貴方が魔力を引き付けているのではない
神が魔力を用いて貴方を導いているのだ。
結局、マイン側の付添人達によるミュージーへの質問攻め(主に理想な女性像とか理想な家庭像といった恋愛話)があったものの、肝心の当事者であるミュージーとマインとの会話は弾む事が無くお見合いはそのまま終了した。
ミュージーとカノーはマイン達を見送るため、ホテルの入口に移動していた。
「本日はどうもありがとうございました。とても有意義な時間を過ごす事ができました」。
ミュージーは迎えの付き人に手を借りながら馬車に乗り込むマイン達にそう言いながら一礼をした。
「本当にごめんなさ~い! もう、この子ったら初めてのお見合いだから緊張しちゃって全然話せなくて~! 」。
「い、いえ...。僕もお見合いは初めてでしたから...。僕の配慮が足りずに、申し訳ありませんでした」。
ミュージーが神妙な表情のままそう言って再び頭を下げると、付添人達は慌てて首を横に振った。
「いえいえっ! 謝らないでくださいな~! むしろ、私達がミュージー様にずっと話しかけてしまっていたので、この子から話しかけるタイミングを奪ってしまったのかもしれませんわ~! 私達の方こそ、御見苦しいところを見せてしまって申し訳ありませ~ん! 」。
「いえいえ、とても楽しかったです」。
「今度は是非、私達ともお見合い致しましょ~! 」。
「は、はぁ...。御縁があれば...」。
「ほらっ! マインっ! 貴方いい加減になさいなっ! 」。
「ちゃんとミュージー様に御挨拶しなくちゃっ! 」
「こ、こちらこそ...ありがとうございました...」。
馬車の座席に座っているマインは、依然として恥ずかしげな様子でうつむきつつミュージー様にそう返した。
「はっはっは~! マイン御令嬢はこの先もお見合いをされるでしょうし、良いウォーミングアップにはなりましたかな~? 後日改めてパルス伯爵とも対面される事になるでしょうしね~! 」。
カノー団長はそう言いながらその場で高笑いした。
「もう、ホント~! この調子では先が思いやられますわぁ~! 今日は本当にごめんなさいね~! 」。
「はっはっは~! 御両人お見合いは初めてだった事もあって初々しい限りですな~! ミュージー君は立場上なかなか王城から出れないのですが...。この私ッ!! ポンズ王国が誇る騎士団“AT05”の団長を務めている第四代目サクラダ子爵ッ!! カノー=サンジンジャ三九世は何時でもお見合い...」。
「それではおやすみなさ~い! 」。
マイン達を乗せた馬車は馬族魔獣達に牽かれながら颯爽と去っていった。
「...」。
アプローチが空振りし悲しげな表情を浮かべるカノー団長と、それに困惑したミュージーや兵士達を残して。




