貴方の糧は何だ?
米か、パンか。
力か、権力か。
自身の心身を支配し、貴方が成長のためになると考える物を糧としなさい。
お見合いを終え、帰路についているマイン達は馬車の中で会話していた。
「もぉ~! マインったらミュージー様と全然話してなかったじゃな~い! 」。
「そぉ~よ! せっかくミュージー様が貴方に気を使って色々話しかけてくださってたのに~! 」。
「パルス伯爵のお見合いでは失礼のないようにね~! 」。
「うん...」。
マインはうつむきつつ付添人達に力無くそう答えた。
「今度は私がミュージー様のお見合い相手をさせていただこうかしら~? 」。
「でも、ミュージー様は王様に仕えられている特別な兵士の方なんでしょ~? 私達の方から接触するのはあまり良くないんじゃないかしら~! 」。
「そうね~! 王国軍の方だったから私達の評判とかも一気に広まりそうだし、最悪それぞれ一家の名前に傷を付けてしまうかもしれないわね~! 」。
「でも、ミュージー様素敵な御方だったわね~! 勇ましい食事のされ方だったわぁ~! 」。
「ホントね~! 背も高くてカッコよくて優秀な御方みたいだし、外見も人間性もあれだけ完璧なら別に上流階級出身じゃなくても全然問題無いわよね~! 」。
「やっぱり爽やかで勇ましくて端正な顔立ちの殿方は魅力的よね~! 」。
「でも、ミュージー様は優秀な御方だと聞いてたし、上流階級入りするのも時間の問題じゃないかしら~? 御歳も二十一で私達とそんな変わらないし~! 」。
「そうね~! 両親にもその内上流階級入りするって説得して、今度ミュージー様へのお見合いをお願いしてみようかしら~! 」。
「私もお願いしてみようかしら~! 」。
「...」。
はしゃいでいる付添人達を余所に、マインは一人浮かない顔をして溜息をついていた。




