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ショートショート

究極のクイズ番組『究極のQ』

掲載日:2026/05/15

ゆるゆるショートショートです。

テレビ番組『究極のQ』の、早押しクイズで、問題文を一文字も聞かずに回答する。

ボタンを押すのが早いので、不正を疑われ、あらゆる対策がされるが、最終問題は、問題文を一文字も聞かずに回答した。なぜ、そんなことができた?


映画『君のクイズ』の話題があったので、思い付きました。


この作品は、web小説投稿サイト「ハーメルン」にも投稿しています。


 テレビ番組のスタジオ収録。

 スタジオの中央には、勝ち抜き戦のクイズ回答者と、司会者。三人が向かい合っている。

 周囲の客席には、一般オーディエンスが座っている。客席には、回答者の縁故者のグループもあり、横断幕を用意しているグループもある。

 

「さあ、勝ち抜きクイズ『究極のQ』の時間です」

 番組オープニングのファンファーレが、そのままBGMに繋がり、司会者がルール説明。

「回答者は、古今東西、究極のクイズに、早押しで答える、一対一のバトルです」

「先に十問正解すると、勝ち抜けです。勝ち抜く度に、賞金が増え、五人勝ち抜けで、高額賞金の獲得になります」

 フリップを出し、勝ち抜け人数と賞金額の表を見せる。勝ち抜け一人で「大将」、勝ち抜け二人で「親分」と名が付けられ、最高の勝ち抜け五人は「レジェンド」となる。

「ただし、五問連続で負けたらブービー撤退とし、罰ゲームとして、ブービーバニーになっていただきます」

 カメラは、番組アシスタントが並んで立っている場面を映す。

 回答者に、飲み物を運ぶ、バーカウンターがあり、数人のバニーガールがいる。

 バニーガールは、番組が用意したバニーガールだけでなく、ブービー撤退してバニーガールになった、ブービーバニーもいる。回答した時の服装に、バニーガールの絵が書かれたエプロン、頭に兎の耳を付けている。

 ブービーバニーは、バニーガールとして色っぽい人もいれば、笑っちゃうほど不気味なおっさんもいる。

「ブービーバニーになった姿がテレビを通じて全国で見られます。ということは、あなたの知り合いにも見られますよぉ」

 

「さあ、向かって左側、赤の席は、「ブリリアント肉車」さんです!」

 拍手。

「向かって右側、青の席には、「発酵ビタミン」さんです!」

 拍手。

「そして、バニーカウンターには、三人のバニーガール「ビューティーバニー」と、三人の「ブービーバニー」がいます」

 拍手。

「司会と出題は、わたくし、「アナウンサーQ」です」

 拍手。

 二人の回答者も、司会者も、ふざけた仮装をしている。ふざけた雰囲気を設けることで、緊張を緩和させるのが、番組の魅力のひとつ。

 ブリリアント肉車は、宇宙人のような銀色のレオタードで、頭に付けた触角も宇宙人を思わせる。触角はカタツムリのようでもあり、ぶらぶら揺れている。

 発酵ビタミンは、善玉大腸菌のような着ぐるみで、着ぐるみの表面はペイズリー柄なので、汚らしい黴菌を思わせる。

 司会者は、頭から胸まですっぽり被るツタンカーメンのマスクで、キラキラのモザイク状の金属板が眩しい。アンバランスに大きい眼鏡をかけている。

 この時、ブリリアント肉車が事件の渦中になると予想した人は、いなかった。

「出題の際には、「問題!」と言い、このアタック音が鳴ります」

 オーケストラヒットのような、短い音が鳴る。

「設問は、フェアにしています。例として、「人類で最初に、動力付き飛行機で飛んだのは、誰ですか?」のようにします。「人類で最初に、動力付き飛行機で飛んだのは、ライト兄弟ですが、人類で最初に気球で飛んだのは、誰ですか?」といった、設問は、ありません」

「簡単なクイズもあれば、超難問もあります。両者、いかに早押しできるかが、勝負の分かれ目です」

 客席も含め、理解と肯定の雰囲気。

 

「先週は、新しいレジェンドが生まれましたので、今週は、お二人共、新しい回答者です」

「ブリリアント肉車さん。クイズは得意ですか?」

「いえ。どちらかと言えば、組み立てパズルが好きです。地元では、ジグソーパズルの組み立て競争で、最速記録で優勝したことがあります」

「おやおや、それは面白い。この才能が、クイズに活かされれば良いですね」

「はい」

「では、発酵ビタミンさん。今日の仮装のテーマは?」

「はい。名前の発酵を、光る発光という駄洒落で、こうなります」仮装が、ビカビカと光る。

「これはまた、派手ですね」

「こんな光り方もできます」クリスマスのイルミネーションのように、時間差点滅する。

「正解の時や、勝ち抜けの時が、楽しみです」

 

 司会者が、大声になる。

「勝ち抜きクイズ『究極のQ』!」

 スタジオの照明が暗くなる。

 

「問題! この演説を行った、アメリカの大統領は誰? 人民の」

 ブリリアント肉車がボタンを押す。「アブラハム・リンカン」

「正解です!」

 拍手。

「外国の人名ですので、「エイブラハム」や「リンカーン」という回答も、正解です」

「次の問題です」

 司会者がスイッチを押し、机上のモニタの問題文を読む。

「問題! マルかバツかで、回答してください。ピストルの弾が体に直接、まともに当たっても、怪我をしないことがある」

 ブリリアント肉車がボタンを押す。「マル」

「正解です!」

 拍手。

「ピストルの弾を、ヒョイと投げられて、体に当たっても、怪我はしませんね」

 

 ブリリアント肉車が、五回連続で回答し、対戦相手の発酵ビタミンが、ブービーバニーになる。

 すごすごと、回答者席からバニーカウンターに歩く姿に、客席から声援が届く。

 バニーガールの絵が書かれたエプロンを着て、頭に兎の耳を付けた時には、客席から笑い声や、口笛。

「恒例の、記念撮影です」

 発酵ビタミンを中心に、バニーガールとブービーバニーが囲み、記念写真を撮る。

 この時間のうちに、次の回答者が席に座る。

 

「新しい回答者です。燦々プランターさん」

 拍手。

 ここでも、ブリリアント肉車が、五連勝する。勝ち抜け二人。

 スタッフの動きが、慌ただしくなる。

 客席から、秘かにサインを送っていないか監視したり。

 けれども、回答は早押し。客席からのサインを待っていたら、早押しに負けてしまう。

 

 勝ち抜けが三人になると、スタッフのブースから、速足で出入りする人、会議中の重役に耳打ちする人もいる。

 なぜなら、ブリリアント肉車の早押しが、異常だから。

 問題文の読み上げで、問題の主題となるところが出る前に、ボタンが押される。

 客席のざわめきも大きくなる。

 回答者が勝ち続けることは、珍しいが、それだけでは不正を疑われない。ブリリアント肉車が疑われているのは、ボタンを押す早さだ。

 

 四人勝ち抜けし、最後の五人目になったところで、スタジオ内は、騒然となる。

 対戦相手も、信じられないといった顔になる。

 スタッフは、ブリリアント肉車に、ふざけた仮装を外すように依頼する。衣装の中に、通信機などが入っているのではないかと、疑ったからだ。

 スタッフの中に共犯者がいて、正解を教えている可能性があり、それを防止するため。

 ボタンは早押しだが、押した後、回答するまでは数秒間の猶予がある。その間に、正解を受け取ることは可能だ。

「司会者の、眼鏡を外せ!」

 客席からの大声だ。

 司会者は、スタッフと目配せし、眼鏡を外した。これは、ふざけた仮装の一部であり、レンズは無い。レンズに問題文が反射することはないが、これで納得されるだろう。

「次の問題です」

 ブリリアント肉車は、司会者を凝視する。眉間には深い皺が刻まれ、やや目を細めている。口は無意識に開き、正面から見ると舌の裏が見えそう。

 司会者がスイッチを押し、机上のモニタの問題文を黙読する。そして、深呼吸の後、読み上げる。

「問題! 映画『みち……』」

 ブリリアント肉車が、ボタンを押す。

「1977年」

「正解です!」

 対戦相手が、激怒して立ち上がる。

「どういうことだ! 『未知との遭遇』なら、監督の名前や、自転車や、あれこれ、あるだろう! そもそも、「みち」で始まる映画だって、たくさんある!」

 客席では、ざわめきだけでなく、怒号も混じる。

 回答者席と客席の間に、目の細かい網が設置された。ブリリアント肉車の不正の疑念が出てから、不正防止のために用意が始められていた。

 

 次の問題では、もっと早くボタンが押された。

 スタジオ内は騒然。

 ブリリアント肉車は、汗を拭く。息も少し乱れている。

「ブリリアント肉車さん。なぜ、こんなに早く、正解できるのでしょうか?」

「はい。推測を重ね、可能性から選択し、推測を組み立てて、回答しています」

「多くの可能性がありながら、これまで連続して、推測が当たるのは、神がかっていますが」

「こんなことを言うと、超能力に思われるでしょうが、正解が見えるのです」

「正解が? 見える?」

 沈黙。

 スタッフが、書類袋を持って来た。司会者に耳打ち。

「皆さんの疑問も、もっともです。設問は、あらかじめコンピュータに保存され、ランダムに選択されます」

「設問は、厳重管理されていますが、スタッフが不正に関与している可能性があり、ここに、新作設問が届きました」

「この設問は、問題作成スタッフが、密室で作成し、その場で封緘したものです。今、ここで初めて、開封します」

 司会者は、慎重に開封し、指先で一枚を摘まみ、出す。

「問題! ひか……」

 ブリリアント肉車は、最初の二文字で早押しボタンを押した。正解した。

 客席から、物が投げられるが、回答者席との間の網に当たって落ちる。

 

 いよいよ、最後の問題。これでブリリアント肉車が勝てば、最高位の「レジェンド」となる。

「会場の皆様、お静かにお願いします」

 司会者が、重々しく、封筒から問題用紙を出す。回答者席から見えないように、水平のまま、紙が湾曲しないように。

 会場は、水を打ったように、静かになる。

「問題!」

 ブリリアント肉車がボタンを押し、叫ぶ。

「木星!」

 会場は大騒ぎ。

 司会者は、立ち上がり、机上のマイクを手に持った。

「お静かに、お静かに! 答えは……」

 会場が静かになる。

「……木星、正解です」

 スタジオ内では、レジェンドを祝う紙吹雪や、ファンファーレが鳴る。

 司会者が、ブリリアント肉車の席に行く。

「お……、おめでとうございます。レジェンドです」

「ありがとうございます」

「改めて、教えていただけますか? 推測を重ね、可能性から選択し、推測を組み立てて、回答が見えるとは?」

「はい、これです」

 司会者の、ふざけた仮装の、ツタンカーメンに似た被り物を指す。

 ブリリアント肉車は、心労のせいか、汗を拭き、息を整えながら言う。

「当たり前ですが、司会者は、問題文を読み上げる前に、まずは全体を黙読しますよね」

「はい」

「ここに、問題文の文字と、正解の文字が、バラバラに散らばって、反射して見えます。バラバラの文字から、推測を重ね、可能性から選択し、推測を組み立てると、答えが見えます」

 ツタンカーメンに似た被り物の、キラキラのモザイク状の金属板は、鏡のように文字を映す。

「地元でジグソーパズルの組み立て競争で、最速記録で優勝したことがありますので、その効果かも」





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― 新着の感想 ―
タネはありましたし、番組側の不備とも言えますが、紛れもなくブリリアント肉車の実力によるレジェンドですね。 私がもし視聴者だとしたら、素直に賞賛してしまうと思います。
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