純白世界での再戦
リリアンの胸ぐらに掴み上げるクルトの背を切り裂かんと鳴動しながら風を切り迫る女神の大鎌にアルベールも術式を展開しようとするが、一歩の出遅れによって間に合わないと悟るも銀狼を形成しリリアン目掛けて宙を駆け抜ける。
「リリアン、お前の浅はかな考えは未来を視なくても手に取るように分かるぞ」
今にも互の顔が触れ合いそうな距離感でクルトは笑う。
「カウンテルト:ティラフィラッド(不可視無情の理)」
クルトの扱う常世の術式はその言葉を引き金に即時展開される。
女神の大鎌がクルトの背に触れるか触れないかという絶妙な距離感で停滞し、不可視なる何かによって弾け飛び宙で回転し地に突き刺さる。
そして、アルベールの放った忠義の銀狼の牙をリリアンに突き立てようと迫るが、リリアンも見えざる力によって弾き飛ばされ地を滑っていき、それに追随する銀狼すらもクルトの近くを通り過ぎようとしたその瞬間にリリアンと同じようにあらぬ方向へと弾き飛ばされ消滅する。
「む?」
それはクルトに近づくことを許さぬ理。
「あぁ、ごめんごめん。この術式は俺に近づこうとするもの全てを弾き飛ばす防衛の術式でね、その対象は敵味方関係なく効力を発揮してしまうのが難点なんだ。その、キミの狼には悪いことをしたね」
困ったように笑うクルトに吹き飛ばされたリリアンは立ち上がり、手を上空に掲げると先程地に刃を埋め刺さっている大鎌は主の呼びかけに応え見えない引力に引かれるようにリリアンの手に収まる。
「あらあら、クルトちゃんそれはちょっとずるいんじゃないかな~」
「そうか? 俺の不意を突いて背後から切り裂こうとしたお前こそ卑怯なんじゃないか? 正々堂々と正面から立ち向かう勇気もないのか?」
お前には言われたくはないと閉じられた瞳を向け薄く笑う。リリアンは頬に付いた汚れを袖口で拭いクルトの言葉を挑発と捉え、ならば正面から立ち向かおうと左半身を引き両の手で大鎌を持ち刃をクルトへ向ける。
「なら、お姉さんもたまには正々堂々と戦ってみようかしらぁ」
いつもは奇襲や手負いの相手を嬲り殺す事しかしないリリアンが初めて戦意というものを示しクルトにぶつかろうとしている。
「そうだね。お前の言葉をちゃんと俺に聞かせてくれよ」
クルトも真摯にそれに応えようと因果創神器であるフュング・オブリリア(五行陰陽の珠)を宙に投げ、5つの珠はクルトの周囲を漂う。以前リリアンを地にひれ伏させ敗北させた珠が今もまた目の前に展開されている。
「ふふふ、前回十分にお世話になっちゃった珠ね。今度は私があの時のお礼をしてあげるわね」
アルベールは少し離れた所で2人を見守るが、今このような状況で戦い合わなくてもよいのではないかと疑問を持つが、今のあの2人に水を差す真似は出来ないと周囲にだけ警戒を払いつつ静観を決め込む。
先に動き出したのはリリアンだった。
女神の大鎌を手中で回転させ腰辺りに構え刃はリリアンの身に隠れる。
「わかりやすい構えだな。だが、お前はそんな短絡的に動く奴じゃないんだろ?」
「ふふ、どうかしらねぇ」
この構えから放たれるは横一文字に切り裂く一撃だが、自由気ままなその性格の彼女のことだ何か変化を付けた攻撃をしてくるのではないかと対峙するクルトと静観するアルベールは思考する。
だが、いくら手軽に扱うリリアンでもその大きさと重量を持つ大鎌に変則的な攻撃は不向きであるのもまた事実だ。
もし、横に薙ぐ一撃がフェイクで他の場所からの一撃が本命だった場合に、一度大鎌の動きを停止させ構え直さねばならない。そこから生まれる隙をクルトが見逃さないのはリリアン自身理解はしているだろう。
そして何よりクルトの周囲には厄介な因果創神器フュング オブリリアが浮遊しているのだ。接近での攻撃事態がリリアンの敗北という色を濃くしている。
それを知った上での一直線に駆けるリリアン。
その裏を感じ取れる微笑みにクルトは自分の周囲を漂う珠をリリアン目掛け掃射する。
「策があるのならそれを叩き潰せばいいだけの事だ」
リリアン目掛け迫る5つの珠を大鎌で打ち払うかのように振るう。
「なに?」
フュング・オブリリアは何かに触れた時に効力を発揮する因果創神器。だが、大鎌に打ち払われたにも関わらず何の変化も見せずただ弾かれ主人との距離が大いに開いてしまった為にその全てが
地面に落下し転がる。
これで、クルトの周りを守るかのように浮かんでいた邪魔な代物は消え失せ、残るは常世の術式による目障りな防御だが、それすらも問題が無いと言うようにリリアンは女神の大鎌を構え直し再び距離を詰める。
「ならば……」
因果創神器の件に関して驚きと不可解さは残るが、今はそんな事に期を取られている場合ではないと一旦忘れ、先程展開した不可視無情の理すらも心許無く感じ、攻勢に出るべく数ある術式の中から最適なものを即座に選び抜く。
「カウンテルト:カルル ウェイダン(武器殺しの刃)」
クルトの手には魔方陣から引き抜き構えられた一本の槍。
その形状は矛先は錆色で螺旋状にうねり、全長は2mほどの代物だった。
すでに加速し地を駆けるリリアンにとってはそんな槍一本出現させた程度で停滞することなく、クルトが槍を構えるのならソレごと両断してやろうと大鎌を振りかぶる。
こんばんは上月です。
今回はクルトとリリアンの再びの戦闘です。
次回もこの続きを書いていくのですが、最近仕事の方が忙しく核時間が短くなってきているので次回は6月30日の木曜21時~22時に投稿しますので、是非ともよろしくお願いします




