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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
銀聖の魔王編
30/90

銀聖の影法師と絶対の預言者、銀聖と未来

 王座の間にて見上げる側と見下す側。

 室内はどの国でも似たような造りで左右等間隔に柱が並び中央には紅いカーペットが一直線に敷かれていた。

 室内の奥には一段一段が浅い階段があり登りきった場所に玉座がある。

 そして、その席に腰を深くおろし、長髪を垂らし背筋の凍るような笑みを浮かべる男と、その隣に控えるように立つ人物。

「やあ、アルベール。少々遅かったね」

 瞳を閉じた人物が静かに、そして待ち遠しいといった感情の色を乗せた声がアルベールの上空より投げかけられる。

「ふむ、クルトか。貴公に1つ尋ねるが、何故人間と行動を共にしている?」

 翡翠色の双眸は力強く同胞へ向けられる。

「おいおい、そんな睨むなよ。人間といる理由だって? お前が人間と一緒に過ごしているに理由があるか?」

「我は人という種を愛している。だが貴公は違うだろう? 人を餌か何かにしか見ていない貴公が何故に人間といるのか聞いているのだ」

「全く……アルベールお前には少々の冗談も通じぬ堅物なんだな。そうだね、俺がコイツと居る理由は利害の一致によるものだよ」

 隣に座る男を一瞥し、その隠すことのないダダ漏れ状態の狂気を確認し再びクルトへ視線を戻す。

 クルトは可笑しそうに口元に手を充てがい笑っていた。

「何がそこまで面白いんだ?」

「ふふ、俺が笑っている理由はもう少しで分かるよ」

 勿体ぶるような口ぶりに先程まで黙っていたシン達が声をあげる。

「やっと会えたか、ヴァナトリア帝国の暗黒帝よ。俺は咎を嘆くものシン・リードハルト。この背に携えし光神剣・破帝と共に貴様の咎も俺が背負ってやる」

 背の大剣の柄を掴むなり振り抜き、腰を屈め剣先を背面に向けた構えを取る。この構えにより剣の中程から先端にかけて体躯に隠れ、相手は得物の正確な長さを測ることが出来ない。

「大陸の為、人の安息の為、そして何より聖女様の笑顔の為に俺は剣を抜き、障害となる物を力でねじ伏せる」

 ジークリートも同じように大剣を抜き、自身の正中線に合わせて構える。その切っ先は敵であるナコト皇帝の喉元に合わせられている。

「俺だって……え~と、あれだ。うん、世界平和の為に悪を切る」

 何かかっこいい決め台詞を用意していなかったグレイは即興で考え、取り敢えず皆と同じように大剣を抜き肩に担ぐ。

 今にして思えば、連れてきた人間は全員が大剣という攻撃破壊特化して振り回した後に隙が生じる者達ばかりだった。

「クククククク……あっははははははははは、咎・安寧・平和か。実に青臭い言葉を吐く精鋭の騎士だなァ」

 玉座に着いていたネクロは室内に反響するほどの高笑いを上げ、勢いよく立ち上がる。

 その時に髪が流れ、露わになったその空洞の右目からは背に冷たく震えさせる何かがあり、それを人間であるシン達も瞬時に感じ取った。

「魔眼……ではないな。ネクロよ貴様いったい何に手を出した。話しに聞けば貴公はかつて中央教会の聖王に並ぶほど民に慕われていた善王だと聞いていたが?」

「善王だと? 俺はそんなつまらぬ器に収まり切る男ではないッ! 俺はやがて東大陸だけではなく全大陸を手中に収め、延々と闘争を繰り広げる世界を作り上げるのだ。此度の戦争は、その偉大なる野望の前座でしかない」

 悠々と語る狂王ネクロとそれを静聴するクルト。二人の王は互いに獲物を見定め、階段を一段一段と降りる。

「ネクロ、お前には人間の相手をしてもらうがいいな?」

「あぁ、任せろよ魔王クルト。お前達は魔王同士、俺達は人間同士で歓喜に震える闘争を死合おうではないかっ!!」

 両の手を大きく広げ、小刻みに身体を震わせながら喉を鳴らし笑う様を見て、シン達の眼にはこのネクロという男は人間として映ってはいなかった。

 悪魔といった方がしっくりくるその狂気は力を振りかざす者の資質を有していた。

「まぁ、アルベールそういう事だ。俺達は俺達で決着をつけようか」

「うむ、そうだな……だが、殺しはしない。我は仲間を殺さない」

「考えが甘いな。人間か魔族かどちらかを選べよ。二兎を追うものはどちらも得ることは出来ず、結局は何も救うことはできない」

 閉じられた瞳はしっかりとアルベールに向けられる。

 その純粋なまでの高められた魔力を霊体ではあるが皮膚という触覚を得る感覚器は無いが、全身で感じていた。

 絶対なる預言者と銀聖の影法師。未来と銀。

 この2つの能力は特異の中の特異。その者にしか扱うことのできない術式。

「クルトよ……いつかはこのような時が来るのではないかと我は思っていた」

「そうだな、言われてみれば俺もお前とは本気でぶつかり合うんじゃないかと、そんな気がしていたよ」

 クルトは小さく何かを呟くと、地面に魔方陣が展開し、クルトとアルベールを包み込む。

「これは?」

「まぁ、俺達二人だけの闘争を繰り広げるための結界のようなものだ。別にこれがあるから俺が有利になったりするものではなくて、外部からの干渉を阻むものと考えてくれ」

「そうか」

 短く呟き、アルベールは自身に内包する膨大な魔力に意識を働きかける。

「早速だね」

 アルベールの魔力の流れを察知し、遅れてクルトも魔力を全身に巡回させ放出する。

「威厳と誇りを胸に主を守護せし穢れ無き騎士、汝の牙は安らかなる眠りをもたらす賜物なり━━━━ズィルバンシュ・フェーレン(守護せし誇り高き銀獣)」

 銀粒子が収束し銀色の毛を持つ銀狼へと姿を変え、得物を補足し牙をむき出しながら低く唸り主の命を待つ。

「ほぅ、面白い使い魔だな。どうやら俺を食い千切りたくて仕方ないらしい」

 銀狼を見ても臆することのないクルトにアルベールは細く笑みを浮かべる。

「喰らいつけ」

 主の命に刹那の瞬間も経過することなく得物に牙を突きたてに疾走し、周囲には銀狼の残した残像が尾を引き、結界内のいたる場所から空気を裂く音が響く。

 鋭利に輝く牙はクルトの首筋を捉える寸前でクルトは一歩下がり攻撃を躱す。

 次もその次も、まるでどのタイミングでどの部位を攻撃してくるのか知っているように。

「中々に面白い余興だな。だが、俺の思い描いた通りになりすぎるのは少々つまらないな」

 クルトは懐から掌に収まる程度の大きさをした球体を取り出し宙に放り投げる。

 球体は幾つかに分裂しクルトの頭上をグルグルと回旋する。

 銀狼は次こそはと牙を突き立てようとするが、頭上で回旋していた無数の球体が音もなく放たれ、銀狼の身体を抉り消滅させる。

「ほぅ、それが貴公の因果創神器か。その実力はどれほどかは知らぬが、用心に越したことはない……か。輝きの届かぬ深い闇を照らせしは無数に漂いし銀の粒子、女神の涙は祝福の賜物━━━━カストリア・キャルデ・ズィースト(闇を照らせし銀の蛍)」

 アルベールの周囲一帯には無数の銀粒子が舞い、1つ1つの輝きはまさしく蛍のように儚くも美しい。

 それらはアルベールを守るかのように周囲を漂っている。

「なんか、触れたら危なそうだね。じゃあ……ファルティオール エイゲス キャストレティーア ルルファレア=クウォント:アーリィー・ヴァンクトゥクス(かつてない悲しみに自身の存在を見失い、自ら喉元に鋭利な刃を押し当て沈める)」

「……常世言語(ケモルティクス)!?」

 クルトを中心に地面には複雑な複数の魔法陣が重なり合い1つの魔法陣を形成させる。

 その異形さは人の人知を超越し、理解をしようものならば常人という枠組みを逸脱しなければ理解できないであろう重複型魔方陣。

「どうだい? "俺達が"本来扱うはずの術式だ。こんな人類が真似事で作り上げた術式ではなく、これが真に純粋な術式だよ」

「確かに我等の生まれは常世の神の魂の残滓ではあるが、我には常世言語が理解できぬのでな。そんな頭が痛くなるような複雑な術式は我には向かぬよ」

「そうか? 使えたら使えたで便利なんだがな。たとえば……」

 魔方陣の一部にクルトは意識を向けると、足元よりノイズを纏った小さなナイフが現れ、クルトはそれを握りアルベール目掛け投擲する。

 だが、アルベールの周囲に点在する数万の粒子に触れた瞬間にナイフという物質は銀の粒子となって砂のように崩れ落ち消滅するが、その瞬間にクルトの魔法陣が強く発光し

魔法陣としての結びつきが綻び文字や模様がクルトを守るかのように周りを漂う。

「この魔法陣の発動方法は封印の役割を果たしているナイフを消滅させることだったんだよ、つまりこのナイフを使ってお前の周囲を漂う粒子の正体を確かめると同時に封印を解かせてもらった」

「なに?」

「カウンテルト:ログア(解現:我が世界)」

 クルトの身体が溶け魔方陣と一体化する。

「クルトッ!?」

「こっちだよ、アルベール」 

「ッ!?」

「遅いな…カウンテルト:ケルテリア(解現:巨神の腕)」

 背後から現れたクルトに一瞬反応が遅れる。

 クルトの周囲を渦巻く魔法陣は新たなる魔法陣を生み、ソコから大きなとても大きな拳がアルベールの背後を穿つ。

 魔導膜を解除していないアルベールはその拳の一撃により吹き飛ばされ、結界の境界線に背から叩きつけられ地面に沈む。

 破壊した柱から土煙を上がり、柱の残骸の隙間より銀の王は姿を表す。

「クク……魔導膜は邪魔にしかならぬな」

 自身の体に沿って張ってある膜を解除させる。これで彼は完全なる霊体であり、どのような物理・魔法も彼に危害を加えることは不可能となった。

 最強の防御にして忌まわしき呪い。

 影法師の異名を表す存在。

「痛みがないとは言え、自身の身体が勢いよく吹き飛ぶ光景はある程度の恐怖を感じるのだな」

 この言葉には若干の興奮が混じり、クルトをその翡翠色の瞳で見据え、それに対してクルトは肩をすくめるだけだった。

「なんかお前の能力は激しさや爆発的な迫力がないんだよね。ただ美しいだけで戦ってるこっちは飽きてくるよ」

 指で髪を弄びながら、困ったように笑みを溢す。

「破壊性を望むか、クルト。なれば我は未来創造を望むぞ」

 愉快そうに、普段のアルベールからは決して見ることのできない好戦的な瞳。

 本気で戦うことのない者が、今本気を出せる舞台があり相手がいる。それだけで、心が踊り自然と表情に変化が現れる。

「見せてくれるのか破壊を? ならば口惜しさは残るがそろそろ終わりにしようか」

 涼しげな態度を崩さぬクルトは完全なる未来を描き始める。

アルベールとクルト戦のパート1です。

次回はクルト戦の続きとネクロ戦を書いていこうと思います。

次は遅くても4月1日くらいには投稿しますので、またよろしくお願いします。少しずつではありますが、読者様が増えてきていて心の励みになっております。

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