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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
銀聖の魔王編
12/90

滅び行く聖教の国、奮い立つ小さな希望達(2/2)

「はぁはぁ……ったくよ〜、いったい何人いやがるんだよ敵さんは」


 グレイは息を荒げながら己の剣に付着した血を拭き取っていた。

 次々と現れては切り伏せてきてもう既に1時間くらい続けている。いくら、大陸にその名を馳せる四十字騎士団といえど人間だ。


 人間には限界がある。そして、肩で息をする3人の様子からしてもう限界なのだろう。これ以上の消耗は危険である。


 内乱によって廃屋と化した喫茶店に忍び込み、一度休息を取る。喫茶店であれば何かしらの飲食物があると考えてのことだった。


「まさか、聖王はもう……」


 壁に身を預けるように座り込んだグレイがポツリと漏らす。


「そんな事はありません!! お父様がそんな簡単に死ぬようなお方では無いのをグレイは知っているでしょ」


 内心ではグレイの言うように父は死んでしまったかもしれないという思いを無理やり押し込み、いつもの明るく優しい父の姿を思い浮かべていた。


「やはり戦えぬ私を守りながらこれだけの数と戦うのは……」


 ステラ、ジークリート、グレイの表情には疲労が色濃く浮かび、もう何十人切り伏せたかわからないほどに返り血を浴びている。


「そうですね……遺憾ですがクリスティア様の言うように、これだけの数を相手に3人では少々限界があります」

 ステラは苦笑し、顔に付着した血を裾で拭う。


「では、ここから近い貴族領に赴き助勢を頼みましょう」


 というクリスティアの案にジークリートは静かに首を振る。


「いや……貴族は所詮己の保身にしか興味はないはずだ。今向かってもたどり着いた頃にはもぬけの殻だろう……それどころか、敵に買収されていても可笑しくはない」


 ジークリートは忌々しげに呟き、それ以降は黙したままだった。


 沈黙はしばらく続いた。


「はぁ……ならしょうがねぇか。このまま正面の大通りを突っ切る。そして味方と合流できればそれで良し、出来なければ致し方ないって感じでいいんじゃねぇか?」


 長い沈黙に耐え切れなかったグレイは完全回復したのか準備運動を始めていた。


 他の意見が出ないので、ステラは隊長としてグレイの意見に賛同する。


「わかりました。ではグレイの他に案が出なかったので、このまま正面を突き抜けます」


 聖女を中心に正面にグレイ右後ろにステラその反対側にジークリートという三角を模した陣形のまま歩みだす。




 聖王ヘブリドとマリーナは聖騎士達を従え、反逆者であるバルデン司祭を捜索していたのだが、やはりなかなか見つからない。


 この国が大国だからというのもあるだろうが、彼は策士としては一級の腕をもつ。故に彼が姿をくらまそうと思えばほぼ見つける事が出来ないだろう。


「聖王様申し上げます。反逆者バルデン司祭の行方を掴みました」


 遠くから駆けてくる数名の聖騎士達に安堵の表情を浮かべ、後ろの聖騎士には待機を命じる。隣りにいるマリーナは負傷した聖騎士の治療に勤しんでいた。


「ご苦労だったな。してバルデンはいったい何処に姿を眩ませているのだ?」

「はっ、実は……」


 聖王の下に歩み寄る聖騎士は懐に忍ばしていたナイフを引き抜く。


「………っ!!」


 聖王を羽交い絞めにしその首筋にはナイフが突きつけられていた。


「貴様なんの真似だ!!」


 異変を察した聖王率いる聖騎士は各々武器を構える。


「おい……武器を捨てろよな、このおっさんの首が落ちちまうぞォ!」


 それに聖騎士は渋々武器を捨て、ただ立ち尽くすばかり。いや、ただ立ち尽くしている訳ではない。


 隙さえあれば飛びかかり聖王を奪取し反逆者を捉えようと、いつでも動けるように余計な力を抜いて、刹那の時を見定めていた。


「そうだ、手前もこっちに来いよ聖女マリーナ様よぉ」


 ニタニタと笑いながら負傷者の手当てを担当していたマリーナに手招きする。


「ふふ、ではその熱烈な告白に答えてあげようかしら」


 ニコニコ微笑んだままゆっくりと反逆者の下に歩いていき、聖王と同じように羽交い絞めにされ首筋には鋭利なナイフがあてがわれた。


「お前らは付いてくんなよ、もし付いて来たら2人を殺すからな」


 2人を連れ路地を曲がっていった。


 聖騎士は黙って見過ごす訳もなく、瞬時に5つの部隊を編成し、各騎士長は部下を率いて聖王を見逃さないように各方面から気づかれずに追跡することにした。




 正面の大通りは意外にも敵はなく、それと同じように生きている人間も皆無だった。


 歩く途中には見知った顔が動かぬ者として転がっていたり、敵であろう者が転がっていたりしている。


「………」


 これ以上この凄惨な光景を見ていると、自身も判断を違えればこうなってしまうという恐怖に駆られてしまうので、視線は常に正面へ向ける。


「あぁ〜誰もいないか、ならルートを変えようぜ、このまま東区に向かってみようと思うんだけどどうだ?」


 グレイは正面から突き進もうと行ったのにも関わらず、何もない光景にうんざりしたのか別のルートを提案する。


「おい……グレイ、お前はピクニックか何かと勘違いしているのか? 敵が居ないのであれば僥倖というものだ。それを何故安全な道から逸れようとする」


 先程から何も喋らなかったジークリートが重い口を開けた。


「あぁ!?」

「どういうことだよジークリート」


 癪に触ったのかグレイはジークリートを睨み据える。


「……そのままの意味だ。俺たちは民を助ける為に動いている。それなのにお前はまるでピクニックや迷路を探検するかのようにしか見えない。こちらには聖女様が居るのを忘れたのか?」


 対する彼も静かに言葉を紡ぎグレイを睨み据える。


 互の間に殺気が混じり合い今にも一触即発しそうな雰囲気だった。


「もう! 何を喧嘩しているんですか。私たちは一刻を争う状況なんですよ」


 クリスティアは怒りというなれない形相を頑張って作るが、上手く行かず隣でステラがクスクスと笑っている。


「……」

「……」

「……?」

「ふふふ」


 三者は一瞬固まったが、それにより喧嘩はお開きとなった。


 その表情を見て、2人のイラつきは萎えていったのだろう。


「すまなかった。何も案を出さないくせにデカイ口を叩いた」

「いや気にするな、俺の方こそちょっと空気を読めてなかったみたいだな」


 互いにバツが悪そうに俯きながら和解をした。


「ふふ、じゃあ東でよろしいのですか聖女様?」


 クリスティアは静かに頷き東を眺める。


「せっ……聖女様!!」


 遠くから聖騎士とおぼしき男が1人こちらに駆けてきた。


 彼の表情から切羽詰っている状況なのは理解できた。


「た……はぁ……大変ですッ!!」


 聖騎士は息が上がっていて上手く喋れずむせてしまっている。


「聖王様とマリーナ様が賊に捕縛され連れて行かれてしまいました」


 聖騎士の発言にこの場にいた者は、その意味を理解するのに時間を有し、4人はとたんに顔色を変える。


「ばっ……なんで敵に捕まってるんだよ! 外敵から守るためにお前らがいるんじゃねーのかッ!?」


 グレイは聖騎士の胸ぐらを掴み、顔を赤くして問い詰めていたが彼だけのせいでは無いのは皆分かっていた。そう、グレイも分かってはいたが、このどうしようもない怒りをただ誰かにぶつけたかったのだろう。


「グレイその手を放してください、彼だけの責任ではありません」


 グレイは最後に力強く握った後、ゆっくりと胸ぐらから手を解く。


「んで……聖王様達は何処にいるか所在はつかめてるのか?」

「はい、現在聖王様を護衛していた聖騎士を5つの部隊に編成し敵に気づかれずに尾行している所です」

「わかりました。では私たちもお父様の救助に向かいます。貴方は私たちと行動を共にして下さい」


 5人は聖王の後を追うため東に向かった。




 そこでは抗争が行われていた。同じ国の鎧を纏った騎士同士が刃を打ち鳴らし合い、魔術師達は後方より援護をする戦い方は双方とも中央教会の基本戦術であった。


 かたや中央教会を崩壊させようと奮闘する反逆者であり、それに拮抗した状態で迎え撃つ部隊はハミルト公爵率いる精鋭部隊と途中合流した聖騎士部隊の計80名。


「おのれッ!! 無抵抗な民を食い物にする、その下賎な輩共め」


 ハミルトは苦々しく奥歯を噛み締め怒りに震える。


 ハミルトは過去英雄とまで言われた武人であったが、長きに渡る豪遊にその身は脂肪が乗った肉。今の彼に戦闘は不向きだが、指揮官としての才があり、そのお陰で何とか現状を持ちこたえている状況であった。


「馬鹿者が1人で戦おうとするな! 集団で少数の敵を蹴散らしていけッ!」


 ハミルトの怒号が戦場を行きかい、それが仲間の命を救い部下の士気を保っている。


 敵は指揮官を殺そうと数人で向かってくるも、ハミルトを長い間護衛していた騎士長により斬殺される。


 その剣捌きは見事なまでに無駄がなく、中央教会4十字騎士団の空席に着くのではと噂されていたぐらいだ。


 実際に聖王からその件で誘いを受けていたが、私が離れれば主を守護するものが居なくなってしまうと丁重に断っていた。


「我が主、これからはダイエットをされた方が良いのでは?」


 騎士長は喋りながらも向かってくる複数人の敵を両断してしまう。


「……そうだな、これからは私が民を守らねばならぬからな」


 横目で戦う騎士や魔術師を見て、己はただ指揮をするだけに憤りを感じていた。


「ハミルト様、何をしていますか早く民の誘導をお願いいたします!!」


 騎士の呼びかけにハッと我に戻り、少数の騎士を己の護衛に付け、民の下に向かい、負傷している者もいるらしく、動ける者は動けぬ者を背におぶり騎士に続く。


「賊軍どもよく聞けぇ! 我が名はレイク・ベレナード。ハミルト公爵専属の近衛騎士団長にまで上り詰めた男である。これより先死にたい者はかかってこいッ!!」


 老年の騎士は声高に叫び剣を片手で持ち構える。その構えは体勢を低くした構えで、かつてレイクが戦時で多くの敵を討ち取ったとされる構えだった。


 勇ある武人相手に複数人で切り掛かるも、その身体のバネを最大限に活かした動きで次々に敵を切り伏せていく。それは刹那の瞬間と言っていいものだった。


 獰猛な瞳に捉えられた敵は息を飲む間も無く、急所を正確に切りつけ、突き刺す。


「ハミルト卿、敵は殲滅いたしました。早く民の安全誘導を行いましょう。もう……この国に安全な場所はありません。私的には中央教会と同盟を結んだフィール連合国に逃げるのがよろしいかと」


 レイクは主に跪き言葉を待つ。


「レイクお前の言うとおりだ。これより我々は民を守りながらこの国を出てフィールに向かう。済まないが勇ある騎士諸君にはまだ民の為にその剣を振るっていただきたい」


 各々は肯定の意思をあらわにし剣を胸の前で構え膝をついた。これは主人に対する忠誠の証であり、この魂尽きても共に戦うという意味がある。


「すまない……感謝する。ではこれより東門に向かいそこからこの国を出る」




 クリスティア達は聖騎士に案内されながら東区にある普段なら憩いの場である広場にやってきた。


「確かここら辺に連れてこられたという情報が入っていたのですが……」


 そこには人間はおろか死体すら見当たらず、不自然なほどに静かだった。


「聖女様少しばかりお待ち頂けますか、少し周囲を見回ってきます」


 そう言い残し、聖騎士は走っていった。


「おい、まさか罠とかじゃねーよな」


 グレイは剣を抜くが周りには人の気配が無い。


「ぎゃあああああああああああああ」


 先程聖騎士が様子を見に行った方角から叫び声が聞こえた。


「まさか!!」


 グレイが最初に駆け出しそれに続いて3人も後を追う。角を曲がった所に先ほどまで一緒に行動していた聖騎士が血だまりを作って倒れていた。


 そして死体の近くに佇む1人の男。


「へへへ、パパとママに会いたければ俺に着いて来な」


 男はそれ以上何も言わず背を向け歩き出す。そこには己は殺されないという自負があるから敵に背を向

けられるのだろう。


 もし、ここで彼を殺してしまえば両親の下にたどり着くのに時間がかかってしまうからである。だが、クリスティア達は罠である可能性も考えたが、悩んでいても仕方ないので渋々付いていく事にした。


 男に着いてきたクリスティア達だったが、着いた先は国の主要な場所の1つ東門であった。


 門は完全に封鎖され付近の家からは敵の気配を感じるほどの殺気が渦巻いていた。


「はい、お疲れ様でーす。もう少ししたらクリスティア様のパパとママが来るから、ちょっと待っててね」


 男は舐めまわすような視線を聖女に向け、何処かに去っていった。


 視認できるだけで50人はいるだろう。民家に隠れているのも合わせると何人になるのかは考えたくもなかった。


「……今、俺がこいつらを片付けて聖王陛下達を助けに行ってもいいが?」

「いえ、それは危険です。民が人質に捕らわれていて、それに私たちが下手に騒ぎ立てても聖王様達の命を危険にさらしてしまう可能性があります」


 ジークリートは背に携えた大剣の柄から手を離し静かに彼方の方を眺める。


 それから10分くらい時が経っただろうか、シビレを切らしてきたグレイが騒ぎ出しそうな頃になって、先ほどの男が戻ってきた。


「はいはーい皆さんごきげんよう。どうやらこの国の貴族は落ちぶれていると思っていたのですが、意外にも勇敢に我らに刃向かっているようですね」


 身振り手振りで現状を説明する男の様は一種の語り部のようだった。


「う〜ん、ハミルト公爵が兵を連れこちらに向かってるみたいですね、いや参ったなぁ。まぁ、彼らが来ようが……ね」


 男の号令の下に配下と思われる者達が民家から何かを引きずってくる。


 それは大きな、そうとても大きな十字架を2つ、そこには人間が磔にされていた。


「お父様、お母様ッ!!」


 クリスティアの悲痛な叫びがこの場に響き渡り、民は顔を逸らしただ震えるだけだった。


「む……う、クリスティアか、何故ここにいるんだ。この国を出たのでは……?」


 意識が朦朧としているのか、舌が上手く回らず言葉がたどたどしくなっている。


「ふふ、この人ったらずっと貴女の事ばかり心配するのよ。もう妬けてしまいますわ」


 マリーナは変わらずニコニコしているがいつものような元気は無かった。


「今お助けいたします、ですからもうしばらくの辛抱を」


 4十字騎士団は得物を抜きいつでも助けに行ける準備ができていた。


「道を開けよ逆賊ども。我が名はハミルト・ディア・カロティア。この聖教の国で公爵の地位を冠する民を守護する者なり!!」


 はるか後方から聞こえる声に誰もが振り返る。


 声の主は物凄い勢いで此方に向かってきていて、その姿が見えるまでに時間はかからなかった。


「これは、聖女様ご無事でなによりです」


 ハミルトはクリスティアに深々と礼をしたのち敵に向き直る。


「えっ……」


 クリスティアの知っているハハミルトという男と大分印象が違い、その身を固まらせてしまう。


「貴様らは誰を磔にしているのか分かっているのか、この国と民にとっての光である聖王陛下であるぞ!!」


 クリスティアは惰性を貪るハミルトではなく、かつての英雄。自身がよく懐いていた優しく大きい背中をしたハミルトと重なった。そんな今の彼を見ていると心強く、安心することができた。


「ハミルト卿ご助力をお願いいたしたいのですが、力不足な私にどうか、お力をお貸しいただけないでしょうか?」

「ハッ! このハミルト、聖女様とこの国の為になるのであればこの身惜しくもありません」


 ハミルトの真摯な態度に心を震わせながら今この瞬間に確信した。

 

 この戦争私たちの勝ちだと。


「あぁ、観客が集まり盛り上がっている所申し訳ありませんが終わりにしましょうか」


 男の背後から白い修道服に身を包んだバルデンが現れ、十字架に磔にされてる二人に振り向きざまに銀色に輝く鋭利な刃を一閃させる。


 瞬間、周囲に血しぶきが飛び、それが誰の血なのか理解することはできなかった……いやしたくなかった。

 

 地面に2つの丸いものが落ちた。


 その場にいる、者たちの時間は停滞する。


「さようならです。忌々しい聖王ヘブリド、並びに聖女マリーナ」


 バルデンはつまらなそうな表情のまま刃に付いた二人の血液を拭き取る。


「バルデエェェェェェェェェェェンッ!!」


 我を忘れ、怒りと憎しみの感情に満たされた純粋なる乙女は怒声を上げ駆ける。 


「しまった、誰か聖女様をお止めしろっ!!」


 ハミルトは直ぐ部下に後を追わせるが、割って入る敵に阻まれ追いつくことが叶わない。


「……クリスティア様、これ以上先をやらせる訳にはいきません」


 ステラはクリスティアの襟首を掴みそのまま力任せに地面に伏せさせる。彼女の後方には急所を刺突され地面に血だまりをつくる数人の姿が確認された。


「ふむ、ステラ殿感謝しますよ。もう少しで聖女様に人殺しの罪を被らせる所でした」


 ようやく追いついたハミルトは申し訳なさげに軽く頭を下げた。


「おいバルデンてめぇ!……なんでこんな事しやがった!!」


 グレイは今にも飛び出しそうなその身を抑え、奥歯を噛み締めバルデンを睨みつける


「貴方たちに説明してもきっと理解してもらえないでしょう。この国を他宗教から救うためなのですよ」


 バルデンは静かに呟いた。


「意味分かんねぇよ。反乱起こしといて他宗教から救うとか意味分かんねぇから!」

「ふふふ、わからないのであれば別に構いません。もう貴方たちに用はありませんので、私の国から出て行ってもらえませんか? まぁ、拒否すれば女子供といえど殺しますがね」


 周囲を囲まれたクリスティア達にはも既に勝機は無かった。


「皆さん……武器を捨ててください」


 勝機がないのであればこれ以上戦う理由はないと判断し、無抵抗である事を示させる。


「おい……どうしたって言うんだよ。俺達がこんな奴らに負けるはずねぇって。だから命令してくれよ戦えってよ」

「……」

「……バルデン司祭、私は貴方を一生許すことが出来ません。ですが、貴方は貴方なりにこの国の事を真剣に考えてくれていた事は分かります」

「……」

「私達の負けです。どうか、残った者たちの命だけはお助けください」


 両の膝を地面につき両手と顔を地面に押し当て願う。


「えぇ、構いませんよ。ですが、一応保険として此方で捉えた人質は預からせていただきます。万が一にも同盟国のフィールに攻め込まれては困りますからね」


 バルデンの条件に一瞬の躊躇いもなく頷く。


「わかりました。ですが、人質に対して不当な扱いをしないとの条件でお願いします」

「えぇ、もちろん。せっかくの人質に死なれては困りますからね」

「皆さん……この国を出ましょう」

「ハミルト卿は民の誘導をお願いします。4十字騎士団は私と共に父上と母上の遺体を……」


 各自指示された役割を果たすべく動き回り、荷を台車に詰め込み正門より列をなし国を出る。

 

 クリスティア達は此度の内乱で敗北し、多くの大切な人達を失ってしまった。


 馬上にて俯き、静かに涙を流すクリスティアに誰も声をかけることが出来なかった。

後半は少々長くなってしまいましたが、どうか楽しんでもらえたら幸いです

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