第5話 覚醒する才能
その頃、家の中の火勢はますます強まり、立ち上る炎はやや湿った丸太を舐めるように燃え広がり、火に炙られた木材からは黒々とした濃い煙が次々と噴き出していた。
私自身も煙にむせて何度も咳き込みながら、後退して階段へと下がり、手にした松明を何度も振り回して、徐々に包囲してくるゴブリン兵を追い払おうとしたが、その効果はほとんどなかった。
室内の温度は刻一刻と上昇し、ゴブリン兵たちも苛立ち始めている。最前列に立つ兵士はすでに私から三歩も離れていない距離まで迫っていた。時折長剣を突き出してくるが、誰一人として本当に突撃してくる者はいない。
ゴブリン精鋭戦士の指揮を失ったことで、残った兵士たちは本能を露わにしていた。野蛮でありながら臆病、狂暴でありながら勇気に欠ける――それが彼らの本質だった。
そしてその一瞬の躊躇こそが、私に二階へ続く階段へ退く時間を与えてくれた。
狭い通路に立ち、下の居間にひしめく黒い影のような緑の怪物たちを見下ろしながら、私は悔しさを噛みしめていた。
「もし転生するとき、ゲームのレベルまで持って来られていたら……こんなゴブリン兵なんて一撃だったのに……」
待て!
その瞬間、私は重大なことを見落としていたと気づいた。
さっき私は洞察の指輪で三体のゴブリンを倒したはずだ。しかもその中には精鋭戦士も含まれている。さらに二階ではゴブリンの斥候も倒している。つまり、経験値が入っているはずなのだ。
量は多くなくても、ゲームのルール通りなら職業レベルが上がるだけの経験値は十分あるはずだ。なのに、これだけ時間が経っても何の反応もないのはなぜだ?
そう思った私は慌てて頭の中でステータス画面を呼び出した。
【名前:コロン】
【種族:人間】
【職業:傭兵(Lv1)】
【経験値:16 / 5】
【経験値を消費して『傭兵』の職業レベルを上げますか? YES / NO】
「なんて間抜けなんだ……!」
見慣れたレベルアップ表示を見た瞬間、私は安堵すると同時に、自分の愚かさに腹が立った。ベテランプレイヤーのくせに、レベルアップ時には職業を選択しなければならないことを忘れていたのだ。
正直言って「傭兵」という職業は将来の昇進先も微妙で、貴重な経験値を投資する価値はほとんどない。だが今この瞬間、私に他の選択肢はなかった。
どんなに無駄でも、冷たい死体になるよりはマシだ。
「YES!全部使ってレベルアップだ!早く!」
心の中で必死に叫びながら最後の段を踏み上がる。背後はすでに壁。その瞬間、濃煙を突き破って三本の剣が目の前に現れた。
光のパネルが一瞬輝き、数値が変化する。
【職業:傭兵(Lv3)】
【経験値:3 / 20】
同時に、心臓の奥から温かな流れが湧き上がり、瞬く間に全身へ広がった。寒冬の中で温泉に浸かったかのような感覚に包まれ、蓄積していた痛みも疲労も一瞬で消え去る。
職業レベルアップによる回復効果だけでなく、私自身の能力値も変化していた。
【力:4 → 6】
【知力:3(+1)】
【敏捷:3 → 4】
【耐久:5 → 6】
とはいえ平均すれば、ようやく「体格の良い一般人」レベル。今の状況を劇的に変えるほどの力ではない。
だが、問題はそこではない。
ゲームでは、キャラクターがレベル1から2へ上がる瞬間、人生で一度だけ「天賦スキル」を獲得できる。
そう、たった一度。
完全にランダム。
そして誰にとっても平等な一度きりの機会だ。
その瞬間、時間が無限に引き延ばされたように感じた。三本の剣の切っ先が私の皮膚に触れる直前、目の前の光幕がまばゆく輝き、一枚の彩色された紋章が浮かび上がった。
【天賦:無畏】
【効果:HPが10%以下になると発動可能】
【発動中、全ステータス上限+300%】
【拘束・出血無効、痛覚90%軽減】
【持続時間:1分】
【注意:必殺攻撃は無効化できない】
【注意:終了後、1時間の虚弱状態(全能力-50%)】
その文字を見た瞬間、私の目の奥に炎が灯ったような感覚が走った。迫る剣を前に、私はわずかに体をひねり、心臓や下腹部といった致命部位だけを避けた。
ザシュッ!
ドッ!
ブスッ!
一本は腰を裂き、残り二本は太腿に突き刺さる。回復したばかりのHPは一瞬で底をついた。
私は深く息を吸い込み、『無畏』を発動した。魂の奥底から、今まで感じたことのない力が湧き上がる。
力18。
知力9+1。
敏捷12。
耐久18。
わずか一瞬で、私の能力値はレベル7相当へ跳ね上がった。さっきのゴブリン精鋭戦士さえ上回っている。先ほどまで震えるほど痛かった傷口も、まるで存在しないかのようだった。
手の長剣は羽のように軽く、敵の動きは亀のように遅い。その変化は、まるで自分が神にでもなったかのような錯覚を与えた。
「来い!追い詰められた人間がどんな覚悟を見せるか――思い知れ!」
私は長剣を横薙ぎに振り抜いた、三体のゴブリン兵の喉が同時に切り裂かれる。
黄色い血が噴き出すより早く、私はその隙間をすり抜け、後方のゴブリンの胸へ剣を突き立てた。剣柄を押し込み、その死体を盾代わりにして階段を一気に駆け下りる。
力18という圧倒的な腕力の前では、立ち塞がるゴブリン兵はまるで抵抗できず、次々と押し退けられていった。
一階の床へ降り立った瞬間、剣に串刺しになった死体を頭上へ掲げ、横へと乱暴に投げ捨てる。
その狂気じみた突撃に圧倒されたのか、周囲のゴブリンは誰も私の前に立とうとしなかった。
その隙を逃さず、私はついに家の外へ飛び出した。
だが心の中では分かっていた、この天賦は一分しか持たない。この短い時間で逃げ切れなければ、虚弱状態に入った瞬間、ゴブリンに殺されるまでもなく失血で死ぬ。
やがて息を切らしながら森の縁まで走った頃、視界はすでにぼやけ始めていた。
考えるまでもない。天賦の時間が終わろうとしているのだ。
「もう少しだ……!もっと遠くへ……!」
耳に残るのは風の音だけ、いつの間にか手の長剣は落ちていた、頭もぼんやりしてくる、周囲の世界が急に静まり返った。
それでも私は止まらなかった、感覚を失った両脚をただ機械のように動かしながら、村の西にある鉱山の洞窟へ向かって走り続けた……




