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ゴブリンを甘く見るな!――元最強ギルドマスターの俺がゲーム序盤に転生、未来知識を武器に見習い傭兵から成り上がって王になるまで  作者: 窮北の風


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第7話 心境の変化

「つまり、その隊伍には何十匹ものゴブリン兵がいたっていうのか?しかもエリート戦士まで?」

「それで、たまたま通りかかった正義のメイジいが炎の魔法でそのゴブリンのエリートを倒した?」

「最後は、その混乱に乗じてお前が逃げ出してきたと?」


「……は、はい」


 小隊のメンバーがまるで幽霊でも見たかのような顔をしているのを前に、私は少し気まずくなって視線を落とした。これほど波乱に満ちた話は、まるで吟遊詩人が語る英雄譚のようだ。誰の身に起きたとしても、にわかには信じがたいだろう。


 今回の任務は、このままうやむやのまま終わるのだろう――そう思ったその時だった。ドワーフのシモンズ(Simmons)が、こっそりと他の二人に目配せをして、突然ニヤリと笑った。


「お前らも知ってるだろ。チカ町の冒険者ホールには、ずっとゴブリン討伐の懸賞が出てる。緑皮の耳一つで銀貨一枚だ」


 その瞬間、焚き火の前の空気が、ぴたりと固まった。


 半獣人のルク(Luku)は、手の中のくたびれた鉱夫袋をぎゅっと握りしめ、顔を上げる。


「つまり……お前の言いたいことは……?」


「俺が昔、民兵だった頃の経験から言うとな。ゴブリンの軍隊って言っても、兵の数は多くても二十匹くらいだ。それに、もしそのメイジいが首領を倒したなら――ゴブリンの性質からして、残りの連中は仲間の死体なんて放り出して逃げるはずだ。ってことは……」


「ってことは、今のゼス村は銀貨だらけってことだ!」


 隊長カッセ(Kasse)の説明が終わる前に、シモンズが興奮した様子で言葉を継いだ。


「銀貨だって!」


 ルクの声は、普段の低い声を押し殺そうとしていたが、かえって甲高くなってしまっていた。

 だが、次の瞬間、その声はぴたりと止まる。


「で、でも……それってメイジい様の戦利品じゃ……」


「安心しろよ。俺の義兄貴が言ってたが、メイジいってのはな、魔力がこもったパンツ一枚でも金貨何十枚の価値があるらしい。こんな銀貨なんて、拾うのも面倒で手が汚れるって思うだけさ」


 隊長カッセは一見冷静に頷いた。しかし、その目の奥には、同じように興奮と期待がきらめいていた。


 今回、彼が「ゼス村失踪調査」というEランク任務を引き受けた本当の理由は、村の西にある鉱洞で珍しい鉱石を掘り当てることにあった。


 そうでもなければ、報酬一人四十五銅貨の依頼など、道中の食費にも足りない。


 今や、おそらく無人となったゼス村は――完全な戦力を持つ冒険者小隊にとって、まさに金鉱のような場所だった。


 多少の危険はある。だが、得られるかもしれない利益に比べれば、その程度の危険など取るに足らない。


 それに、冒険者というものは、少しの危険すら引き受けられないなら、家に帰って畑でも耕していればいいのだ。


 ゼス村の住民がなぜ消えたのか。彼らはどこへ行ったのか。

 そんな問題は、そもそも短時間で自分たちが解決できるものではない。だから時間を無駄にするという考え自体が存在しない。


 やがて、胸の奥に湧き上がる欲望に突き動かされるように、三人はゼス村の位置、突入前の準備、さらには戦利品の分配まで――熱心に計画を立て始めた。


 私はその話し合いには加わらなかった。


 というのも、つい先ほど私が

「ゴブリンの軍隊が現れたことを、すぐに報告すべきでは?」

 と口にした瞬間、返ってきたのは、三人分の露骨に嫌そうな視線だったからだ。


「お前は怪我人なんだ。大人しく指示に従ってりゃいい」


「へえ、見かけによらず高潔なお坊ちゃんだったんだな、臨時メンバーさんは」


 ルクとシモンズは、私の提案を露骨に馬鹿にした。二人は容赦なく皮肉を浴びせてくる。

 隊長はそのやり取りには加わらなかったが、最後にただ淡々とこう言った。


「別に構わない。ただし帰り道は自分一人で歩け」


 その意味は明白だった。


 ――みんな金を稼ぐために来ている。

 ――正義なんてものを押しつけるなら、森の中に置いていくぞ。


 正直に言えば、もし怪我さえなければ、そして一時間の虚弱状態さえなければ、Lv3の能力値でも私は一人でチカ町へ戻れただろう。


 だが今の私は、普通のゴブリン一匹にすら勝てるか怪しいほど弱っている。

 彼らはそれを見抜いている。だからこそ「一人で帰れ」などという言葉で私を嘲ったのだろう。


 あの時、私は本当に立ち去りかけた。ゴブリン軍の奇襲という情報を報告することこそ、何より優先されるべきことだからだ。


 私の知る歴史では、この時期、西南山脈のゴブリンは、すでに一つに統一されつつある。


 その中心にいるのが、一匹の異端児――グリン・ダン(Grin Dan)。


「伝説」と呼ぶには少し大げさかもしれない。だがゴブリンという種族にとって、魔法を使え、さらに近接戦闘でも強く、高い知能を持つ個体など、もはや伝説そのものだ。


 噂によれば、グリン・ダンの母はダークエルフ。その混血の血が、彼に異常な知性と力を与えたという。


 そしてちょうどその頃、古きロニクス王国は衰退の道を歩み始めていた。


 一方は勢いを増しながら山奥で木の皮をかじる種族。もう一方は衰えながらも、美酒とパンを抱える王国。両者の衝突は、もはや避けられない運命だった。


 未来の戦争で、このゴブリン軍団は、アララン大陸全土を驚かせるほどの統率力と判断力を見せることになる。だが残念なことに、ロニクス王国が国土の大半を失うその日まで、誰一人として本当に警戒しなかった。


 山々の奥に潜むあの種族は、すでに台頭し始めていた。

 そして間もなく、最盛期を迎える。


「……あいつらは、もうお前たちが知っているゴブリンじゃない」


 私はそう叫びたかった。

 だが、それに何の意味がある?


 しばらくして、ようやく私の気持ちは落ち着いてきた。


 そして私は気づいた。

 これこそが、本当の世界なのだ。


 人間社会の食物連鎖の底辺にいる普通の人々は、熱血など持っていない。「栄光」や「正義」などという言葉を、毎日口にすることもない。


 彼らが考えるのは、ただ一つ。


 ――今夜、腹いっぱい食べられるか?

 ――妻は温かい白マッシュルームのスープを飲めるか?

 ――子どもたちの服は寒さを防げるか?


 依頼を受けるのも、モンスターを倒すのも、すべては命を賭けて金を稼ぐためだ。


 それは間違っているのか?

 いや、間違っていない。


 恥ずべきことなのか?

 もちろん違う。


 それこそが、生身の人間として生きる普通の人々の――

 本当の「誇り」なのだろう。


 そこまで考えて、私はさっきの自分の態度を少し恥じた。


 この世界の未来を知る転生者である私は、ロニクス王国の情勢も、ゴブリンの習性も、この冒険者小隊の誰よりもよく知っている。


 だが、その「優越感」が、どこか自分を高い場所に置き、この世界の人々をすべてNPCのように見てしまっていた。まるで自分が主人公で、彼らは私の指示に従う存在であるかのように。


 彼らの考えを理解しようともせず、彼らの気持ちを気遣うこともなく――気づいていなかったのだ。転生したその瞬間から、この世界はもう「ゲーム」ではなく、血の通った現実になっていたことを。


(……本当に、すまない)


 その言葉を私は口には出さなかった。

 ただ心の中で、静かに呟いた。


 そして、少し離れたところで計画を立てている「役立たず小隊」を見つめながら、

 私はもう一つの決意を胸に抱く。


 コロン、

 この世界に生きるすべての人を、

 できる限り大切にしろ。

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