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マスター、ナーギに目をつけられる。

手っ取り早く思い出話。



彼女がこのバー「オオカミの巣」に来るようになったのはオープンしてから5日目だった。最低限の広告と知人にしか店を開く事を言っていなかったので、その日の客は彼女一人っきり。


カウンターの端に座り、ちびりちびりとマティーニを飲んでいる。


「ここは静かで良いですね」


グラスを拭きながら彼女との会話を楽しむ事にする。


「オープンしたてですからね」


「そう、素敵な店だからきっとお客さんも増えますよ」


最初の会話はこれだけだった。

きっと彼女の事だろう、追われるうちに逃げ込んだのがここのバーだったに違いない。


3日後、また彼女が来た。

おススメと言われたのでマイタイを作ることにした。


丁度この日は陽気な天気だったのだ。


「見た目は可愛いのにキツイお酒ね」


「お気に召しませんでしたか?」


「おいしい」


彼女はまた少しずつグラスを空けていく。


「また、来るわ」



そういって彼女は店を後にした。





次来たのは2週間後だったと思う。

この頃になると「オオカミの巣」にもお客が入りだして少しは賑やかになってきた。

それでも1日10人くらいだったが……。



「お久しぶりです」


またカウンターの端に座った彼女に話しかける。


ピックと黒い耳が動いた、少し驚かせたかな?


「久しぶり、覚えているとは思わなくて驚いたわ」


少し笑い困ったように尻尾をくねらす。


「まだ、お客様少ないんですよ」


俺は苦笑いをしながらグラスを磨く。


「じゃあ、私があなたに良い呪文をかけて上げましょうか?」


クスクスと小さく笑い彼女は俺を見つめた。


「高く付きそうですね」


「美味しいお酒でいいわ」




そういうと彼女は呪文を唱えだした。

魔法はからっきしダメだった俺でもわかるほど綺麗な呪文だった。

まるで歌うように紡がれた言葉が俺に、店になじむように滑りこんでくる。





この頃のナーギはまだ非戦闘Aランクで、ダンジョン攻略や巨大モンスター討伐のサポートメンバーとして働いていた。

戦う事が苦手な彼女はいつも仲間に守られていた。

仲間も別に戦えない彼女を責めはしなかった。




的確な支援魔法、強力な回復魔法、彼女自身の直感と強運に数えられないくらい助けられていたのだから。強力な戦闘魔法を使える人間より、彼女に全員を底上げしてもらった方が戦闘ははかどる。


その頃は彼女も不甲斐ないと思いながら、戦闘に参加していたのだ。


とある事件と、ランクが上がり、通常任務から解放されるまでは。





この話も彼女から直接聞いたのではなく、昔彼女とよく仕事をしていた人間から聞かされたもので、信ぴょう性に欠ける。



そして、2年の月日がたち、俺と彼女の中は深くなった……といいたい。



にょろーん

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