刹姫
「無様ね。さっきまで必死で命を乞いていたくせに。」わたしの前の壁に寄りすがっている無様なモノを軽く足で蹴る。
いつかは人間だった物が今ではそれがまるで中の物は外へとヒックリカエサレテイタ。まあ、自分がやった行為だ。驚く事はない。
つまらない。この人間ならもっと長く絶えられるだろうと思ったのに…一時間も持たなかった。手を一番最初に切断してしまったのが今回の誤ちだったかもしれない。ため息をついたその時だった。
「驚いた…今世間を騒がしている猟奇連続殺人犯がこんな女の子だったなんて。」
「あんた、ダレ?」ちょうど手に持っていたハンティングナイフを月明かりを背後に背負う者に向けた。「別に警察でも刑事でも無さそうね。」
謎の不審者はわたしより年上の二十代前半ぐらいに見えた。
「邪魔をするんなら、容赦無くここでこの死体と巻き添えにするよ?まあ、死体と言うよりは肉のカタマリと言った方がいいのかな?」
「残酷なその眼差しが好きなんだよね…そう、その二つ、違う色を持つ眼球が君の獲物の恐怖心を揺らす。」
彼はひたすらわたしに向かって歩いてくる。
「近寄らないで。」ナイフを彼の喉に当てた。「無駄な殺しは遠慮したい所なんだけど。」恐怖を示さない人を殺すのは、わたしにとっての無駄。
スラッ
「…!!何、貴方も物騒なモノを持ってんの?」目の前に突き立てられた手術に使われるメスに対して苦笑した。
「そりゃあ、このブッソウなもんを持ってないと仕事ができないからな。殺し屋としての。」殺し屋という言葉に興味が惹かれる。「お前もやってみないか?」この男を信頼するべきか、否か。
「おびき寄せる為の理由?正直、始めてあった人を信頼するほど優しいわたしじゃないからね。」ついでを言うと、人生で信頼していた人はただ一人。しかし呆気なく裏切られて、それ以来人を信用しなかった。
「奇遇だな。俺もだ。だけど今回ばかりは信用して欲しい。一人いなくなっちゃって困っているんだよ。」
「それは貴方の事情よ。わたしには縁が無いわ。」また一歩相手が近寄って、もうこれ以上近づけない程の距離へと縮まった。
「じゃあ、脅されたと思って来てくれない?」顔と手の仕草があってない。顔は紳士的に笑っているというのに、彼の手はメスをわたしの頬にピタ、とはりつかせて、いつでもわたしの頬に傷痕を刻む準備をしている。
「…断ったら…?」笑顔が引きつっている、嫌でもわかる。
「まだ考えて無いなあ…」
ウソツキ、ホントウハコロスツモリナノニ。
「なら脅されたという設定でお願いしようかな。」別にこれがきっかけで死んでも後悔しないし、わたしの死を悲しむ人もいない。
「じゃあ、付いて来てもらおうか。」瞬く間に腕を掴み取られ、衝動に応じてハンティングナイフが地面に落ちた。掴み取ろうとしても、腕を吊るされたから手が届くチャンスも無い。男はナイフを踏みつけた。
「コロス!!!」長年愛用してきた相棒を踏まれて考える暇も無く口から感情が漏れた。
突如、腕に送り込まれてくる力が増加した。
「大丈夫。ただこれを預かるだけだよ。背を向けた途端、命を落としたくないのでね。」急に腕を離された為、バランスを崩してしまった。情けない。挙句の上、腕に全く力が入らず、相棒に触れる事でさえ許されなかった。その間、余裕持って男はナイフを拾った。
「ほら、おいでよ。君の相棒を返して欲しいのなら。」彼は優しそうに手を差し伸べた。しかし死んでもその手を借りたく無いわたしは自力で立ち上がった。
「俺は空牙。君は?」
「わたしは…刹姫。それ以上教える義理は無い。」目つきを鋭くするが、もっての無駄だった。
「…その気持ちをいつか変えてみるよ。」
回覧有難うございます。
楽しんでくれましたか?
この話はわたしがこうしたいな、という妄想を文に変えたものです。
勿論、フィクションです。
日本語が変でしたら、すいません。家の中でしか日本語をしゃべる機会がないので...