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中二病の儀式が成功して世界を殴る係になりました  作者: てん


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3/17

第4話 名前を聞いて、世界を殴って、また怒られる

 ギルドからの帰り道。

 俺は、ふと大事なことに気づいた。


「……あれ?」


「なに?」


 ヒロインが横目で見る。


「そういえばさ……

 まだ名前、聞いてなかった」


「……」


 一瞬、沈黙。


「今さら?」


「今さらだね……」


 俺は頭を下げた。


「助けてもらってるのに、

 失礼でした。

 俺、名前は――」


「それはもういいわ」


 彼女はため息をついてから、言った。


「リィナ。

 それが私の名前」


「リィナ……」


 口に出すと、

 なぜかしっくりきた。


「よろしく、リィナ」


「……はいはい」


 少し照れたように、そっぽを向く。


 少し歩いてから、

 俺はもう一つ、気になっていたことを聞いた。


「それでさ……

 どうして、ずっと一緒に行動してくれてるの?」


 リィナは立ち止まった。


「助けてもらったから?」


「それもあるけど……

 正直、俺、色々やらかしてるし」


 彼女は空を見上げて、真面目な顔で言った。


「理由は一つよ」


「うん」


「誰かが止めないと、

 世界が滅びるから」


「……ですよね」


 否定できなかった。


⸻


 その時だった。


 空が暗くなり、

 雨がぽつぽつと落ちてくる。


「雨、降ってきたわね」


「ほんとだ」


 俺は空を見上げる。


(このまま降ったら、

 宿まで濡れるよな……)


 ――思った、その瞬間。


「よし」


「ちょっと待って」


 リィナの制止より早く、

 俺は空に向かって拳を突き上げた。


 ドンッ!!


 雲が、消えた。


 雨雲は跡形もなく消散し、

 青空と太陽が顔を出す。


「……」


「……」


「やった!

 晴れたよ!」


 振り向いた、その瞬間。


「……」


 リィナが、無言で自分の服を押さえている。


「……え?」


 さっきの衝撃波で、

 またしても布地が限界を迎えていた。


「……」


 俺の顔が、みるみる青ざめる。


「……空殴る前に、

 後ろ確認しなさい!!」


「すみません!!」


 その時。


「うわっ!?」


 近くを歩いていた中年のおじさんが、

 頭を押さえて叫んだ。


 風に乗って、

 何かがくるくると飛んでいく。


「……」


「……」


 おじさんは慌ててそれを拾い、

 頭に貼り付ける。


 ――四角い海苔。


「……」


 リィナが、即座にツッコミを入れた。


「それ、

 カツラじゃなくて海苔です」


「えっ!?」


 おじさんは固まり、

 次の瞬間、真っ赤になった。


「あっ……!

 こ、これは……違うんだ!」


「違わないです」


 俺はその場に正座した。


「……また?」


「はい……」


 リィナは腕を組み、説教を始める。


「雨を止めたいなら、

 屋根を探すとか、

 走るとか、

 普通の方法があるでしょ!」


「はい……」


「空を殴るのは、

 最終手段だから!!」


「はい……」


 怒られているのに、

 なぜか俺は――


「……?」


 口元が、緩んでいることに気づいた。


「……ちょっと」


 リィナが睨む。


「なんでニヤけてるのよ」


「い、いや……」


 正座しながら怒られるのが、

 なんだか癖になりそうで。


「……M体質?」


「たぶん……」


「自覚あるなら直しなさい!!」


 一方その頃。


 おじさんは照れ笑いを浮かべながら、

 改めて本物のカツラを拾い上げ、

 そっと頭に戻していた。


「……見なかったことにしてくれ」


「はい」


 リィナは即答した。


 晴れた空の下。


 怒られ、

 呆れられ、

 それでもなぜか楽しくて。


 ――俺の異世界の旅は、

 今日も平和(?)だった。


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