第20章 暴かれる深淵
真希が「清祥会」から持ち帰った証拠の映像と写真は、捜査チームに衝撃を与えた。
その中には、人体実験の痕跡、カストリの注射器、そして患者の苦悶する姿が生々しく映し出されていた。
警察本部の会議室では、神谷刑事が証拠を前に深刻な表情を浮かべていた。
「これが事実なら、組織的な犯罪が明らかになる。しかし、証拠はこれだけでは足りない。決定的な証拠を掴む必要がある」
一方、裏社会の情報屋からは、萩原医師が背後で動く巨大な勢力の影響下にあるとの情報がもたらされていた。ヤクザの組長たちも、それぞれの思惑を抱えながら、動きを見せ始めていた。
藤森と真希は、警察の協力を得て次の作戦を練っていた。標的は萩原クリニックの本拠地であり、そこにはさらなる恐るべき秘密が隠されていると推測されていた。
「俺たちが動くのは今だ。これ以上、犠牲を出させるわけにはいかない」藤森は決意を込めて言った。
真希は手に持った資料を見つめ、静かに頷いた。
「準備は整った。警察の特殊部隊も動員される。計画通り、夜明け前に突入する」
その夜、クリニック周辺は異様な緊張感に包まれていた。周囲の住民は不審な動きに気づき、ひそひそと話している。
夜明け前、捜査隊は静かに位置についていた。真希は通信機で連絡を取り合い、藤森は仲間たちと共に武器を握りしめていた。
突入の合図が下りると、突如クリニックの扉が開き、内部から数人の警察官が駆け出した。
中では、萩原医師がモニターの前で冷ややかな表情を浮かべていた。だが、その背後で、拘束された被験者たちが怯えた目で彼らを見つめている。
銃声が響き渡り、緊迫した戦闘が始まった。壁に響く怒号、割れるガラス、そして機械の断続的な警報音。
藤森は萩原の居場所を探しながら、手近な監視カメラの映像を確認していた。そこに映ったのは、何も知らずに操られる患者たちの無垢な表情だった。
「この地獄を終わらせる」藤森は拳を固め、深呼吸した。




