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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
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クリスティアの日記

「あ~暇なんだけどなぁ、誰かが何か面白いことでもしてくれないかな~」

 クリスティアやシオン。おまけにアルベールやクルトまでもが外出してしまい、今中央教会に滞在しているのはいつものメンバーであるシラーとアズデイル。そして、リリアンとヘル。シラーは城下でバイトに精を出し、アズデイルはこの国の魔術研究所に篭もり魔術師達を総動員して何やら日夜研究に励んでいる。

リリアンは気分屋なので現れたり消えたりと神出鬼没でヘルは室内で菜園を始めたらしくその絵面を遠目から眺めたがとてもシュールで話しかけるのを躊躇われた。

 そして、エリーザは毎日やることがなくだらだらと怠惰な日々を過ごしていた。

「仕方ないか、ここはステラとお茶でもしてプチ女子会を開くとしようかな」

 決まれば即行動。これがエリーザの座右の銘である。それに習い早速ステラの部屋を訪れた。

「ステラちゃん、暇だから女子会しよー」

 ノックもせずに扉を開け放てば丁度ソファーに腰掛けケーキを戴いているステラの姿。

「なんども言いましたけどエリーザ、人の部屋に入るときはノックをするものだといつも言っているでしょ?」

「まぁまぁ、お堅い事は無しにしてお茶会しようよ!」

「はぁ……まぁ、いいですよ。丁度先程城下で買ってきたケーキがありますしね」

「ステラちゃん気が利くぅ~」

 エリーザはステラの対面に座り、ステラはエリーザの分の紅茶とケーキを用意している。

 この2人は妙に息が合い、まるで姉妹のようだと人々は言う。

「それでエリーザ、今日のお題は何にするのかしら?」

「う~ん、じゃあこの国にいる男性のカッコイイランキングでもつけちゃおう」

 エリーザのお題は正に女性好みしそうなモノで、いくら騎士であるステラもやはり女性。そういう話しは嫌いではなかった。

「なかなか面白そうね。いいわよ、じゃあまずは誰からにしますか?」

「そうだね~まず手始めに四十字騎士団のジークリート、グレイ、シン君からいってみよー」

 しばらく女性2人のトークな長く続き、ステラはこれから用があるという事でエリーザは致し方なく退室し次なる暇つぶしを探しに城内を歩き回る。

 城下に行けば賑やかで、色んな店もあって退屈はしないのだろうが1人で城から出るのがめんどくさく、何とか城内で面白いモノはないかと探索する。

 行き交う使用人や聖騎士達と挨拶を交わしつつ辿り着いたのが今は留守にしているこの国最高権力者である中央教会聖女クリスティア・ロート・アルケティアの部屋だった。

「へへへ、覗いちゃおうかな~」

 鍵が掛かっているだろうと分かりきっていたが、取り敢えず暇なのでノブに手を掛け捻るとすんなりと扉が開いた。

「……」

 最高権力者の部屋にもかかわらず鍵もかけずに長期不在なのは流石に無用心ではないかとエリーザの表情が引きつるが、これはチャンスと好奇心をむき出しにした猫のように瞳を輝かせ周囲に

は誰もいないことを確認し扉の隙間に小さな身体を滑り込ませて扉を閉じる。

 室内は他の部屋よりも広く、窓から見える眺めは正面に広がる城下そしてそれらを守り覆う城壁とどの国でも伺える光景だった。

「さてさて、聖女様のお部屋を物色しちゃおっかな」

 エリーザの悪戯な笑みを浮かべつつクローゼットを手始めに開けると、以外にも平民の女の子が着ていそうな普通の洋服が並んでいた。

 これはお忍びで城下に遊びに出かけるときに着用しているものだが、民はクリスティアのバレバレな変装に気づいてはいるが、あえて気づかぬフリをして普通の女の子と同様に扱ってくれている。

 クリスティアの部屋にはそれほど物が多く無くあまり見るものがなかったので、引き出しを一段ずつ開けていくと、何やら秘密の匂いがしそうな一冊の手帳を発見し、それを躊躇いもなしに開き文を目で追っていく。

「……」

 最初は普通の日記だった。父と母の事、今日は何をしただのアルベールという友人が出来たなど。至って普通の内容に少々飽きてきてページを捲る速度も早くなってきた。

そして空白。

「これで終わりかぁ~、もっとすごい事が書いてあると思ったのにな」

 色々と期待していたが興味をそそる内容が無かったことに落胆の色をその瞳に宿した直後にしばらく続いた空白のページに続きの文章が書かれている事に気がつき、先程のように食い入るような視線ではなく流し読みするように文を追っていくとその内容に固唾を飲み込む。

「これ……どういう事なの!?」

 その文章は奇っ怪な箇所が多く見受けられた。

 先程までの文章は丁寧な字で綴られていたにも関わらず、今目にしている字体は時間が無く焦り殴り書きをしたかのように歪んでいた。

 その内容は怖い、助けて、どうにかなりそう、などと普通の精神状態では書かない言葉が繰り返し綴られていて、その気味の悪さにエリーザはこのままこの日記を見なかったことにしようかとも思ったが、どうしても気になってしまい続きを読んでいく。

 これは好奇心で見ているのではなく、クリスティアを心配し何に怯えているのかを探るためだ。



 また、あの夢です。

 次第に私の意識は彼女と同調しているのがわかります。

 クルトさんに相談し何とか打開策を考えてくれるとは言っていましたが、多分……無理だと思います。

 とうとう、私が皆を世界を滅ぼす夢を見ました。皆私を含め世界を救うために立ち向かってくるのですが、私は冷たい表情のまま

彼等を殺していく。

 み   ん   な   無に  なれ



 最後の一文だけは丁寧に書かれていた。

 これは本当にクリスティアが書いたものなのだろうかと疑いたくなる内容にエリーザは呼吸をすることさえ忘れ、皮膚には汗が滲んでいた。

 背筋に寒気が走り、日記を急ぎ元あった場所に置き部屋を出る。


申し訳ありません。

本来は昨日の投稿だったのですが、外出していて投稿できませんでした。

 次回は6月21日の火曜日に投稿します。

次の話しはアルベールの視点となりますので、よろしくお願いします。

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