魔力で神の声を聞きなさい
魔力を通じて貴方は神の声を聞く事ができる。
「只今、戻りました」。
ミュージーは王城内にある特殊治安部隊の基地に戻ってきた。
「あ、小隊長! おかえりなさい! 」。
兵士の一人がミュージーの下に歩み寄ってきた。
「ただいま、僕からの連絡はなかった? 」。
「はい、ここに伝言リストが」。
ミュージーは兵士から受け取った一枚の用紙に目を通すと、疲れた表情を浮かべながらため息をついた。
「少しでも席を外すと、必ずこうなるんだよなぁ...。さっきも通信魔法を通じて色んな所から呼び出しを受けてね。それで、ここまで戻ってくるのにも時間がかかったというわけ...さ」。
ミュージーは半ばうんざりした様子でその紙にびっしりと書き綴られた内容を見ながら自身の椅子に腰かけた。
「はははっ! お疲れ様ですっ! 」。
兵士はミュージーにコーヒーの入った白いマグカップを差し出した。
「お、ありがとう」。
ミュージーは礼を言いながら受け取ったマグカップに口をつけた。
「ところで、小隊長。カバリツ副司令官からの用件って一体何だったんですか? 」。
「...ん? ああ、ユズポン市の“聖ポンズ騎士団”への転勤を打診された...というか、本部の方からそういう案が出ているという事を副司令官が僕に教えてくれたんだ」。
「あ、じゃあ決まりではないんですね? 」。
「ああ、その件自体もまだまとまってないらしい」。
「そうだったんですか~! 恐れながら、小隊長が年内に騎士団に転勤されるのではないかと別の部隊では噂になっていると耳にしてまして...。その噂は本当だったのですね~」。
「まぁ、決定したわけじゃないから何とも言えないけどな。実際、僕自身も教団の関係者からそんな話を聞いていたしな。それに入隊してそろそろ二年経つし、そんな話があっても別におかしくないからな」。
「いや、でも珍しくないですか? 軍としては転勤なんてよくありますけど、兵歴の浅い特殊治安部隊の隊員が王城外へ転勤する事例なんてありましたっけ? ましてや、小隊長は指揮官の立場なのに...」。
「何か陛下の御怒りを買うような事でもしたかな? 」。
ミュージーが自虐的気味に微笑を浮かべながらそう言うと、兵士達は信じられないといった様子で力強く首を横に振った。
「そんなっ! あり得ませんよっ! 」。
「そうですよっ! 食べる暇も寝る暇も惜しんで、ずっと任務に精励してきた小隊長は王国兵士の鑑ですよっ! 」。
「ミュージー小隊長は我々特殊治安部隊の誇りですからねっ! 」。
「おいおい、何かそこまで言われると恥ずかしいな...」。
兵士達による必死な力説にミュージーは苦笑いを浮かべていた。