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魔力は神の愛の中に~白い螺旋階段、紫の回廊~  作者: 田宮 謙二


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自分を恨むな


自分を一方的に否定するのはやめなさい。


その憎しみは結局、自分自身に帰ってくる。




ポンズ王国の都市ユズポン、そこには魔術省管轄下の王立ポンズ魔術総合研究局が存在している。


「いやぁ~、参っちゃったよぉ~。こんな忙しい時にさぁ~、お見合いなんか組まれちゃってさぁ~」。


「ははは! パルス長官も大変ですなぁ~! 」。


その研究局の通路を歩きながら、パルスと白髪に丸ぶちのメガネを掛けた中年男性はそんな話をしていた。


「色々と言い訳して日付を延ばしてもらったんだけど、もう言い逃れできないかな~? 」。


「はっはっは~! 」。


中年男性は高笑いしながらパルスと共に“対戦闘部隊特殊魔術開発研究室”という表札の掛かった扉をすり抜けた。


室内には白衣を着てメガネを掛けたスプリングがシャーレの上に置かれた小粒の鉱石を見つめながら、バインダーで挟んだ紙にペンでデータを書き込んでいた。


「お疲れ~」。


中年男性が手を挙げながらそう言うと、スプリングは二人に向き直って会釈した。


「御疲れ様です。ベンジャミン=フォース長官、パルス=イン長官」。


「うむ、室長はいるかね? 」。


ベンジャミン長官と呼ばれている中年男性は室内を見渡しながらスプリングにそう問いかけた。


「現在、席を外しております。すぐに戻るとの事ですが...」。


「そうか、今日はこの通りパルス対魔獣危機管理局長官とテロ対策に関する防衛対策の事前打ち合わせがあってな。それで、君の室長からも意見を聞こうと思っていたところだったんだ。研究中に申し訳ないが、室長が戻ってくるまでここで待たせてもらっていいかね? 」。


「はい」。


スプリングはベンジャミン長官にそう答え、近くにある椅子を動かそうとした時...。


「あ~、いいよ~。我々はここで立ち話をして待っているから。君は気にせず自分の作業に戻りたまえ」。


ベンジャミン長官はそう言いながら手で制した。


「は、はい...恐れ入ります」。


スプリングはベンジャミン長官にそう言って作業に戻った。


そして、ベンジャミン長官とパルス長官はその場で会話を再開した。


「しかし、パルス長官もそろそろ身を固めてはいかがですかな? その方が御両親も安心するでしょうに」。


「う~ん、もうちょっと落ち着いてから考えるつもりだよ」。


「でも、どのみちお見合いはされるんでしょ? 日を改めただけだし」。


「まぁ~、そうなんだけどねぇ~。そしたら、また特殊治安部隊のミュージー少尉に頼んでみるよ~」。


「...っ! 」。


スプリングはパルス長官の言葉に反応し、聞き耳を立て始めた。


「ミュージー少尉? この間のお見合いの代理って、あの特殊治安部隊の小隊長に頼んだんですかな? 」。


ベンジャミン長官は眉をひそめながらパルス長官にそう問いかけた。


「ええ、ミュージー少尉は若いし背も高いし格好良いからお見合い相手の付添人達からの印象も抜群に良かったと、仲人役を務めたカノー騎士団長が言ってましたよ~」。


「でも、そのお見合い相手はトミー貴族院議長の御令嬢なんでしょ? 相手方が同じ貴族出身なのに、そんな事しちゃって大丈夫だったんですか? 」。


怪訝な表情をしてそう問いかけるベンジャミン長官に対し、パルス長官は不敵な笑みを浮かべた。


「大丈夫っすよ~、色々とこっちも根回しておいたんでね~。いやぁ~、やっぱり次のお見合いもミュージー少尉に頼んじゃおうかな~? それか、もうちょい引き延ばしておいて有耶無耶にしたまま破談にしちゃおうかな~? 」。


「ははは...」。


悪びれた様子も見せないパルス長官を見て、ベンジャミン長官は顔を引きつらせつつ乾いた笑みを浮かべた。


「...」。


聞く耳を立てていたスプリングは神妙な表情を浮かべたままペンを走らせていた。






編集後記


挿絵(By みてみん)


毎度、御愛読ありがとうございます。


作者の田宮謙二です。


挿絵を制作しましたので掲載します。


挿絵(By みてみん)


本作、勇者ハリガネシリーズの主人公であるハリガネが殴られているシーンです。


あまり細かく描かず、ラフ風に仕上げたものです。


これは、その時のシーンに挿入したいと思います。



田宮 謙二


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