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不良と兄


「アンタ、何者だ?」


 そいつの第一印象は最悪だった。見た目二十歳前後の青少年なのに眼つきが鋭いっていうか。うん、そう不良みたいな。第一、何言ってるか分からない。いや、言葉は分かるんだけど、何者って何だよ。

 

 「精霊か?」


 口数の少ない不良だ。今までこういう種族の人とは付き合ってこなかった。だからどう対応すべきか分からない。

 

 「あ、あの。オレ」

 

 多分貴方と同じ霊長類人科。だから人間です。と伝えたかったのに、その言葉が喉に詰まって出てこない。なんで。ああそっか。ここ暫く面と向かって人と話してなかったからだ。身体は自分が思っている以上に緊張してるのかもしれない。胸が張り裂けそうなくらいどきどきしてて。あれ、どうやって唾飲み込むんだっけ。地面がぐらぐらする。息が出来ない。目を閉じれば身体が浮いた感覚になって。刹那、頭に激痛が走った。

 

 「おい、アンタ。おいっ」


 自分を激しく揺する不良。オレは意識を手放した。



 ---



 夢の中で兄に会った。

 兄は自分を見つけるなり手を振って寄ってきた。


 「お前も転職したんだなあ。」


 転職?ああ確か職業診断の。

 兄はいつもと変わらず陽気に話し出した。 


 「しかも神官補佐ってマイナーだな。」


 それ言わないで。オレも思ってるから。

 兄のこういう本音を隠さない所、話してて飽きないんだ。だからニートになってからも、兄とは普通に話せたのかもしれない。


 でも待ってくれ。オレ別に転職なんてしてない、よな。不思議そうな顔をしていると兄がそれを悟ったように会話をリードしてくれた。

 

 「そっか最初は分かんないよな、このシステム。お前、転送されたんだよ。もう一個の世界に。」


 ちょっと待って、真顔で何話してんだよ。


 「んで、そっちの世界で神官補助をするってこと。多分ただの雑用だけどな。」


 これマジな話だぞって念押ししてくる兄。未だに上手く理解していない自分のために兄は一から説明してくれた。実際夢だからと分からなくても、自分が話を中断させることは無かった。


 1つ、自分が居た世界とは別の世界に転送されたということ。

 2つ、その世界で自分の天職が神官補助だということ。

 3つ、自分が居た世界と別世界の常識はズレているので、元の感覚で居たら、痛い目にあうということ。

 4つ、もう元の世界に戻れないということ。

 5つ、この話は全部マジだということ。


 最後に、兄は自分の腕に紐みたいな物を付けてくれた。紫と白と桃色で編まれた、多分ミサンガっていう奴。にっと笑って、弟の為の御守りだよって。あと大事なモノだから大切にしてくれよ、とも。


 「んじゃ、またね。いってらっしゃい」


 夢なのに、背中を押してくれた兄の手が温かいなと思った。



説明会でした。次から異世界での日々始まります。

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