第29章 沈黙の告発
爆破テロから数日後、街はまだ傷跡を癒やせずにいた。桜の園の残骸は瓦礫の山と化し、そこにかつての生活の痕跡はほとんど残っていなかった。遺族や関係者の悲嘆は深く、ニュースやSNSでは連日のように被害者を追悼する声が溢れていた。
真希は遺体安置所で、身元確認のために遺品を整理しながら、無念の思いを胸に刻んでいた。知的障害者たちが人間としての尊厳を踏みにじられ、あまりにも無力に命を奪われた事実が彼女の心を締めつけた。
「どうして、こんなことが起きるのか……」静かな声が漏れた。
一方、藤森は警察の捜査会議室で、関係者たちと情報を共有していた。神崎の陰謀の全貌は徐々に明らかになりつつあったが、彼を直接捕らえる証拠はまだ不十分だった。
「我々は真実を追い求めるだけだ。たとえどんなに深い闇があっても」藤森は力強く宣言した。
その夜、真希は自宅でひとり、匿名のメールを受け取った。添付されたファイルには、神崎の黒幕としての活動や、裏取引の録音データが含まれていた。
内容は衝撃的で、彼女は慌てて藤森に連絡を取った。
「これは、決定的な証拠になるかもしれない」
しかし、彼女の背後には見張りの影が迫っていた。神崎の手下が彼女の行動を監視し、次の一手を狙っているのだ。
二人は改めて協力を誓い合い、黒幕の正体を暴くため最後の戦いに挑む覚悟を固めた。




