門番のお仕事
三人称になります
二十畳ほどの白い部屋には、窓はおろか扉もない。白い壁のみのその場所は、部屋と言うよりは箱の中、いう表現の方が、しっくりくるだろうか。
何もない白い箱の中に、声だけが響く。
「もーんーばーーーん!」
「お待たせいたしました。xx様。本日はどういったご用件でございましょうか」
甲高い女の声に応えたのはテノールの落ち着いた声。
男の呼んだ女の名は箱の中で音にならず空気だけを震わせて消えた。
「おっそいのよもー。用件なんか分かってんでしょ。勇者をヘッドハンティングしたいの。門番、なんとかして」
居丈高に言い切った女の声に、「どのような方をご希望ですか?」と柔らかく尋ねた男の声は、少し困っているようにも聞こえる。
「そうね。性別は問わないわ。年齢は十代後半から二十代で。見栄えのする容姿の人族。あと、あたし、あんまり力強い方じゃないし、能力の付与なんかは出来るだけ少ない方が良いわ」
「では、xxさまの世界に近い文化圏の世界で、武術、あるいは魔術などに造詣のある方がよろしいですね」
ーーーxxxのxx人などは如何でしょうか
男が挙げたのは、女の出した条件に合う、とある世界の種族であったが、女は不満げに鼻を鳴らした。
「其処ってあのxxの所でしょ?いやよ、あいつに一人寄越してくれなんて頭下げるの」
「それでは、魔術の成り立ちなどは異なりますが、xxなどでしたら、」
「ねぇ、地球の日本人ってどうなの??」
男の声を遮った女の声は、ひどく華やいでいた。