7 クリアネイル
現実世界へと帰ってきた。
震える手で金貨を数えると200枚だった。
価値が分からないけど1枚千円って事はないと思う…。
やっぱり1万円ぐらいな気がする。流石に1枚10万円って事は無いはず。…無いよね??
1枚1万円と仮定して1回の仕事で200万ってヤバくない!?
ネイリストを10年やって、プロ意識もあるが自分の1日に200万円の価値があるとは思えない。
…異世界怖い。
まあ換金出来ないから結局0と言えば0だし気にしなくて良いか。
そう思いたいが気になるし、常に頭から離れない…。
こっちに帰ってきて次にお土産として持っていこうと思っているクリスマス雑貨を見に行ったり購入する。
あまり大きい物を持ち込むのは良くない気がして卓上に置けるような物を中心に選んだ。
100円ショップでも沢山の可愛いクリスマス雑貨があり値段も安いし沢山買ってしまった。欲しい人が居れば皆に配りたいと思うし、余るぐらいが丁度良いと思う。
他の雑貨屋さんでも卓上の50cmのクリスマスツリーやスノーマンのぬいぐるみなども購入し、お土産を纏めて準備しておく。
ちょっと大荷物な気もするがなんとか持てるから転移をするのに問題は起きないハズだ。
◇◇◇
「師団長! ネイル? というのはどうでしたか?」
「ああこれは凄いぞ! 感覚で言うと10倍ぐらいは威力が上がっている気がする。この後魔法研究所に実験結果の報告や威力を見せに行くんだ。今日ネイルをした奴は皆呼ばれてるさ」
魔法研究所に集まる今日ネイルをしたメンバー達。
カラフルネイルの近衛師団長エリック、パープルネイルの魔法研究所所長ジェイソン、雪降るラメグラデーションネイルの第2王女付き護衛騎士マリサ。
第3王女はプリンセスネイルをしているがこの場にはもちろん呼ばれていない。
数時間だった初日はエリックの数本のネイルしかしていない為研究所に集められることは無く、今回が初の報告会となる。
そもそも”魔力は爪から放出され、ネイルをする事で放出を抑え魔力の増加や魔法の威力が上がる”という研究は前所長の頃からジェイソンに受け継ぎ長年研究をして来た成果であり、スタートラインからやっと1歩進み、これから更に研究が進むであろう所まで来た。
この研究で魔力が無く魔法を使えない者が使えるようになったり、戦いにおいて今以上の成果を出す事等大きな可能性を秘めており国王が支持している研究となる。
その第1回と言える報告会では、エリックやジェイソンの魔法の威力を細かくチェックし、その後の変化の違いを見ていく事が決まった。
マリサにおいては、魔法を使う練習から、今後使えた場合の威力のチェック等が行われる。
マリサは魔法がまだ使えないが、ネイルをした事により剣術が更に上がりこれについても並行して調べていくことが決定した。
「…。所長になれたおかげで、間近で魔力の変化を見る事が出来ました。師匠の長年の研究が進みそうでこれほど研究者で良かったと思う日は無いかもしれませんね」
「俺もですよ。師団長まで上り詰めたが、更に魔法が強化され模擬戦が楽しくて楽しくて…。次はどんな色でどんな効果が出るのか既に楽しみだ」
「私も。魔法を使えずバカにされる事もありましたが、もしかしたら使える未来が来るかと思うと…! 」
◇◇◇
これまた普通の日常である現実世界で仕事をしていると1週間はあっという間に過ぎいよいよ異世界出張の日だ。
持って行く仕事道具やお土産、絶対に忘れてはいけないトイレットペーパーをしまったトートバッグを抱えその時を待つ。
今回も時間丁度に転移した。
今まで緊張もあり気付かなかったが転移される時にフワッと体が浮くような感覚があった。船酔いや乗り物酔いをする人はおそらく酔うだろう。
転移すると、いつもの毒使いさんとメイドさん達と前回ラメグラをした彼女、そして見たことのない方が何人か並び歓迎の言葉を掛けられる。
既に準備されている机に道具のセッティングをして準備完了だ。
今日はどうするかのを聞くと代表の方なのか毒使いさんが答えてくれた。
「本日は魔力が無いとされている6人のネイルをお願い致します。時間内で出来るだけの人数で構いません」
詳細を聞くと、前回ラメグラのネイルをした彼女は基礎魔法である生活魔法が使えるようになったそうだ。
威力に関しては他の人と比べると小さいそうだが今まで出来なかったことが出来るようになったので、王宮勤めの魔力が0の人達全員にネイルをし、全員が魔法を使えるようになるのかを調べたいそうだ。
また、ネイルのデザインによっての変化も見たいとの事でシンプルから派手な感じまで色々とやって欲しいとの事だった。
まず1人目の方から。
彼は王宮の料理人という事だったので、彼のネイルはストーン等のデコレーションが無いシンプルなネイルにする事にした。
ストーン等が取れて料理に混入しない様に飾りは無しだ。
色味等も自由にやって良いのだが、彼はあまり目立たないネイルが良いとの事だったのでクリアにする事にした。
クリアネイルは現実世界でも補強目的でされる方が多いし、目立たないので丁度良さそうだ。
まずプレパレーションで浄化をし、ベース1層、トップ2層の合計3層で仕上げる事にした。
そもそもプレパレーションで浄化をするって何だよ! という気持ちは心の奥に仕舞う。
クリアネイルはジェルのメーカーにもよるがトップジェルの方が粘度があり厚みが出るのでこの方法にした。
いつもよりも工程が少ないので約40分で終了だ。
すぐにメイドさんが持ってきた魔力測定器で測定をすると手全体でも各指でも20と表示された。
前回のラメグラネイルをした彼女はアートなしのラメグラで30、アートありの指は50となっていたが、彼のネイルはクリアコートのみの3層だったからなのか20という結果だった。
現実世界では基本的にする事は無いが5層や6層等にしたらどうなるのか気になる。
厚みがあり過ぎると持ちが悪くなる事もあるので現実世界ではやらないが、この世界だとどうなるんだろう?
持ちが悪くても魔法の威力アップに繋がるのならアリのような気もする…。
実際にやってみないと分からないし後で毒使いさんに聞いてみよう。
◇用語集◇
クリアコート:クリアジェルを塗ったという事。ネイルでは塗った層のことをコートという。ベースコート、カラーコート、トップコートなど。




