『実方、奥州あこやの松を見んとするも、老人、速記を示して出羽なるを説くこと』速記談2071
藤原実方は、陸奥守に任じられ、一条天皇から、歌枕を見てくるように言われていたので、毎日のように任地を見回っていた。ある日、あこやの松を見ようと思って出かけたところ、地元の者が、あこやの松というところは、陸奥国にはございません、と言うので、どういうことかと思っていたところ、一人の老人が進み出て、速記で書かれた和歌を示しながら、みちのくのあこやの松にこがくれていづべき月のいでやらぬかな、という古歌の歌枕をお探しなのだと思いますが、この歌は、出羽国と陸奥国がまだ分けられていないときに詠まれた歌で、今は出羽国にあるのです、と申し上げた。
教訓:歌枕を見る、というのは、昨今「聖地巡礼」などと言われるのと、感覚的には同じである。