表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
52/90

邪神の意志

「何だこれは……」

 その書物に書かれた内容に懸念の声を漏らす。

 どのページにも常世の神々について一切記されておらず、その代わりに眼を疑いたくなるような事が書かれていた。

「宇宙に蔓延る無数の世界の浄化と一切の汚れが存在しない新世界の創造?」

 まったくもって理解不能な内容に頭を悩ませる。

 そもそも無数の世界とは一体どういう事なのだろうかと思考していると、つい先程アルベールの目の前に現れた男を思い出す。

 名はパラノイアと言い、見たことのない系統の術式を行使してはこの世界が滅ぶと予言した男。

 彼こそがこの書物に書かれているよう無数に蔓延る世界の内の1つから来たと仮定すれば、なんとなくだが、パラノイアの言った事が少々理解できた。

 この世界には干渉しない。この世界という事は他にも世界はあるということではないだろうか。

 アルベールは再び書物に視線を落とし、文字を辿ってその翡翠色の瞳を動かす。

「純白。何者にも染まらぬ意志は世界を沈黙させる。だが、そんな彼女の意志は理を司る新生した神によって━━━━」

 そこで途切れていた。

「これは、予言なのか?」

 クリスティアという愛しき少女と同じ名を持つ邪神は……。

「ウグッ!?」

 脳を電撃が走ったかのような激痛が襲いかかり、頭を両の手で抱え込みその場で足を折りうずくまり、耳鳴りと眩暈が酷く苦悶の表情を浮かべる、 

 しばらく、続いた頭痛も次第に収まり始めて、ようやく立ち上がることが出来たがそこには既に書物の姿はなかった。

「どういう事だ」

 周囲を見回しても禍々しい気配を放っていた書物は見当たらず、何も無い部屋にこれ以上の長居は不要だと判断し部屋を出て言われた通りに施錠し、来た時と同じように螺旋階段を登って、ようやく人の気配で満ちた空間に出る。

「取り敢えず、鍵を返して書物を紛失してしまった事を報告せねばな」

 テキトウな司書に声を掛け、館長を連れてきてもらったのだが、そこでもまたアルベールは信じられないといったような表情を浮かべる。

「貴公が館長か?」

「はい、私が当館長のロハイエ・ウェルダーと申します。えっと、アルベール様でよろしかったでしょうか? 私にご用とは」

 そこには先程の老人ではなく、メガネを書けた気の良さそうな青年が立っていた。

「1つ……いや、2つ聞きたいことがあるのだが。この図書館に館長は2人いるのか?」

 アルベールの質問に困惑した表情を浮かべつつも首を横に振る。

「いえ、館長は私だけですが」

「そうか……すまない、変なことを聞いたな。もう1つの質問なのだが……」

 アルベールは先程螺旋階段に通じる扉の方へ振り返るが、やはりなと思い館長のロハイエには何でもないと告げ図書館を出る。

「幻術の類……というわけではなさそうだな」

 螺旋階段があった扉は変哲もない壁になっていた。

「あの書物に記されていた様にこの世界は本当に滅んでしまうのか?」

 この日常が壊れる。

 最愛の仲間や友を失ってしまう。

「それだけは認められぬな」

 どうすればいいのだろうか。パラノイアは世界を救いたければクリスティアを殺せと言っていたが、アルベールはその手段を選ぶことはないだろう。ならば、その神を全力を持って止めるしか方法はない。だが、その未知数の力を持つ神を相手に勝てるのだろうか。

 そもそも全力と言ってもアルベールの全力は世界を銀に染め上げる前提の能力だ。そうなっては元も子もない結果となってしまう。

「うむ、困った」

 解決出来ぬ悩みを抱いたまま銀髪の青年は城下の人々に紛れながら一度城に戻る。



 その頃クルトは聖域に足を運んでいた。

「あの時以来かな」

 魔王序列第9位ロンベルト・イシュタスが反旗を翻し、クルトの未来創造の能力によって永遠の眠りにつかされた場所。

「だいたい1年と3ヶ月くらいか?」

 何1つ物音のしない神聖な空間に黄金色の双眸を開きゆっくりとその奥の間へと歩を進めていた。

 そもそも、この聖域自体が特異な場所だった。少なくてもクルトがこの世界で眼を覚ました時には既に存在し、人を遠ざけるように荒波と渦潮で守られていた。

 そして、ようやく最奥に辿り付き、その遺跡のような壁画をまじまじとその黄金色の瞳で見つめる。書いてある内容はまったく理解できない。その字体はこの世界のどの国にも属さない物なのだが、その文章を読んでいると無性に胸元がざわつくのを感じていた。

「さて、俺はどうするべきかな」

 瞳を閉じにこやかに微笑む魔王の姿と雰囲気は不気味に揺らぎ、世界の未来を見極めようとするが、描かれる未来の途中で何者かの手によって阻まれる。

「やっぱり視れないか……」

 溜息を溢しては眉間に皺を寄せる。

 そう、つい最近からだ。未来を視たり創造しようとすれば何者かの強い意志によって阻まれてしまうのだ。

 これが邪神のモノだとすると、その存在は魔王クルトの力を遥かに上回る実力を有していることになる。

「俺達では勝てないのか? まぁ、諦めてやるつもりはないんだけどな。さて、もう少し探ってみるとするか」

 クルトは再び聖域を歩き始め、何かヒントになるものや打開策となりうるモノがないかを探し始める。 


こんばんは、

次回はクリスティアとアルベール視点で書いていきますので、次の投稿は6月6日くらいになりますので、またよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ