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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
銀聖の魔王編
38/90

終結する戦争、進むべき世界

 クルトの因果創神器のオブリリア(五行陰陽の珠)の1つである重力を司る漆黒の珠は宙で鳴動し、刻一刻とリリアンに加重を加えていく。

 完全に腹這いとなったリリアンの肉体は押しつぶされ骨は軋んでいく。

「うぐっ……ちょっと、お姉さん的には重い愛かなぁ?」

「リリアン、強がりは体に良くないんじゃないか? いい加減にしないとそろそろ骨が砕けるぞ」

「あらぁ~私の心配ッ……ゲホッ、してくれるのかしら? ふふ、嬉しいわね」

 降参の意思は見受けられない。降参するくらいなら死んだほうがマシだというようにクルトを挑発する。

「リリアンお前にはホント手を焼かされるよ」

 クルトは黄金の双眸を細め、息を吐き出す。

 その様子をリリアンは微笑みつつ咳き込みながらも視線はクルトから外さない。

「意思を持て女神の大鎌」

 どのような存在にも必ずしも油断を産んでしまう瞬間は存在する。

 それは、勝利を確信した時。今クルトは腹這いに押しつぶされようとするリリアン相手に勝利を確信し注意力が削がれていた。だから、リリアンの言葉を理解するのに僅かばかりの遅れを取り、主人の言葉に応え女神の大鎌は独りでに活動し背後よりクルトの首を刈ろうと妖艶な輝きを放つ刃が空を切り迫る。

「クルトッ!」

 アルベールが叫ぶが、誰もが彼女たちから遠すぎた。

 名を呼ばれたクルトはゆっくりと振り返り、その黄金の瞳は首に触れる刃を視界に入れる。

 もう手遅れだと誰もが思い、顔を逸らす。だが、いつまでたっても首の落ちる音はせず静寂が続いている。

「どう……して?」

 リリアンの震えるよ声音に一同は固く瞑った眼を開く。

 一体どうしてだろうか、女神の大鎌はクルトの首を落とせずに、そのか細い首筋に触れるか触れないかというギリギリの距離で停滞している。

「動きなさいッ! 今すぐにその首を切り落として私に勝利をもたらしなさいッ」

 何度命じようとも大鎌は活動することなく、宙で停滞しクルトの手によって握られる。

「未来を作り上げたの?」

「いや、俺はお前に未来創造の力は使わないって言っただろ。まぁ、未来視の力は使ったから全ての結末は分かっていたんだけどな」

 それでも、納得がいかないリリアンは奥歯を強く噛み締め恨めしそうにクルトを睨み上げる。そんな彼女の姿をみてもクルトはニコニコと瞳を細めリリアンを見下ろしている。

これが力の差であると理解させるかのように。

「アガッ!?」

 重力の荷重に耐えられず、何かが折れる音がしリリアンの口から多量の血液が溢れ出す。

「骨が肺にでも刺さったか?」

 それでもリリアンを押しつぶそうと荷重は続き、流石にこれ以上やればいくら魔王であっても命の保証は出来ないと判断し、アルベールがクルトの肩に手を乗せ、今すぐに重力を解除するよう説得してみるが、クルトは首を振る。

「躾のなっていない犬にはちゃんと分からせなきゃダメだろ。今ここで許せばコイツの事だ直ぐに手のひらを返してくる。そう何度も頻繁に生命を狙われるのも面倒だからな」

 目を白黒させ、痛みと苦しみで頭はパニックを引き起こし、その瞳から涙を溢れ出させる。

 もう嫌だ。苦しい。誰か助けてとその瞳と涙は訴えているように思えたクルトは致し方なく重力を解き、痙攣を引き起こすリリアンにそっと近寄り、

懐から先程アルベールたちに渡したのと同じ治癒をもたらす因果創神器をリリアンに使用する。光に包まれ傷はみるみるうちに修復していき、苦悶の表情は安らかな寝顔へと変貌する。

「これで少しは懲りてくれればいいんだけどな」

 苦笑するクルトにアルベールは深い溜息を吐く。

「全く、クルト。本気でリリアンを殺すのではないかと思ったではないか」

「ふふふ、安心しろリリアンも仲間だ。裏切らない限り殺すつもりはない」

 裏切りという言葉でアルベールの脳裏には悲惨な最期を遂げたかつての仲間ロンベルトの顔が浮かび上がった。

 もし、彼は野心を剥き出しにせず今も魔王として健在していたなら彼はどちら側についていたのだろうかと無意味な考えをしつつも、未だに地べたで眠りこけているエリーザ達をシオンやシラーたちで分担し担ぎ、この戦争を始めさせた張本人であるヴァナトリア帝国皇帝ネクロ・ヨグ・ヴァナトリアも最早抵抗の意思を見せることなく四十字騎士団に従い連行されていく。

 

 ようやく、この大陸全土を巻き込んだ戦争に幕が降ろされたのだ。これで平和な日常を歩むことができるのだと誰もが確信していた。

 だが、クルトでさえ見えない確約された世界の運命はゆっくりと誰にも知れずに流れていく。

 ネクロ皇帝に潜み力を与えた存在の影が世界を侵し始める。

どうもこんばんは。

次から物語はクライマックスに突入していきます。

ようやく一番書きたかった場所なので、キーボードを打つ指にも力が入るというものです。

 次回は4月の23日に投稿しますのでどうかよろしくお願いします

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