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魔力は神の愛の中に~白い螺旋階段、紫の回廊~  作者: 田宮 謙二


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人生に疲れた時


心配せずに休めば良い。


神が貴方の身体を抱きかかえているのだから。




お見合いの日から翌日、クッキン家は静かな朝を迎えていた。


「お父様からもおっしゃってくださいなっ! このままではクッキン家が他の御家から軽く見られてしまいますわっ! 」。


屋敷内の食堂でクッキン家の夫婦は朝食を取っていた。


「ファソ、朝から騒々しいぞ。それにお前、おっしゃるも何も...ゼナイレ家やパルス伯爵から詫び状が届いたんだろ? それに、見合いが破談になったわけじゃないんだから。後日改めて見合い日を決めれば良い話ではないか」。


マインの父、トミーは片眉を吊り上げながらマインの母ファソにそう言いながらハムエッグを頬張った。


「良くありませんわっ! 日を改めるならまだしも、先方はマインに対して代理を立てたんですのよっ!? こんな屈辱的な事ありませんわっ!? 」。


ファソは身を乗り出してトミーにそう意見をした。


「それもパルス伯爵から話を聞いているよ。マインがお見合いをした経験が無いという事とパルス伯爵本人も都合が悪くなったから、一回お見合いのリハーサルみたいな感じの会食を挟んだ方が良いという経緯があったんだろ? お見合い前のシミュレーションじゃないか、それの何処が悪いと言うのだ? 」。


「相手ですよっ! 相手っ! マインのお見合い相手は中流階級の軍人でしたのよっ!? それに、貴方は先程シミュレーションとおっしゃいましたけどねっ! マインにとってはあれが初めてのお見合い相手でしたのよっ!? もぉ~! マインが本当に不憫で...」。


「...おはようございます」。


ファソが嘆いている時、マインが食堂に入ってきた。


「おお、おはようマイン。昨日はお見合いだったらしいな」。


「...はい」。


マインは入口付近に立ち止まってトミーにそう答えた。。


「どうだったかね、お見合いの方は? 」。


「いえ、なかなか上手く話せなくて...」。


「そうか...。それでお前、何でそんなとこに立ち止まっているんだ? 食事するんだろ? 」。


トミーが怪訝な表情を浮かべながらそう問うと、マインは小さく首を横に振った。


「いえ、今日は早朝から大学でやるべき事があるので挨拶だけ...」。


「マイン、朝ご飯をちゃんと食べないと身体に障りますよ? 」。


「お母様、大丈夫です。婆やから受け取ったお弁当がありますから、大学でいただきます...それでは」。


マインはファソにそう答えると一礼し、付き添っている老婆と共に食堂から出ていった。


「もぉ~! 肝心の本人もあんな気にもしてない感じですし、こんな事態になる前にもっと早い段階でお見合いをさせとけば良かったわぁ~! 大学でも悪い虫がついていないか心配だわぁ~! 貴方、いい加減マインの監視を雇いましょうよ~! 」。


ファソがそう言うとトミーはばつが悪い表情を浮かべた。


「おいおい、何もそこまで徹底しなくてもいいだろう? マインにだってプライベートはあるんだ。それに、由緒ある名門ポンズ大学に不埒な行為をする輩などいるはずがないだろう。そのポンズ大学の卒業生であり名誉教授のワシがそう言うんだ。このワシが大学に睨みを利かしている限り、学生や職員達もマインをそそのかすような事などできないはずだ」。


トミーがそう答えると、ファソは呆れた様な表情を浮かべて溜息をついた。


「貴方はそうおっしゃりますけどね、マインも二十になった年頃の女の子なんですのよ? 多忙なのは重々承知してますけど、大学生のマインの周りには寄ってくる誘惑もあるはずなんですから親として危機感を持ってくださらないかしら? もっと貴方からも親身に話をしてくれないとっ! 私はずっとあの子に話をしてますけど、最近は全然聞く耳持ってくれませんのよっ!? 貴方はあの子に嫌われたくないから話を切り出さないでしょうけど、それではあの子のためにはなりません事よっ!? 」。


「ああっ! 分かったっ! 分かったっ! 今度、話をする時間を作るよっ! それで良いんだろっ!? 」。


トミーが観念した様子で半ば投げやりな口調でそう返事をすると、ファソは納得できない様な表情を浮かべつつ黙り込んだ。


「おい、それで昨日のマインの見合い相手は結局誰だったんだ? パルス伯爵の代理だよな? 」。


トミーはマインの見送りから戻ってきた老婆にそう声をかけた。


「はい、ポンズ王国軍のミュージー=フェルナンデス少尉です」。


老婆が淡々とした口調でそう答えると、トミーは神妙な表情を浮かべて老婆の顔を見つめた。


「ミュージー=フェルナンデス...? たしか、国王陛下直属の部隊である特殊治安部隊第一部隊内の小隊長だったな」。


「貴方ご存知だったの? 」。


ファソがそう問いかけると、トミーは小さく頷きながらグラスに入った水を口に含んだ。


「ああ、ユズポン市にあるユズポン大聖堂内の児童養護施設で育った軍人だ。士官学校を卒業して早々特殊治安部隊の小隊長を任され、王国軍のトップである王国防総省の長官に就任するであろうと将来を有望視されている優秀な若き軍人らしい」。


トミーが淡々とした口調でそう言うと、不満げな様子であったファソも神妙な表情を浮かべた。


「王国軍の長官...? う~ん、長官...でも軍人はやっぱり...。でも、パルス伯爵と同様で非常に高尚な役職ですわね~」。


「...」。


悩ましげな表情を浮かべているファソとは対照的に、トミーは神妙な表情を浮かべたまましばらく黙り込んでいた。




編集後記


挿絵(By みてみん)


毎度、御愛読ありがとうございます。


作者の田宮謙二です。


一応、挿絵が完成しました。


挿絵(By みてみん)


ミュージーとスプリングですね。


本当はもっとスプリングを大人っぽく描きたかったのですが...。


そこはまだまだ自分の実力不足という事で。


これからもペン先で挿絵を描いていこうと思います。



田宮 謙二



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