聖女と魔王の休暇
アルベールとクリスティアは中央教会領の舗装された街道を馬で駆けていた。
背後を振り向けば首都がどんどん小さくなっていき、次第には森や丘を抜けていくうちにその姿は見えなくなる。
「少々、休憩を挟もうか」
草原が広がるのどかな場所で馬を降りては、その緑の絨毯に寝転がり一面の青空を流れる雲を眺める。
「アルベール君、1つ聞いてもいい?」
「うむ、かまわぬよ」
「アルベール君って、その……他人と触れ合えないって言ってたけど、それっていつくらいからなの?」
「産まれ落ちたその瞬間からだが?」
産まれ落ちたと言っても、アルベールは気付いた時からこの姿だった。
そう、瞳を開け最初に飛び込んできた光景は……。
思い出せない。自分がいつ、何処でどのようにしてこの世界に現れたのか。思い出そうとするだけで頭に鈍い痛みが走る。そう、思い出すことを拒絶しているかのように。
「そっか……でも、いつかきっと他の人達と同じように温もりを感じられる時が来るよ! その時は私が初めにアルベール君に温もりを教えてあげたいなぁ……なんてね」
言ってて恥ずかしくなったのか、クリスティアは頬を赤らめ冗談だよと言って顔を逸らしてしまう。
「我も思う。愛すべき初めて出来た人間の友人と触れ合えたらとな」
対するアルベールは似通った台詞を何の恥ずかしげもなく、紳士に真っ直ぐとクリスティアを見つめて言い放つ。
懸命に逸らしていた顔も次第にはアルベールの方へ向いてしまい、高鳴る鼓動に口内が乾きつつもその翡翠色の瞳から視線を逸らすことができない。
「そっ、そうなの!?」
「うっ……うむ」
身を乗り出すクリスティアにアルベールは少々引き気味に頷く。
「だが、何故この身は他者と触れ合うことが出来ぬのか。その理由すらも分からないのであれば、まだまだ解決には時間がかかりそうではあるな」
「それでも、私はいつでも待ってるよ。アルベール君がぬくもりを感じられるようになったら思いっきり抱きしめてあげるね」
「ふふ、ならせめて我に抱きしめさせてはくれぬか? この両の腕でクリスティア、貴女の全身の温もりを感じたいのだ」
「だっ、だだき、抱きしめる……!?」
女性の甘い妄想にしたが回らなくなり、声が上ずってしまう。
「だが、我の問題を解決する前に邪神の件を片付けねばなるまい」
これからの課題は山程もあり、1つ1つを順番に処理していかねばならないので、アルベール自身の悩みというのはいつ頃解決できるのかと苦笑しつつ考える。
「そうだね、でもきっと必ず解決できるよ。だって今は皆がいるんだから。力を合わせれば不可能なんてことは無いんだよ」
前向きな彼女の考え方にアルベールはそっと頷く。
何事も行動と必ず成し遂げると信じ初めて物事にぶつかる事ができるのだ。それを生半可な気持ちでいては成し遂げられることも成し遂げられなくなってしまうのだ。そんなクリスティアの姿勢にアルベールは感服し是非とも見習いたいものだと内心で賞賛する。
「さて、そろそろ出立するか。この先には確か小さな街があったな」
この国に住み、一応は大まかな地図を頭に叩き込んでいるので、記憶違いがなければこの先に街があったはずだと思い出す。
その街は主に旅人の休憩所として使われるので宿屋が多く立ち並んでいて、首都にも近いので物資も他と比べ少し裕福であった。警備は街の若者が自警団を組織し日々を犯罪に眼を光らせているのだが、この平和を体現させたような国……いや、現在のこの東大陸にはそこまでの事件が起きるのは、稀のなかの稀なので普段は見回りや道案内が主な業務となっている。
そこで生まれてくる問題が兵士の有用性についてだった。
戦争が起こるから戦うべき兵士が必要なのに、今は大きく目立った戦争も無く兵士達の必要性が問われ、各国でも問題視されていた。
「うん、旅人の憩いの街クワンラド。お土産屋さんも豊富で中央教会内でも上位に位置する平和な場所だね」
アルベールに手を引かれては馬に跨り、アルベールの腰に手を回し、流れる銀色の髪が眼前に広がり、再び馬を走らせる。
それからは他愛のない話しをしては笑い、とても幸せな時間を満喫しながら目当ての街のクワンラドにたどり着く。
首都から近いと言っても、小休憩を挟みながらの到着で約6時間だった。
こんばんは上月です(*゜▽゜*)
いやはや、3連休も残すところあと1日です。
みなさんは楽しい連休を過ごせましたか?
さて、次回もアルベールとクリスティアのお話しです。
次の投稿は7月20日の火曜日となりますので、よろしくお願いします。
PS、今回の話しは後ほど修正します。




