたので、会話を一方的に断ち切り、背を向けて歩き出す。


「ホント、変わったなアイツは」

「うんうん、まだ棘はあるけど。昔のシオンに戻ってくれたみたいで、私は嬉しいなぁ」


 エリーザ達は城からくすねてきたおやつを分け合いながら休息をとる。


「シオンはきっとクリスティアに恋をしていますね」

「やっぱり、アズデイルもそう思う? シラーはシオンのクリスティアちゃんに対する感情って何だと思う?」

「ハッ……俺は恋なんてしたことねぇから分からねぇけど。好意は抱いてんじゃねぇか?」

「だよね、だよね! ふふふ、アルベールに恋敵参上って感じだね!」


 興奮を抑えきれない、エリーザは脳内で勝手な三角関係のドロドロしたドラマが繰り広げられていた。


「ん? なんだアレ」


 シラーが突然に1つの柱に目を向けポツリとつぶやく。


「どうしました、シラー?」

「あの柱のあの絵だけ光ってねーか?」


 シラーの指さす方にエリーザとアズデイルが顔を向けると、確かに発光していた。


「あれって、ドラゴン?」

「ドラゴンにしか見えませんね」

「つか、なんでドラゴンが光ってんだ」


 3者同時に首を捻り唸る。




 エリーザ達を休憩させ、シオンは1人離れた場所で邪神についての手がかりがないか探っていたが、進展となるモノは見つからない。


「チッ、この場所に何があるってんだよっ!」


 イラつきが募り、近くの柱に拳を打ち付ける。


「世界もあの女も失わせねぇ! 終わった時代の神なんざ、お呼びじゃねぇんだよ!」


 再び、拳を柱に打ち付ける。


 当たり散らしたおかげで、少し冷静さを取り戻し、深く深呼吸を数回し辺りを見渡す。見逃している箇所はないか。不審なモノはないか。薄明りの中、注意深く1つ1つへと視線を移し、異様なモノを発見する。


「なんだ、これは……」


 それは、柱に描かれた一人、いや一体と数えた方が適切だと思える異形の化け物。見た目は人の形をしているが、四肢がそれを禍々しく否定していた。


両腕両足の先端には触れるための手、地を踏みしめる為の足ではなく、片方に5本ずつ計20本の切り裂くために用いる様な刃。


 その姿を見て何人の人間が彼を人として見るだろうか。シオンはそんな彼を人だとは思えなかった。


「化け物……」


 侮蔑の言葉。


 人ならざる異形の者。


 そんな感想しか思い浮かばない。どうしてこのような姿をした者が柱に描かれているのだろうかと思考する。


 魔王といえど、シオンこの世界の常識内に住まう者。この世界の枠組みから外れた存在を理解しようにも、理解しえない。


「邪神になにか関係があるのか?」


 クルトは言っていた。この聖域についてはよくわからないと。


 いつから存在しているのか、文明レベルや建築様式、聖域内で使用されている文字や絵はこの世界では見られないモノだと。であれば、常世の時代という神々の世界に関係があるのではないかというのがクルトの考えだった。


「探索すんのは構わねぇけどよ。文字が読めねぇんじゃ話しになんねぇよな」


 今のところの収穫といえば、他とは毛色の違う異形の絵くらいのものだ。


「シオン! もう、近くにいなかったから探したじゃない」

「そうですよ。まったく、よく分からない場所でフラフラと単独行動は控えていただきたいですね」

「お前ら、そんな事より報告することがあるだろ」


 シラーの一言にエリーザは、そうだったと思い出したかのように表情を変える。


「あっちにね、ここに描かれてる絵とは違う絵があって、それだけ光ってたの」

「違う絵だと!?」

「えぇ、ドラゴンの絵でしたが。あんな娯楽に生み出された生き物が一体なんだって言うんですかね」

「そういや、エリーザ。お前、龍になれたよな?」

「シラー。ドラゴンと龍を一緒にしないでくれる。龍の方がカッコいいんだから!」


 3人が会話で盛り上がっている中でシオンはこの場所と先ほどの化け物、そしてドラゴンの関連性をどうにか結び付けようと思考していた。



こんばんは、上月です(*'ω'*)ノ

今回は物語の大きく進展する話しとなっております。

アルベールが戦ったドラゴン。そして、ヘルが戦った異形の存在。はたして彼等はこの物語にどのような配役だったのでしょうか。

まぁ、贄なんですけどね(ボソッ)

物語も、あとわずかとなってきました。続編があるとはいえ、この「守るべき存在、失われる世界」が終わってしまうというのも少し寂しいです。

思い返せば、この作品は高校時代にノートで紡がれることから始まりました(遠い目をしながら)

さてはて話しが脱線しましたが、次回の投稿は明日です!

8月21日の夜に投稿しますので、よろしくお願いします

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