門番のお仕事2
「お呼び立てして申し訳ありません。xxx様」
「いや、門番は此処から離れられないのだから、当然のこと。謝罪には及ばない」
淡々と応えた声は低いが、女性のそれだった。
「それで、どういった用向きだろうか」
「・・・」
「あぁ、人を寄越せという話ならあまり聞きたくはないね」
「・・・・・・・」
「・・・門番」
二つの長い溜息が洩れて重なった。
「申し訳ない、とは思っておりますxxx様」
「・・・あぁ、知っているよ。君の所為でないことも重々承知はしているんだが」
箱の中の空気が暗く沈む。
「なぜ、誰も彼も、うちの世界、それも日本人を指名して召還しようとするのか」
「個人差があるとはいえ種族全体の傾向として勤勉で、実直。順応性もすこぶる高く、これまで召還された方々の中で、一世界を揺るがすほどの危険な行いをされた方はごく僅か。・・・引く手数多となるのも無理はないかと」
躊躇いがちながらも答えた門番に向けてか否か、また溜息が洩れ聞こえた。
「ねぇ門番。私はね、人が可愛いよ。とても可愛いんだ。苦しむ姿は見たくないと思う。思いながらも、世界で苦しむ者達すべてに介入することなどできない。私の世界の人は、私の支配ではなく、同じ人が人を支配することを選び、私はそれを認めた。そうである以上、私が世界に介入することは許されない」
「・・・xxx様」
「唯一の例外がここだ、門番。各世界の神々と結ばれる協定。それを遂行させるお前が、私は時々、とても憎いよ」