第28章 灰燼の叫び
朝もやの立ちこめる大阪市内、緊急出動した救急車と消防車のサイレンが街を切り裂いていた。爆破テロが起きたのは、知的障害者を中心に収容していた小規模な福祉施設、「桜の園」だった。焼け落ちた建物からは、まだ煙が立ち上り、焦げた木材と鉄骨の匂いが鼻を突いた。
現場に駆けつけた真希は、顔を硬く引き締めていた。救助作業は続いていたが、被害は甚大だった。死傷者の数はまだ確定していないが、恐らく数十名に及ぶだろうという報告が入っていた。
「こんなことが……」彼女の声は震えていたが、すぐに現場指揮を取り始めた。
その一方で、藤森もまた現場に到着していた。彼は煙の中で倒れている被害者を見つけるたびに、胸が締め付けられる思いだった。彼の体にはまだ銃撃戦の傷が残っているが、そんなことは気にならなかった。
「この街は……どうしてこんなに血に染まるのか」藤森は呟いた。
捜査官たちが現場の周囲を封鎖し、証拠の収集を始めた。だが、現場は激しい爆発によって壊滅的な状況であり、遺留品や証拠品の収集は困難を極めた。
その時、現場の一角で若い女性が膝をついて泣き崩れているのを真希は見つけた。彼女は施設の職員の一人で、爆発時には勤務中だったという。
「何があったのか教えてください」真希は優しく声をかけた。
女性は震える声で語り始めた。
「突然、大きな爆発音がして……あっという間に火の手が上がりました。逃げようとしたのですが、出口が塞がれていて……助けを呼びましたが間に合いませんでした」
話を聞きながら、真希の心は怒りで燃え上がっていた。こんな残虐な行為が許されるはずがなかった。
藤森は現場から離れ、電話で捜査本部と連絡を取り合っていた。
「これが神崎の仕業なら、容赦はしない。あいつを絶対に捕まえる」
その言葉には、決意と復讐の炎が込められていた。
事件の陰には、まだ見えない更なる闇が蠢いていた。だが、藤森と真希は希望の光を信じて、暗闇の中へと歩みを進めていくのだった。




