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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
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対峙する邪神という存在

 クルトとアルベールは既に何時間も広大な聖域という未知なる場所を探索していた。

 これだけ探索してわかったことは何1つない。いや、ヒントは周囲を見渡せば無数にあるのだが、クルトの知識を用いても壁や柱に描かれた絵や文字が理解できないのだ。

 それでも2人は諦めず、何かしらの手がかりを掴もうと必死になっていた。

「クルトよ、この場所はあらかた探し終えたのではないか?」

「そうだね。じゃあ次の場所に移ろうか」

 クルトに続きアルベールが歩を進めようとした瞬間に2人を異変が襲う。

「!?」

 全く同じ反応。

 2人は互いに視線を合わせ頷き合い、魔力を全身に行き渡らせる。

「どうやら、この場所に俺達以外の誰かがいるみたいだな」

「うむ、それに丁寧にも我らに対して敵意を剥いているとなれば一戦交えなくてはならぬかもしれぬな」

 丁度正面の回廊の奥からそれは感じられた。

 2人の魔王は地を蹴り長い回廊を駆け抜ける。

「ふふ、アルベール。もっと早く走れないのか?」

 挑発するようにクルトが笑みを浮かべながら後ろにを走る銀色の魔王に問いかける。

「逆に問わせてもらうが、何故そのような緩やかな長いローブを纏ってそこまで早く走れるのだ?」

 クルトがスッポリと纏っているローブはクルトのくるぶしくらいまでの長さにも関わらず、それを踏んづけることもなく颯爽と地を走っていた。

「男が細かいことは気にするなよ」

「むむ……」

 そこか納得出来ない様子のアルベールから更に距離を開けて走っていると、1つの大きな空間に出た。

「ここは……」

 クルトが室内を早速見渡すと、ここが本当の最深部なのだという事が分かった。

 だが、この空間に先程クルトとアルベールに敵意をぶつけたと思しき存在の影すら見受けられない。

「ふむ、ここが最終地点というわけか。だが、先程の敵意の存在の姿が見えぬな」

 遅れてやってきたアルベールも周囲に警戒を張り詰めながらもクルトと同じように周囲を見渡し自分とクルト以外に誰もいないこの空間に疑問を持つ。

「アルベール1つ聞くけど、あの敵意を向けてきた奴の実力はどれほどだと思う?」

「ふむ……」

 一泊の間を置く。

「我ら2人の実力を掛け合わせても到底たどり着けぬ程であろうな」

「認めたくはないけどね」

「うん?」

 視界の端に映った何かにクルトとアルベールは顔を向け言葉を失う。

 部屋の奥の壁に背を向ける者がいた。

 髪は長く、この世界では見たこともない服装をしていた。その存在はゆっくりとこちらへと振り返るとよく見知った顔をした人物がそこにいた。

「クリスティア?」

 反射的に漏れる名。

 だが、よく知る少女とまったく同じ顔を持つが天地の差ほどの違いがあった。まず初めに表情が無い。まるで人形のように一切の色を滲ませない冷めた瞳はあの太陽のように陽気で周囲を和ませる彼女とは正反対で、何より彼女はアルベール達に敵意なんて向けやしないし、向けたとしても初戦は人間の放つ程度のものでしかない。

 今、目の前に立つクリスティアと同じ顔を持つ者からは両魔王から見ても強大な力を有していることが分かる。

「まさか、アイツが邪神クリスティアなのか?」

「常世の時代の幕を引いた張本人か……」

 ただ視線を交えているだけでも身体中の穴という穴から汗が滲み出し、口内は乾き、心拍数も跳ね上がる。これほどまでの存在を彼等は今までに対峙したことがないと身体全体に緊張が走る。

 邪神は此方を観察するようにただ呆然としている。下手に動けば命の保証は無いとアルベールに目配せをし、それに頷きアルベールも魔力を霧散させる。

 正直に言って、魔力を霧散させるのは自殺行為に等しかったが今この場ではこうするしかないと自身の深いところでそう思い、その判断に身を任せた。

「世界に蔓延る有象無象を排斥し……世界の均衡を保たねばならない。その為にも不要な世界はゼロに返す必要がある」

 ゆっくりとハッキリと一言一言から強い意思を感じる。

 その声は無機質で淡々と抑揚が無いが確かにクリスティアと同じ声をしていた。

 どうやらクリスティアが言っていた夢の中で自分と同じ声がする存在が囁きかけてくるというのは目の前のこの存在で間違いは無いと確信する。

「1つ訪ねてもいいかな? お前は一体何者でこれから何を成そうというのかな?」

 クルトの質問に取り合う気がなく独り言を延々とつぶやくだけだった。まるで、此方を認識していないかのように。

「クルト、まさかとは思うが、アレは本体ではないのではないか?」

「だろうね。だけど、無意識の霊体といった方がいいのかな? それでもあんな残骸でも俺達を殺そうと思えば殺せる力を持っているんだから恐ろしいものだね」

 あくまでもニコやかに答えるクルトに、アルベールは再び邪神へと視線を向ける。

「貴方たちも不要の存在。世界は等しくゼロへと返らなければならない」

 そこで初めてクリスティアが二人を意識で捉え明確な排斥の意志をその瞳に宿した事を2人は見逃さず、再び魔力を放出する。

「無意味に足掻けば苦しむだけ、私に全てを委ね世界と共にゼロへと返れ」

 アルベールとクルトが詠唱をするより早く、かつゆったりとした動作で手を突き出し、そこから純白の何かが広がり聖域ごと飲み込んでいった。

こんばんは、上月です。

最近暑いですね……本当に日中は暑くて、外には出るのが億劫です。

次回は今回の続きを書いていきます。

次の投稿日なのですが、仕事が少し忙しくなってきてしまっているので6月の24日の金曜に投稿させていただきますので、どうかよろしくお願いします。

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