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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
78/90

異様な傷

 一面が白い部屋に並ぶ無数のベッドの1つに彼女は瞳を閉じ静かに眠っていた。


 ヴァナトリア帝国王女ナコト・ヴァナトリア。


 薄い水色の癖のある前髪をステラは優しく撫でる。


「今はだいぶ落ち着いているよ」


 白衣を纏った若い医師はカルテに何かを書き込みながら、ステラを安心させようと声を掛ける。


「帰ってきたときは重症だったとお聞きしていますが」

「そうだな。あの時のナコト様を見たときは正直助けられる自信がなかった……。だけど、魔力というのかな、それが治癒を早めてくれていた事が幸いして何とかなったんだよ」


 若き医師は魔力という手助けが無かったら救えなかったという事実に少々疲れたような笑みを浮かべる。


「それでも、先生のお力が無かったらナコト様は命を落としていたかもしれません」


 こんな程度の言葉でしか彼を慰める事は出来ない。そもそも、今の言葉が適切だったのかさえ分からない。


 ここにいるのが自分ではなくクリスティアであればもっと気の利いた言葉を彼に言ってあげられたのではないかと気落ちしてしまう。


「そうかもね。そうだ! 手術をしていて分かったことがあるんだ」


 医師は何かを思い出したかのように手を止めステラに向き直る。


「これは皇帝陛下にもお話ししていない事なんだが……ナコト様の傷に少々違和感を抱いてね」

「違和感ですか?」


 皇帝にも秘密にするほどの事なのかとステラは疑問を抱く。


「ええ、何というか、その……傷自体は鋭い刃物による裂傷なんだけど、問題はその傷口で、その見事なまでにパックリと開かれた箇所全てに灰のようなモノが塗り込まれてかのように付着していてね、気になって調べたんだがどうやらこの世界の物質ではないようなんだ」

「この世界の存在しない物質……」


 つまり、その化け物は異界からでもやってきたとでもいうのだろうか。


 そして、傷口になぜ灰のようなモノが付着していたのか、まったく理解できない相手により一層慎重になるべきだと判断する。


「どうして、この事を皇帝陛下にお伝えしなかったんですか?」

「確かに少しでも多くの情報を報告すべきだとは思ったんだけど、これが何なのかまだ分からない状況で娘の傷口に得体のしれないものが塗り込まれていました。なんて言ったら余計な心配をさせてしまうと判断したからだよ。今の皇帝陛下は国や民の事で多忙の日々を過ごし疲れている所に今回の件だ。あの方の肉体と精神の疲労具合も尋常ではないはず。これ以上負荷を掛ければ今度は皇帝が倒れられてしまうからね」


 医師としての判断。


「そうでしたか、分かりました。貴重な情報ありがとうございます」

「いや、この程度の情報しか提供できなくてすまない」


 ステラはそろそろ行かねばと、医師と最後に一言二言言葉を交わして医務室を後にする。

 本来であれば見舞いにはグレイとリリアンも同行する予定だったが、グレイは皇帝から渡したいものが

あると言われ、そのまま彼について行ってしまい、リリアンはいつのまにか姿を消していた。そういうわけでお見舞いはステラ1人で行くこととなった。


廊下を歩いているとちょうどグレイが手を上げながら歩いてきた。


「ナコトの様子はどうだったんだ?」

「今は安静にしているみたい。それより皇帝陛下から何を頂いたんです?」

「おっと、そうだった。これだ」


 グレイはズボンのポケットから小さな石を2つ取り出し、1つをステラに手渡す。


「えっと、なんて言ってたかな確か……そうそう! 身代わりの石って言ってたぜ。なんでも怪我をしてもコイツが一度だけその怪我を引き受けてくれるらしいんだ」

「因果創神器ね。でも確かに今回の敵には必須かもしれないわね」


 手渡された石をしまい、リリアンとヘルを探すべく城下に向かう。




 城下でヘルの姿をすぐに見つける事が出来た。

 中央広場の噴水の縁に腰を掛け、鳥たちが彼の巨体の上で一休みをしていた。

「よぉ! こんなところでなにやってんだ?」

 グレイが声を掛けると鳥たちは一斉に空に向かい羽ばたいていってしまう。その身軽に飛ぶ姿をヘルは見上げ、見送るとゆっくりと立ち上がる。

「用は……す、んだのか?」

「ええ、私達は済んだのですが、リリアンの姿が途中から見えなくなってしまって」

「まったく、どこ行ったんだかな」

「いつも……の、事だ……先にい、こう」

 ヘルはそう言うなり歩き始め、ステラとグレイもいいのかなと一度顔を見合わせ仕方なくヘルに続く。

 こうしてリリアンを除いた一行は手渡された地図を頼りに例の森へと向かう。

 この先にどのような危険が待ち受けているかは分からない。それでも、人々が安心して生活出来る為に彼らは進む。

「ここから、このペースで歩くと明日のお昼くらいになりますね」

 馬を借りられればそれが一番よかったのだが、約2名馬に乗れない人がいたので、仕方なく徒歩となってしまった。

 1人はグレイ。なぜか知らないがどのような馬とも相性が悪く、乗った瞬間に馬が嫌がり振り落とされるという事が毎回起こるため、グレイは必然的に徒歩となる。

 そうしてもう1人はヘルだった。彼の全身は鋼の鎧でその重量も計り知れない。その重みに馬が耐えられないと判断した事により徒歩となる。

 そのお陰で3人は現在歩きで森に向かっていた。


こんばんは上月です(*'ω'*)ノ

今回は時間があったのでゆっくり書こうと思っていたのですが、気づいたら2話分を書き終えていましたので、次の投稿は8月14日の夜に投稿となります。

次回で化け物の正体が確かとなるので、楽しみにしていてください^^

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