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君の血が飲みたい

「...やだ」


「もう。ほんと頑固ですね」


諒真はそういった後、腕の切り傷の血をズッと啜った。


「諒真...何して...んだ」


諒真は俺が戸惑っているのを気にも留めず、口に含んだ血を俺の口へ移す。


「んっ...」


口移しされた瞬間、諒真の体温と鉄の味が混ざって、何かがぷつんと切れた。

その血を飲み込み、諒真の口が離れた瞬間、俺は諒真の首元に噛み付いた。

そしてそのまま、血をゴクゴクと飲んだ。


「...そうです。それでいいんですよ」


諒真が少し辛そうにそう言う。


(...諒真、痛いよね...早く止めないと...)


そう思ったのに、体が言う事をきかなかった。止めようと思っても止まらない。今はただひたすらに血が欲しかった。


「…瞬さん。そのままもっと飲んでください。俺は大丈夫ですから」


″俺は大丈夫ですから″


その一言で、俺の中の熱が一瞬で冷めた。俺はパッと諒真の首元から口を離す。


「あっ…ごめんっ、諒真。大丈夫?」


「…大丈夫ですよ。もういいんですか?」


そう言う諒真の腕を俺は見る。腕からはまだ、血が出ていた。そして、明らかに顔色が悪い。


「…何が大丈夫だよ!こんなに血が出てるのに…!」


俺が怒鳴るようにそう言うと、諒真はふふっと笑う。


「…こんなの、どうってことないですよ。…瞬さんこそ、もう大丈夫なんですか?」


諒真は少し苦しそうにそう言う。


「俺はもう大丈夫だから。とにかくここを出よう」


俺は立ち上がり、ドアへ向かう。ドアノブを回して引いてみるが、鍵がかかっているようで開かない。

俺はドアをドンドンと叩く。


「開けてください!諒真の命が危ないんです!」


俺はドアの向こうにそう叫んだが、返事はなく、人気はないようだった。


(どうしよう…このままだと諒真が…)


そう思って振り向くと、諒真は横になっていた。

俺は慌てて駆け寄る。


「諒真」


「…なんですか」


諒真はか細い声でそう言う。意識が朦朧としているのだろうか。俺の心臓がバクバクと鳴る。


「絶対死なないで」


「…大丈夫です…俺は死なないですよ」


諒真は説得力のない声でそう言う。


「…待ってて」


俺は諒真にそう言って再びドアに向かう。そしてドアをドンドン叩いた。


「開けてください!お願いします!」


ドアに向かってそう叫ぶが、先程と同様に何も起こらない。俺は諦めず、ただ叫び続けた。

少しして、遠くからパトカーと救急車のサイレンの音が聞こえた。こちらに近づいてきているようだ。


(誰か気づいてくれたのかも…!)


俺は諒真の元へ駆け寄る。


「諒真、今助けが来てくれたかもしれないから、もう少しだけ頑張って」


「…よかった。これでまた…瞬さんと…」


そこで言葉は途切れ、諒真は目を閉じた。


「諒真?」


そう呼びかけるが、返事がない。


「諒真!…諒真!目を開けて!」


俺はそう叫んだが、諒真は目を閉ざしたままだ。

その時、後ろの扉の方から複数人の足音がする。そして、扉の向こうから声がした。


「誰かいますか?」


俺はそれを聞いてドアに向かって叫ぶ。


「います!助けてください!怪我人がいるんです!」


「今開けますから、安心してくださいね」


ドアの向こうからそう聞こえた後、扉が無理やりこじ開けられる。扉が開き、人が入ってきた。警察だ。


「もう大丈夫ですからね」


そう言う警察の後ろから担架を持った人達が入ってくる。そして、医者らしき人が諒真の状態を見る。

諒真は担架に乗せられ、運ばれてく。そして、諒真は救急車に乗せられ、病院に運ばれた。俺は警察の事情聴取を終えた後、諒真の元へ向かった。

諒真のいる病室は、心電図の電子音だけが、静かな病室に響いていた。

俺はベッドの脇に座り、諒真の手を握る。


「…諒真、ごめん。俺のせいで…」


(あの時、諒真のことを信じてすぐに血を飲んでたら、こんなことにならなかったかもしれないのに…)


俺は罪悪感に駆られながらも何も出来ず、ただ諒真の手を握り、目を覚ますのを祈るしかなかった。

あの夜から、どれくらい時間が経ったんだろう。外はもう、真っ暗になっている。


(このまま目を覚まさなかったらどうしよう…)


俺はそう不安になる。


「諒真、お願いだから目を開けて…」


俺は諒真の手をぎゅっと握りながらそう言った。けれど、諒真はずっと目をつぶったままで、目を覚ましてくれない。


「諒真」


そう言う俺の声が震えた。目からは涙も出ていた。俺はそのまま、しばらく泣いてると、諒真の目がゆっくりと開く。俺は慌てて呼びかける。


「諒真!俺だよ、分かる?」


「…分かりますよ。俺の大好きな人です」


諒真はそう言ってぎこちなくもニコッ笑う。俺は安堵し、また涙がこぼれた。


「何泣いてるんですか」


「だって…もう目覚まさないかと思ったから…」


俺が泣きながらそう言うと、諒真はそっと俺の顔に手を差し伸べ、俺の涙を拭う。


「言ったじゃないですか。俺は死なないですよって。瞬さんのこと、1人にしたりしないです。だからもう泣かないでください」


「…わかった」


俺は涙を拭って立ち上がる。


「お医者さん、呼んでくるね」


そして診察が終わり、医者の話を聞いた。諒真はしばらく入院が必要とのこと。しばらく入院すればいつも通りの生活を送れるらしく、俺はホッと息をついた。医者が部屋を出ていくと、ベッドに座っていた諒真が俺を呼ぶ。


「瞬さん」


「なに?どっか痛い?」


「いや、違います」


「じゃあどうしたの?」


「ただ、また瞬さんとこうやって話せるのが嬉しくて」


諒真はそう言ってニコッと笑う。


「…なんだよそれ」


いつもの調子の諒真に安心しながらも、俺は少し照れてしまう。そんな俺を諒真はもう一度呼ぶ。


「瞬さん」


「…なに?」


少し間を置いて答えると、諒真は自分の口を指さしながらニコッと笑う。


(もしかして…)


俺は諒真の顔に自分の顔を近づける。1度目を逸らしてしまったが、もう一度諒真と目を合わせた後、諒真の口にそっとキスをした。

口が離れた瞬間、恥ずかしくなりパッと顔を離す。


「…病み上がりのくせに欲求不満かよ」


「でも、瞬さんだってしたかったんでしょ?素直にしてくれましたし」


諒真はそう言って満足そうにニコニコ笑う。


「ま、まぁ…そうかもな」


俺がそう言うと、諒真は少し驚いた表情をした後、嬉しそうに笑う。


「瞬さんが素直だ」


「俺もう、自分の気持ち隠さないって決めたの。だから…」


そこで1度止まり、俺は諒真の目をまっすぐ見る。


「だから、これからはちゃんと素直な俺でいるから」


「ほんとですか?」


「うん。今から証明するね」


俺がそう言うと、諒真は不思議そうに俺を見る。そんな諒真に俺はそっとキスをした。


「諒真、好きだよ。これからもこの先もずっと、諒真のこと大好きだよ」


俺がそう言うと、諒真は驚いた表情をした後、ニコッと笑って言う。


「俺も大好きです。これからもこの先も」


そんな諒真を俺は呼ぶ。


「諒真」


「なんですか」


「やっぱり…諒真の血が飲みたい」


俺がそう言うと、諒真はクスッと笑う。


「なんですか、それ」


「諒真の血はすごく美味しいから」


「そうですか?それなら、いつでもいくらでも飲んでください」


「じゃあ、いつでも遠慮なく」


俺がそう言って微笑むと、諒真は少し照れたように笑い、俺の頬を撫でた。


「ねぇ、瞬さん」


「ん?」


「俺の血も、俺の全部も、ずっと瞬さんのものですよ」


「俺の全部も、ずっと諒真のものだよ」


そう言いながら笑う2人の笑い声が、白い病室にやわらかく響いた。

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