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魔力は神の愛の中に~白い螺旋階段、紫の回廊~  作者: 田宮 謙二


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貴方が道に迷った時


歩き続けなさい。


さすれば、必ず神が手招きしてくださる。


だから、歩き続けなさい。




「すっかり聖堂に長居してしまったな。早く城に戻らないと」


ミュージーは聖堂前の門扉へ足早に向かっていた。


「...ん? 」。


「ミュージー! 」。


「...? 」。


後方から声が聞こえ、ミュージーが振り向くとブリッジが後を追い駆けてきていた。


「ブリッジ? どうしたんだい? 」。


「えっ? あ...いや、ミュージーがいたから思わず声をかけちゃった」。


「? 思わず? 」。


眉をひそめて怪訝な表情を浮かべながら首を傾げるミュージーに対し、ブリッジは強く首を横に振った。


「ううんっ!! 何でもないのっ!! それよりミュージーはお昼ご飯まだ食べてないでしょ? 」。


「ああ、この後城へ戻るからその時に食べる事にしてるよ」。


「そう...」。


ブリッジはうつむきながら腑に落ちない様子でそう相槌を打った。


「? 何か気になる事でもあるのかい? 」。


ミュージーはそんなブリッジの様子を見て、不審そうにそう問いかけた。


「いや、その...」。


ブリッジは気まずそうに目を泳がせながら口ごもると、その様子を察したミュージーは悪戯っぽく笑った。


「あ、僕とマイン御嬢様とのお見合いの事が気になるのかい? 」。


「っっ!! 」。


ミュージーのその一言を聞いたブリッジは、目を丸くし頬を赤らめて動揺を隠せない様子だった。


「お見合いは上官が出席できないから半ば強制的に参加する事になっただけだよ。僕自身は忙しくて結婚なんか考えられないしね」。


「そうだったんだ...」。


「心配してくれていたのかい? 」。


ミュージーが変わらず悪戯っぽく微笑みながらそう問いかけると、ブリッジは一層顔を真っ赤に染めてしかめっ面をした。


「ち、違いますぅ~! た、ただ幼馴染としてちょっと気になってただけですぅ~! 」。


「何だ、やっぱり気にしてたんじゃないか」。


「だ、だからっ!! お、幼馴染として何か先を越された感じがして悔しかっただけですぅ~!! 」。


「そういえば、修道女は恋愛禁止だったよね」。


ミュージーがそう言葉を返すと、ブリッジは憤った様子で自身の頬を膨らませた。


「あっ!! 人が気にしている事をっ!! 」。


「はっはっは~! 」。


ミュージーが高笑いしながら再び門扉へ向けて足を運ばせようとした時...。


「おっとっ! 」。


カツンッ!!


ミュージーは脇に抱えていた兜を滑らせ、地面に落としてしまった。


「防具が金製製だから滑りやすいんだよなぁ~。他の部隊みたいに魔獣の部位を使用したフルヘルメットが欲しいもんだな~」。


ミュージーはそう愚痴を零しながら身を屈めた。


「ミュージー」。


「ん? 」。


屈んでいたミュージーが見上げると、正面からブリッジの美顔が急接近し...。


「...っっ!? 」。


ミュージーとブリッジの唇がゆっくりと重なった。


「...」。


挿絵(By みてみん)


目を丸くして激しく動揺するミュージーを余所に、ブリッジはその唇の柔らかさを深く感じ取るように瞳を閉じた。


その時、ミュージーはブリッジの口内からひんやりとした気体の様な物が自身の体内に注がれていくのを感じ取っていた。


やがて、二人の唇が離れるとブリッジは満面の笑みを浮かべた。


「えへへ~! 大サービスだよぉ~! 直接身体に魔力を注いだんだからね~! それじゃ、お仕事頑張ってね~! 」。


ブリッジはそう言い残すと、ミュージーに背を向けて長い髪を振り乱しながら駆け出していった。


「...」。


ミュージーは呆然とその場に屈んだまま、消えていくブリッジの後ろ姿を眺めていた。


凍えるような冷たい風がミュージーの身体を包み込む。


包み込むその冷たい風は、肌寒さとは異なる心地の良いものであったとその時のミュージーには思えた。



編集後記


挿絵(By みてみん)


毎度、御愛読ありがとうございます。


作者の田宮謙二です。


この『魔力は神の愛の中に~白い螺旋階段、紫の回廊~』の連載が終了致しました。


正確には第一部の完結です。


ここまでの御愛読ありがとうございました。


次回作も御期待ください。


田宮 謙二



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