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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
銀聖の魔王編
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銀と未来の決着、クルトの真実

 開かれた金色の双眸は優しく目の前に立つ翡翠色の双眸をもつ男を見つめていた。

 静かに立つ銀色の青年もまた、何処か楽しげな色を瞳に宿している。

「お前の未来は確約された。この戦いでお前は……死ぬ」

「なら、運命というものに抗ってみようか」

 アルベールは口角を少し持ち上げ笑う。それに釣られクルトも自然と表情を変える。

 楽しいと感じるこの状況をクルトは終わって欲しくない。抗えるものなら抗い、そして運命を切り開いて見せろと心の底で思う。

 誰の邪魔も入らぬ結界の中で今2人の魔王は真に互と向き合っていた。

 あえて死ぬまでの時間は告げない。そんなつまらない演出は要らないのだ。

 だが、結界の外で扉が大きく開く音がし外で戦っていたシン達の動きも止まる。だがクルトはそちらに視線を向けることはしなかった。

 それはシラーとシオン。クルトの未来創造を行った時に見ていたからだ。だが、アルベールはチラリと一瞬だけ眼を向け、シラーが無事だということから勝者がどちらかだったかは明らかであった。

 シオンはバツが悪そうにクルトと視線を合わそうとしない。

「シオン、お前負けたのか?」

 シオンに聞こえるように少しだけ声を大きくして呼びかける。

「うっせー、テメェはテメェの戦いに集中していやがれ」

 言葉はいつもどおりなのだが、明らかに彼の纏っている雰囲気が違っていた事に気付き、感心の意を表すように軽く頷いた。

「良かったなアルベール。シラーが勝ったみたいじゃないか」

「うむ、我はシラーが勝つと信じていた。だから別段驚きはないが、彼の成長は我が事のように嬉しく思う」

 褒められたシラーは気恥かしさのあまり、視線を別の方に向け、戦いの邪魔にならないように2人は少し離れた場所で戦いを見守る。

「全くよぉ……今でも信じられねぇよ。俺がシラーお前に負けたなんてな」

「再戦はいつでも受けてやるぜシオン」

「そんときは、地べたに這い蹲らせてやるから、覚悟しとけ」

「ハッ……面白れぇ、やれるもんならやってみろよ」

 シオン達の会話もそこそこに、アルベールは今一度渦中の矢をクルトに向け放つ。

 もう当たらないといったクルトは一歩横にズレて回避する。

「それは一直線にしか射れない代物だ。射るその瞬間を見逃さなければ回避は容易だな」

「ふむ……あまり良い物ではないのだ」

 アルベールは背に銀色の翼を形成させ上空に舞い飛び、銀の槍を無数に展開させクルト目掛け射出する。

「その系統の技は通用しないのは知っているだろ? カウンテルト:アーク リーヴン(解現:黒染めの魔)」

 降りしきる銀の槍は何十にも混じりあった黒い模様で形成された魔法陣に呑まれる。

 次にくる術式を読んでいたアルベールは銀の粒子を自身の周囲に散りばめる。

「カウンテルト:アーク ブリスト(黒染めの鏡)」

 予想通りの行動にアルベールは薄く笑い、黒く変色した槍は銀の粒子に触れ銀の粒子に物質変換される。

 眩く煌く粒子は数を増やしていく。

「アルベール、お前は何を考えている? こんな攻防で時間を無為にしていいのか?」

「ふむ、これが無為ではないと言ったらどうする?」

「なに?」

 次々と銀の槍を射出していき、クルトの魔法陣に呑まれ黒と化した槍を返し銀粒子へと姿を変える。

 この意味もないと思える行動を繰り返し、やがては一面は銀粒子で満ち溢れていた。

「だから……この行為にどんな意味が? まさか、その粒子を俺に触れさせて俺の身体すらも銀粒子に物質変換させようなんて考えなら甘いぞ」

「その程度でクルト、貴殿を倒せるとは微塵も思っていない。これは我が魔力の代替として使うためのものだ」

 魔力の代替という言葉に眉を潜めるクルトに、準備は整ったと言わんばかりに右手を天に掲げる。

「これが、我の持ちうる最強の術式だ!! 我が望むは地平線を満たす銀の世界。我が忌むは浮上の色。常世に存在する全を無謬の摂理にて管理すれば我が魂は返り咲くだろう━━━━リア エーベン ズィーストベルン(銀聖の女神の微笑み)」

 天空に描かれた銀の魔方陣。だがそれはクルトの描いた魔法陣同様に複雑な模様で、幾重にも重ねられたように構成されていた。

 その魔法陣から発せられる膨大な魔力量は他の魔王が有するそれを遥かに上回っていた。

 先程言っていたアルベールの言葉を今初めて理解することができた。

「なるほど、これほどの魔力量だ。いくらお前でも1回の術式にこれほどの魔力を注げばただでは済まない。だから、銀粒子を増やす真似をして。それらを全て再度魔力変換し、自身が使用する魔力を減らしたというわけか」

「うむ。我が魔力を使ってんも問題はないのだが、少々疲労してしまうのでな。そうなってはクルト、貴殿を倒せる確率が目に見えて下がってしまうのでな。この光景も貴殿が描いた未来に含まれているのか?」

「ふふふ、どうだろうな」

 ようやく展開した魔法陣から銀色の光がゆっくりと降り注ぎ始める。

 高慢な詠唱から伺えるように、その術式は一切の例外もなく世界を銀に染め上げる究極の物質変換型術式。

 それは、世界に蔓延る生命も瞬時に飲み込み銀と化す。

 流石のクルトもこのような術式を受ければ間違いなく、その魂の一片までも銀に染め上げられ、無痛なる死を迎えるだろう。

「カウンテルト:アーク リーブン(解現:黒染めの魔)」

 自身の上空に展開する黒の魔方陣。

 銀と黒。染まる事を嫌う高貴にして潔癖の色同士がぶつかり合う。だが、絶対優勢型である物質変換の術式は黒の術式を飲み魔力の塊である魔法陣は即座に銀の粒子となり霧散する。

 その光景をみて諦めがついたクルトは悔いのない笑みを浮かべ、自身を包み込もうとする銀のヴェールに身を任せようと両手を大きく広げ瞳を閉じる。

「……」

 瞳を閉じてどれくらいの時間が経過しただろうか。一向に死という感覚はクルトに訪れることがない。

 もしかしたら、もう既に自身の身体は銀化し生命活動を止めていて、魂となって死後の世界を浮遊しているのかもしれないと思ったが、耳に聞こえるのは刃を振り回す音と、狂気に満ちた高笑い。

 ゆっくりと金色の瞳を開ければ、見慣れた王座の間が視界に映る。

 銀世界に塗り替える術式は何処を見渡してもその姿や痕跡は無かった。

「なに?」

 銀色の両翼をはためかせ地上にゆっくりと舞い降りたアルベールの手には銀で形成したと思しき、剣が握られている。

「どういう事だクルト。貴殿は未来創造の術式を使用したのではなかったのか? あのまま我が術式を継続していたら貴殿は今頃銀の像に姿を変えていたところだぞ」

「未来創造か……あんな術式は、この高貴で貴重な戦いには不要だと思ってね、最初から使用なんてしていなかったんだよ」

「ハッタリだったという事か」

「そうそう。生き物ってのはね自身が死に直面した時大いに力を発揮するものだからね、本気になったお前と戦ってみたかったんだよ。だけど、お前は死をどうとも思っていないようだな」

 口調に若干の怒りの色を滲ませるクルトにアルベールは首を振るう。

「死は確かに怖い。だが、我は死を恐れていては守りたいものも守れないと思い心の奥底に押しやって戦いに挑んだだけだ。それにまだ決着はついてはいない」

 銀色の剣先をクルトに向ける。

「ははは、俺と剣術で勝負か。俺もお前も剣の腕は素人だが、逆にそれは面白いかもしれないな」

 クルトも右手に握られた錆び付いた刺突剣をアルベールの心臓部に向けたところで、疑問が湧いた。

「おいアルベール。そもそも霊体のお前を貫くことなんて出来ないじゃないか」

「安心しろ。これは殺し合いじゃない。今我の体には魔導膜を張っている。貴殿が我が急所を付けば我の負けだ」

 そのルールにクルトは了解という意思をのせ頷き、左半身を後方に引きクルトの身体は目の前に立つアルベールに対して垂直となり、右手に持った刺突剣を構える。

 アルベールは身を少々屈め、剣先を地面に触れるか触れないかのギリギリの所に構え、地を駆ける。

「お前はバカ正直すぎるぞアルベール!!」

 クルト目掛け複雑な動きをする訳でもなく、ただ一直線に猪のように立ち向かっていく。

「決闘に小細工や工作など不要だ。我は全霊を持って貴殿に一撃を加える」

 一歩クルトの間合いに踏み込んだ瞬間に刺突剣を閃かせる。

 錆色の軌道を読み、アルベールは持った剣を振り上げ、刺突の軌道を上空に逸らす。

「んなっ!?」

 2本の剣が頭上部で交差し、アルベールの剣がさびた刀身を沿って滑るように振り下ろされる。

 咄嗟のことで身動きを取ることができないクルトは迫る剣を目で追うことしかできず、銀の軌跡はクルトを垂直に振り下ろされた。

「うむ、我の勝ちだ」

 身に痛みは無い。

 だが、前面の衣服のみを切られ肌が露わになる。

「ば……馬鹿な!?」

 勝者のアルベールが驚愕の声をあげる。

 観戦していたシオンとシラーは惚けたように口を半開きにし言葉を失い、いつのまにか外部で決着が着いていたシン達男性陣の視線を釘付けにした。

「おいおい、衣服がダメになったじゃないかアルベール」

 切られた衣服を抱え込み、困ったように笑うクルトをアルベールは何て声を掛けていいのか分からずにたじろいでしまう。

「いや……その、貴殿、いや違う。クルトお前は女……だったのか?」

「ああそうだけど、何か問題でも?」

 女性だが何かといったように首を傾げるクルトに、アルベールは即座に我にかえり、左肩に装着しているマントを外し肌が露わになったクルトを包む。

「その……すまなかった」

「うん? 何でお前が謝るんだ。アルベールお前は勝者なんだからもっと堂々としたらどうだ?」

「それは、そうなのだが」

 クルトが女性だと分かり、どう接していいか分からずに視線を周囲に彷徨わせていると、王の間の扉がまた開く。

投稿日が伸びてしまい申し訳ありませんでした。

次回はシン達とネクロの戦いの続きから決着を書いていきます。

投稿日は4月6日~7日に投稿しますのでよろしくお願いします

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