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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
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大道芸への参加

「うわぁ! みてみてアルベー……コホン、アベリアちゃん。大道芸だよ」


 人だかりの中心には楽しそうな音色を奏でる奏者と、観客相手に歓声と笑いを沸かせる会話と技を披露する男がいた。


「また我は、アベリアちゃんなのか……」 


 アルベールの衣装は未だに女性物なのでアベリアを演じるしかないのは分かっていたが、やはり魔王と呼ばれる身で女装せねばならないのは、やはり耐え難いものがあった。


 かと言って、今この場で衣服をかなぐり捨て魔王であることをバラすのはもっての他だ。アルベールは深いため息を飲み干し、その代わりに笑顔を張り付かせる。


「そっ、そうね。ちょっと見ていく?」

「うん!」


  スティアとアベリアは銀狼が報せるそ時まで、あの怪しい3人組の事は忘れ、今はただ純粋にこの時間を楽しんでいた。


「さてさて! ショーも残すところ、後わずかになってしまいました。ですので最後に皆様の記憶にこの楽しかった時間をより深く刻んでもらうために、皆様の中から私と共同のショーで幕を下ろしたいと思います!」


 大道芸人が誰にしようかなと見渡し、最後のショーを飾る最高のパートナーとなるべく人物を見つける。


「そこの、お美しい2人の女性にお願いしようかと思います! さぁ、皆さまは拍手で舞台までお送りください!」


 選ばれたのはスティアとアベリアだった。周囲からはヒューヒューと囃し立てる男性陣や、女性陣からは妙に色っぽい潤んだ視線をアベリアは背中に受けつつも、気づかぬふりをしながらスティアと共に舞台に上がる。


「最後のショーのパートナーになっていただきありがとうございます! では、こちらへ」


 舞台の隅に置かれた大き目のカバンには数本の刀剣が入っており、それを3本ずつ手渡す。


「こっ、この剣で何をすればいいんですか」


 あまり馴染みのないずっしりとした重みに手が震えている。


「ははは、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。ただ、私がこのバランスボールの上に乗りますので、私の胸元めがけて投げてくれればそれで構いませんから」

「なな、投げるんですか!? この剣をですか?

「ハイ! 安心してください。私もこの業界に長く勤めていますので慣れっこですから」


そう言い、スティアとアベリアの手を握りステージの中央に誘導して今回のショーの説明を可笑しく大げさに説明し、最後のショーが始まる。


 ぐらぐらと今にも転びそうになりながらも。腕を回したり、足をバタつかせてバランスを保ち、落ちそうで落ちないという技で客をハラハラさせる。


「おっとっと~、今日はやけに滑りますね! とと、これは私の命も危ないかもしれません! 私が今日の夕飯を生きて食べるか供えられるかは、お2人にかかっております。では、お願いします」


 表情は笑っていたが、その瞳は真剣そのものだった。


 いくら、プロだとはいえ剣を投げるのは素人だ。真剣にやらねばけがをする可能性もある。


「じゃ、じゃあ私から行きます」


 完全に緊張で身体がガチガチとなり機械仕掛けの人形のような動きで、より一層に観客だけでなく受ける側にも張り詰めた空気が走る。


「えいっ! えいっ! やぁ!」


 打ち合わせしたように一本ずつボールの上でバランスをとる彼目掛けて投擲する。


「ほいっ、とう、はい!」


 3本ともズレた場所に飛んでいくが、大道芸人はボールを上手く足で転がし、その全てをキャッチしていった。


「す……すごい!」


 その恐ろしいほどの神業に感嘆の声が上がる。


「では、お次のお姉さんもお願いします」

「うむ、我……ううん、私の出番ね。よっ、よーし。たぁ! はぁ! やぁ!」

「へっ!?」


 3本の剣は銀の残影を宙に残し、目を瞬かせる大道芸人の背後で鈍い音が3回重なるように響く。


「えっ……え?」


 先ほどの笑顔はどこへ行ったのやら、何が起こったか分からないという表情で恐る恐る背後を振り返れば、確かにアベリアに手渡した3本の剣が激しく揺れながら、建物の壁に深々と刺さっていた。


 その光景に観客はもちろんクリスティアの目は点となる。


「ご……ごめーん、今のは失敗失敗。次は外さないから」


 大道芸人は演技ではなく本気で勢いよく首を振っていた。


 あの投擲された剣を外さないという事は、確実に死ぬ。それはもう冗談とかそういったレベルではない。


「み、みなさん。今回協力してくれたこのお二方に盛大な拍手をお願いします!」


 もう自然な流れではなく、バッサリと幕を下ろしてはお客から報酬を受け取りイソイソと荷造りをはじめ、何処かへと旅立っていった。


「ふむ、なかなかに楽しい人間であったな」

「はははは……そ、そうだね」


 クリスティアは内心で大道芸人に同情し苦笑いを浮かべることしか出来なかった。


「む?」

「どうしたの、アベリアちゃん」

「どうやら、動きがあったようね」

「じゃあ、行かなきゃね!」


 銀狼の気配を辿り、アルベールとクリスティアは路地裏に駆けていった。


こんばんは上月です。

次回こそは怪しい3人組の話を進展させます!

次回の投稿は7月31日の日曜日となりますので、よろしくおねがいします(*'▽')

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