目を背けるな
己と向き合い、戦い続けよ。
人生は常に戦いである。
「はぁ...」。
暗い面持ちのブリッジは自身の部屋で溜息をついていた。
「ミュージー、お見合いしてたんだ...。まぁ、ミュージーもそういう年頃よね...」。
ブリッジはそう呟き、再び溜息をつきながらベッドの上に腰を下ろした。
その時、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「はぁ~い! 」。
『ブリッジちゃ~ん! 今、大丈夫~? 』。
ブリッジが応答すると、扉の向こうから女性の声が聞こえてきた。
「どうぞぉ~! 」。
ブリッジがそう答えると扉に青白く光る魔法陣が浮かび上がり、その扉から数人の修道女とコブシが現れた。
「ブリッジちゃ~ん! お疲れ様~! 」。
「お疲れ~! 」。
「あっ! みんな~! お疲れ~! 」。
ブリッジは笑顔で彼女達を向かい入れた。
「ごめんね~! 休んでるところ邪魔しちゃって~! 」。
「ううん! 全然大丈夫だよ~! 」。
「ブリッジちゃん、お昼まだちゃう? 一緒にご飯食べよ」。
コブシがそう声をかけると、ブリッジは何度も頷いて自身の腹部を摩った。
「うんっ! 朝からご飯食べてなかったから、お腹減っちゃったぁ~! 」。
ブリッジがそう答えた後、コブシが神妙な表情を浮かべて両腕を組んだ。
「しっかし、驚いたなぁ~。ミュージー君、お見合いしてたんやなぁ~」。
「...! 」。
ブリッジはやや動揺した様子でそう言ったコブシに視線を向けた。
「本当ね~! ビックリしちゃった~! 御相手は貴族出身の御令嬢ですって~! ミュージーさんにはピッタリよね~! 」。
「ミュージーさん、そのまま結婚しちゃうのかしら~? 」。
「...」。
修道女達がはしゃいでいるのを余所にブリッジは表情を曇らせ、その場でうつむいていた。
「...ブリッジちゃん? 」。
不意に修道女から声をかけられたブリッジは我に返り、慌てて笑顔を取り繕った。
「えっ!? あ、ああ~! 本当ね~! 私もビックリしちゃったぁ~! 」。
「恋敵ができてブリッジちゃんも大変やな~」。
コブシは悪戯っぽい笑みを浮かべながらブリッジにそう言った。
「っっ!? コブシちゃんっ! 私とミュージーは幼馴染なだけでそんな間柄じゃないわよっ! 」。
「何や~? そんなムキになって~。図星なんか~? 」。
「そんなんじゃないもんっ! ただ私達は修道女だから恋愛できないし、何か先越された感じがして悔しいと思ってただけだもんっ! 」。
「はいはい、そういう事にしといたるわ~」。
「むぅ~! 」。
ブリッジは機嫌を損ねた様子で頬をぷくっと膨らませた。
「それじゃあ、そろそろ昼食の時間だから食堂行きましょ~! 」。
「あっ! 私、ちょっとやる事があるから後から良くね~! 」。
ブリッジがそう言うと修道女達は小さく頷いた。
「分かった~! じゃあ、先に食堂に言ってるね~! 」。
「バイバ~イ! 」。
コブシと修道女達が退室すると、ブリッジは大きな溜息をつきながらベッドに突っ伏した。
「そうだった、自分は修道女だから結婚なんてできないんだった...。何か自分で言っておいて凄く虚しくなってきたぁ~! んもうっっ!! ミュージーのバカぁ~!! 」。
ブリッジはベット上で身体をばたつかせて悔しさを露わにしていた。




