天からの贈り物
天からは主に神から貴方に良い物が降りてくるが、神の他に精霊や他の天人から贈り物が降ってくる場合もある。
ミュージーとマインは聖堂敷地内にある墓地に場所を移していた。
「...」。
施設の周辺と同様に緑に囲まれた広大で静寂に包まれた墓地内で、ミュージーは墓石の前に片膝をついて両手を合わせていた。
「すいません、御嬢様の御手間を煩わせてしまって...」。
ミュージーは申し訳なさそうな様子で立ち上がりながら向き直ると、マインは慌てて首を横に振った。
「いえいえっ! いいんですっ! どうせ暇だったんですし、あの...ここにミュージーさんの御両親が眠られているのですか? 」。
「ええ、そうです。父と母はここに埋葬されております。大聖堂に来たら必ず墓前に祈りを捧げるようにしているんですよ」。
「そうなんですか...。あの...私も手を合わせてよろしいですか? 」。
「あ、はい! ありがとうございます、どうぞ」。
ミュージーは慌てて墓石から離れながらそう答えた。
「...」。
マインは墓前に屈んで手を合わせ、静かに祈りを捧げていた。
(う~ん、墓石に雑草が生えてきたな~。そろそろ掃除した方が...ん? )。
ミュージーがそんな事を考えている時、背を向けているマインの身体が微かに震えている事に気が付いた。
(マイン御嬢様、寒いのかな...? 確かに今日は冷たい風が吹いているからな...)。
しばらくして、祈りを終えたマインは立ち上がり、ミュージーの方に向き直った。
「っっ!? マ、マイン御嬢様...っっ!? ど、どうしたんですかっっ!? 」。
両目から涙を流して悲痛な表情を浮かべているマインの姿を見て、ミュージーは激しく動揺していた。
「グスッ...ご、ごめんなさい...。な、何だかミュージーさんが本当に気の毒で...ヒック」。
「き、気の毒...? 」。
「だ、だって...うっくっ。う、生まれてすぐに御家族を失って...ずっと独りぼっちで...ヒックッ...。ご、御家族とはもう直接コミュニケーションが取れずに...この墓前にずっと語りかけておられるなんてっ! か、神様はミュージーさんになんて辛い試練を与えられたのでしょうかっ! 」。
「マ、マイン御嬢様」。
「う...ううううううっっ!! 」。
マインは両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込んで泣き崩れてしまった。
「マ、マイン御嬢様っ! いやっ! 別に僕は...その~! え~と~! 」。
ミュージーは両手をばたつかせるだけでその場では何もできず、ただただ困惑していた。




